最近気になる子がおる。
バス停の並びにおるあの子。
赤いスカートと白いブラウスば着とる見かけん子。ちんまい後ろ姿のたいがむぞらしか子ったい。

『…〜ほんっつっなこつメイちゃんばい!』


隣のあの子


メイちゃんたい!
目の前にメイちゃんがおったい!!

短くて細か二つ結び
ちんまい女の子
赤いスカート

『メイちゃんばい…あぁあたいがむぞか!』

朝8時45分。
俺にとっては早すぎる時間たい。ばってんその女の子にはこん時間じゃなか会えんばわかっとっと。

ばってん話しかける勇気もなか……



―――――――――――

「最近千歳早ない!?しかも学校来とるし!今日も負けたやないか千歳のあほ!」

「謙也…なんば言いよっとや?学生ば教室おって悪かとよ?そぎゃんこつ言っとらんとノートばとらんね。」

「何があったん!?いつもの千歳なら今頃裏山でシエスタ中やろ!!」

「落ち着けや謙也。会話ズレとるで。」


四天宝寺のテニス部たちは他の部活とかいささか異色だった。
白石や金色といった頭の良いメンバーもいれば夏休み中にこうして時間をとって補修に参加する者もいる。

常連である謙也は白石を伴ってこうして補修授業に参加しているが、決まってこういった登校日にはほぼ出逢えないはずの千歳千里が大人しく机に座っている。
確かに上の空でノートもまるっきりすすんではいないのだが、通常の授業にすらなかなか居合わせない千歳がこうも行儀よく座っているとなにかあったのではないかと皆が思うのはもっともだった。

そのサボりっぷりには仲間内で賭け事のネタになるくらいには馴染みある事柄だったわけだが。

「千歳…ほんまにどないしたん?さっきから上の空やで」

「…白石。」

「なんや」


「平成のメイちゃんに巡りあったばい…」
「なんのことや」

白石の目には千歳はもはや恋する乙女のように映っているが…
千歳は今朝も遭遇した少女について白石と謙也にうちあけることにした。

「はぁ?赤いスカートの女の子?」

「そいね。ここらじゃ見かけん顔だけん、あんまり知らんとよ。ばってん……」

「…あのとなりの●トロの」

「…〜っメイちゃんにそっくりたい!!!ほんなこつむぞかぁ!」

「お、落ち着けや千歳」


なりふり構っとっと
そげなこつやっとられんっちゃ
きっと運命たい。
絶対話かけっとよ。
そんときは
おい話聞いてばくれんね?

そんなことを誓った放課後
ひょんなことから
そんな君と出逢うまであと14日

隣のあの子



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