「先輩ってさー、よくあの滝夜叉丸の話延々と聞いてられるよな」
「きり丸、敬語」

一年生の後輩をいさめるものの彼本人はいつもケロリとしたものだ
彼に言わせれば私こそ不可思議だという
彼の長い話に悪態もつかず耳をすますその様が忍たまの中で私は浮いた存在らしい。

「いいじゃん滝夜叉丸だし」
「先輩は敬え。三学年も上だし、滝夜叉丸先輩は武芸も立派になさる」
「まぁ腕はいいかもしんないけどさー」

不貞腐れた可愛い後輩
これを見るとなんでも聞いてあげたくなるものだが
ただ私にもただひとつだけ譲れないというものは存在する

「…全く、言いたい放題だな。あれで私の前に出ても同じようにものを言うのだからたいしたものだ」
「滝夜叉丸先輩、見ていらっしゃったのですか」

きり丸と適当に言葉を交わし別れるとすぐ傍にいたらしい彼は姿を現した。
平滝夜叉丸先輩
美しい容姿に優れた才能、明晰な頭脳
皆性格さえ難がなければと声を揃える。
先輩もその評価を受け入れているようだが私はそうは思わない。
――という事実を知らない先輩は私をたまに自慢話を聞かせるこけし位にしか気にも止めてらっしゃらないのかもしれないが。
謙遜ではなく事実であり、優秀な方だ。
他の人にも、自分の評価にも素直なだけである。

「それにしても…きり丸め…後でおしりペンペンだな」
そう言って腕を組む仕草も、相変わらず髪の毛一本から指先に至るまで所作が美しい

「悪口を言ったきり丸にはお仕置きで、俺には何があるんですか」
「へ?」

先輩の虚をつかれたお顔
隙のあるような素顔に
頬が緩む
つけこみたくなる

「私にもなにか構ってくださるのかと思いまして」
「構うも何も…私なりに君を気にかけてきたつもりなのだが」
「存じています。先輩は知らないかも知れませんが、これでも私は欲深なのです」

少し美しい顔に陰がさす
あぁ誤解してらっしゃる

周りの見る目のない女子たちのように
先輩のもつ財産
例えば―家柄や、影響力
私が欲しいのはそれじゃない

「貴方の触れる全てが欲しいのです」
「全て…」
「輪子にも嫉妬してます」
「り!?しっ、嫉妬?」

「何事も無償というものはございませんでしょう」

先輩は私を無欲だと思われてるから
家柄、平家でもなににでもなく私が欲し続けた
どうしても欲しいのになかなかに見かけよりに清らかだから
気づきようもなく時は流れ

いい後輩を演じるのも疲れてきたので

「先輩、俺は下心ありますからね」




本当は何より一番の見返りが欲しい主人公
むっつりくん



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