「けーちゃんは凄いね!」
既に聞き慣れた賛辞だがコイツのはおべっかとは全然違う

何故なら―、コイツはほんっつとうに何にも出来ないからだ
馬鹿、というより頭が弱い
努力をしても実にならない。天は二物も与えずというがコイツはふたつとも掴もうとしてどちらも取り落としたタイプなのだろう。
兎に角様々な分野において全くセンスがなかった。
だからコイツの賛辞は嘘がない。

本当に、これっぽっちも上手く出来やしないから。

俺様の才能は「誰かと比べて」秀でた、といった程度のものではないが、やはり素直な反応に気が良くなるのは当然で
相手も一応幼馴染みであるから良家の家柄であるが
幼い頃からコイツを従えて下僕扱いをしていたのはお互いとしては当然のことだったのである。
「あたりめーだろ。いつだって勝つのは俺だ。これからも、この先もずっと」

ずっとそう思っていた
「けいちゃん、けいちゃん」
「…なんだ」
「短髪もカッコいいよ」
「……当然だろ、元がいいからな。どんな恰好したって俺様の評価は揺らがねぇ」
「そうだねそうだね、けーちゃんはいつだってカッコいいよ」

こんなはずではなかった…ただ得るものも多い試合だった、あの試合を恥ずかしいと思う者は誰もいないと思う。だがこの決まりの悪い思いは、もう認めざるを得ない
誰の評価でもない。こいつの期待を裏切ったことに、自分が許せなかった
怖かったんだろう、こいつをガッカリさせたと思った。でも試合は、最高だった。
だから、恥はない
でも、

「悪かったな、…」
「ん?なにが?」
「なんでもねーよ」
「けーちゃん、俺けーちゃん大好き」
「あ?」

「次は絶対勝ってくれるでしょ?
けーちゃんは強いもん!俺をいっつもびっくりさせてくれる
あこがれてるんだ
けーちゃんといると、俺なんでも出来るだけ気がする。だってけーちゃんは誰より真剣で、熱くて、一生懸命だから!
そんなけーちゃんが一番大好き!」

全快の笑みで言い切るこの愚鈍なところに
俺は本当は何度も救われてきたんだろう
救いようのない、一生面倒を見続けるような、
そんな腐れ縁が一つくらいあったっていいかもしれない。

「じゃあてめぇは俺様のカッコいいとこずっと見てろよ」
「うん!うん!けーちゃん大好きだよ!」

あなたが、わたしの
(大好きです)(俺のヒーロー!)




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