いつからかはわからない―――でも、それが恋なんだと思う。

「カッツ。報告書があがったぞ…カッツ?」

いつも座る場所に彼女は居らず。仮眠室を覗いてみれば案の定資料を片手に眠り込んでいるカッツの姿があった。

「仮眠室に来たのならばきちんと寝ればいいものを…」

そういって寝ている彼女にソファーの横に丸まっているブランケットをかけなおした。

シワになるであろう資料をしおりを閉じて机に置く。見ればそれはヴィジョンを旅する“旅人”に関する記事だった。
このての冊子や本は大概が国立資料館などにひやかし程度に載っているあまり信憑性のないものばかりであるが…
それが旅人が稀なる異世界からの存在であり、ある種族では幸運の象徴のように取り上げられ、面白がりつつ伝説のような扱いを受けるところにある。

現に旅人についてはその旅の記録のようなものが娯楽本のような形に存在し、絵本としてとりあげられる方が多いようだ。

カッツが仲間に入れた
あの少年。

年端もいかない11、12程度の少年。
旅人、勇者見習いのワタル。

最近カッツが執拗に構っている少年を知るためにこの記事を読んでいたのだろうか。

ほんのすこし
ほんの少し…だが……
正直、……嫉妬する


あのカッツが認めるくらいだ。
信頼はおけるのだろう。

…私だってそうなるまで長い時間が必要だった…が…

「たまには…私のことを想っていてくれよ」

髪をすいてその柔らかな髪に口付けをする。


貴女を守ると決めた
あの日からの密やかな儀式



 
「ああだから報われない恋も惚れたよわみ」


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