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「ねぇ、何してるの?」

突然生じた声に振り向き様に抜刀したフリオニールは驚愕した。

気づかない程に
気配を消して後ろに立っていたその存在を認識できなかったことにフリオニールは酷く狼狽えた。

それもその筈である

眼前に立つ彼はまだ年端もいかない少年だった。
オニオンナイトより下だろうか、同じくらいであろうと推測する。
にしては大人びた微笑をたたえた、目に隠れるくらいの淡い蒼の髪、金色の瞳の不思議な雰囲気をもつ少年だった。

「土に、何があるの?
何か、探してる?」
「は、花を、植えていた。」
彼が何者で敵か味方かもわからないのに、何故か正直に答えてしまった。
…悪意は無いように感じたから

「花?」
「ああ。のばらを、」
不思議そうに覗き込む姿に年相応の表情を浮かべている。

「俺の、好きな花なんだ」
「すき?」
「ああ!好きだ」
「僕は、わからない」
「…?」
「好きな花なんてないし
やっていて夢中なことも
好きなこともない
やりたいこともない。
…僕にはわからない」
俺はその表情を知ってる
かつて夢を持たないことに酷く憂えた仲間を思い出す。
「…君には、好きな人がいるか?」
「好きな人?」
「ああ、共にいるのが楽しいとか
一緒にいて安心するとか
傍にいたいと思うような人」
「いる…ひとり、」
「じゃあ…君はその人を守ればいいんだ。それが、君の生きる意味になる」
「守るって?」
「たくさんあるさ、…その人を悲しませるものや、苦しめることから」
「…僕にもできる?」
「ああできるさ!」
そういって俺は少年に一輪の野ばらを差し出すと、少年はきょとん、とした顔をした。
「君の名前は?」
「…ハヤト」
じゃあハヤト。君にあげるよ、大切にしてくれ」

手にとった野ばらを愛しげに触れ、笑った。そうだ、俺はそれが見たかったんだ。
野ばらを見て笑っていられる
心からの笑顔の溢れる世界を

「…ありがとう
僕、君も好き。
フリオニール」
「なんで俺の名前…」

ざあっ
目の前に風か吹き荒れる
風が空に昇るように舞い
花びらが散る
一面が姿を変えていく
「これは…!」

地一面の、野ばら
咲き誇る野ばらは丘を埋めつくし
太陽の煌めきを受け
明るく地を照らした。

―――――――――――
「ただいま」
「心配した、我が愛し子」
「ちょっとね、遅くなってごめん。神竜」

手を伸ばせばに顔を寄せる神竜。神竜は本来、人間と意思を通わせることのない存在だ。
神竜は次元の狭間でハヤトを見つけ、彼を育てた。
まるで子のように

「僕ね…今日いいことがあったんだ」

聞いてくれる?

竜の愛し子
(僕見つけたんだ)(守りたい人がいるの)(銀の髪をもった、優しい人なんだよ)

―――――――――――
長くてすいませんw神竜の囲い子設定が描きたくなったという←


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