The ounder of rphan U 
 -総受男装ハーマイオニー百合夢-




スリザリンの談話室は、細長い天井の低い地下室で、
壁と天井は粗削りの石造りだった。
天井から丸い緑がかったランプが鎖で吊るしてある。
前方の壮大な彫刻を施した暖炉ではパチパチと火がはじけ、
その周りに、彫刻入りの椅子に座ったスリザリン生の影がいくつか見えた。

「ここで待っていろ」

マルフォイは暖炉から離れたところにある空の椅子を三人に示した。

「今持ってくるよ―父上が僕に送ってくれたばかりなんだ―」

いったい何を見せてくれるのかといぶかりながら、
3人は椅子に座り、できるだけくつろいだふうを装った。

マルフォイは間もなく戻ってきた。
新聞の切り抜きのような物を持っている。
それをロンの鼻先に突き出した。

「これは笑えるぞ」

マルフォイが言った。
ハリーはロンが驚いて目を見開いたのを見た。
ロンは切り抜きを急いで読み、無理に笑ってそれをハリーに渡した。
サクヤもそれを横から覗きこんだ。
「日刊預言者新聞」の切り抜きだった。





魔法省での尋問

マグル製品不正使用取締局、局長のアーサー・ウィーズリーは
マグルの自動車に魔法をかけたかどで、
今日、金貨50ガリオンの罰金を言い渡された。
ホグワーツ魔法魔術学校の理事の一人、ルシウス・マルフォイ氏は、
今日、ウィーズリー氏の辞任を要求した。
なお、問題の車は先ごろ前述の学校に墜落している。
「ウィーズリーは魔法省の評判を貶めた」
マルフォイ氏は当社の記者にこう語った。
「氏はわれわれの法律を制定するにふさわしくないことは明らかで、
彼の手になるバカバカしい『マグル保護法』はただちに廃棄すべきである」
ウィーズリー氏のコメントを取ることができなかったが、
彼の妻は記者団に対し、「とっとと消えないと、
家の屋根裏のお化けをけしかけるわよ」と発言した。





「どうだ?」

ハリーが切り抜きを返すと、マルフォイは待ちきれないように答えを促した。

「おかしいだろう?」

「ハッ、ハッ」

ハリーもサクヤも沈んだ声で笑った。

「アーサー・ウィーズリーはあれほどマグルびいきなんだから、
杖を真っ二つにへし折ってマグルの仲間になればいい」

マルフォイは蔑むように言った。

「ウィーズリーの連中の行動を見てみろ。
ほんとに純血かどうか怪しいもんだ」

ロンの―いや、クラッブの―顔が怒りで歪んだ。
パンジーの前髪に隠された額にも、うっすら青筋が窺えた。

「クラッブ、どうかしたか?」

マルフォイがぶっきらぼうに聞いた。

「腹が痛い」

ロンがうめいた。

「パンジーも、普段は談話室じゃ鬱陶しいくらいにひっついて
うるさく喋るのに、今日はなんだか静かだな」

「う、うるさくって悪かったわね!」

サクヤは慌ててドラコの隣に移動し、ぴったりくっついた。
ドラコは満足げにそれを見ると、今度は考え深げに話し出した。

「それにしても、『日刊預言者新聞』が、
これまでの事件をまだ報道していないのには驚くよ。

たぶん、ダンブルドアが口止めしてるんだろう。
こんなことがすぐにもお終いにならないと、彼はクビになるよ。
父上は、ダンブルドアがいることが、この学校にとって
最悪の事態だと、いつもおっしゃっている。
彼はマグルびいきだ。
きちんとした校長なら、あんなクリービーみたいなくずのおべんちゃらを、
絶対入学させたりはしない」

マルフォイは架空のカメラを構えて写真を撮る格好をし、
コリンそっくりの残酷な物まねをし始めた。

「ポッター、写真を撮ってもいいかい?
ポッター、サインをもらえるかい?
君の靴をなめまわしてもいいかい?ポッター?」

その物まねを見、サクヤは無理矢理に爆笑をしてみせた。
額には今やばっちり青筋が浮き上がっている。

どうかマルフォイには
笑いすぎて浮き上がっていると思われますように、とハリーは祈った。

マルフォイは手をパタリと下ろしてハリーとロンを見た。

「二人とも、いったいどうしたんだ?」

もう遅すぎたが、二人は無理やり笑いをひねり出した。
それでもマルフォイは満足したようだった。
たぶん、クラッブもゴイルもいつもこれくらい鈍いのだろう。

「聖ポッター、『穢れた血』の友」

マルフォイはゆっくりと言った。

「あいつもやっぱりまともな魔法使いの感覚を持っていない。
そうでなければ
あの身の程知らずのグレンジャー・ハーマイオニーなんかと
つき合ったりしないはずだ。
それなのに、みんながあいつをスリザリンの継承者だなんて考えている!」

サクヤは今にもドラコに掴みかかりそうだったが、
もうすぐに真相を聞けそうだということで必死にこらえていた。

「いったい誰が継承者なのか僕が知っていたらなあ」

マルフォイがじれったそうに言った。

「手伝ってやれるのに」

ロンは顎がカクンと開いた。
クラッブの顔がいつもよりもっと愚鈍に見えた。
幸いマルフォイは気付かない。
ハリーはすばやく質問した。

「誰が陰で糸を引いてるのか、君に考えがあるんだろう…」

「いや、ない。
ゴイル、何度も同じことを言わせるな」

マルフォイが短く答えた。

「それに、父上は前回『部屋』が開かれた時のことも、
まったく話して下さらない。
もっとも50年前だから、父上の前の時代だ。
でも、父上はすべてご存じだし、すべてが沈黙させられているから、
僕がそのことを知りすぎていると怪しまれるとおっしゃるんだ。
でも、一つだけ知っている。
この前『部屋』が開かれた時、『穢れた血』が一人死んだ。
だから、今回も時間の問題だ。
あいつらのうち誰かが殺される。グレンジャーだといいのに」

マルフォイが小気味よさそうに言った時、
パンジーが彼に抱きついた。

「パ、パンジー!?
苦しいって…っ」

「あなたって本当にスリザリン生の模範的な生徒ね!
ああ、あなたがスリザリンの継承者だったらよかったのに…っ」

その言葉が、マルフォイにとっては褒め言葉だったらしく、
マルフォイは照れたように顔を赤くした。

一方のサクヤは、怒りのあまりじっとしていられなくなり、
正体がばれないように何かマルフォイにしてやりたかったのだ。

「ほ、ほんとに苦しいって…!」

「あ、ごめんね?」

力いっぱい首に巻きついていた手をようやく解き、
サクヤはわざとらしく謝った。

「前に『部屋』を開けた者が捕まったかどうか、知ってる?」

サクヤがまた何かしでかす前に、ハリーが慌てて質問した。

「ああ、ウン…誰だったにせよ、追放された」

とマルフォイが答えた。

「たぶん、まだアズカバンにいるだろう」

「アズカバン?」

ハリーはキョトンとした。

「アズカバン―魔法使いの牢獄だ」

マルフォイは信じられないという目つきでハリーを見た。

「まったく、ゴイル、おまえがこれ以上うすのろだったら、
後ろに歩きはじめるだろうよ」

サクヤがまた甲高い声で笑った。

「父上は、僕が目立たないようにして、
スリザリンの継承者にやるだけやらせておけっておっしゃる。
この学校には『穢れた血』の粛清が必要だって。
でも関わり合いになるなって。
もちろん、父上は今、自分の方も手いっぱいなんだ。
ほら、魔法省が先週、僕たちの館を立ち入り調査しただろう?」

マルフォイは落ち着かない様子で身体を揺すった。
ハリーはゴイルの鈍い顔をなんとか動かして心配そうな表情をした。

「それは…心配だわ、ドラコ…」

サクヤも精いっぱいの心配そうな声色で呟いた。

「そうなんだ…」

とマルフォイ。

「幸い、たいした物は見つからなかったけど。
父上は非常に貴重な闇の魔術の道具を持っているんだ。
応接間の床下に我が家の『秘密の部屋』があって―」

「ホー!」

ロンが言った。
マルフォイがロンを見た。
ハリーもサクヤも見た。
ロンが赤くなった。髪の毛まで赤くなった。
鼻もだんだん伸びてきた―時間切れだ。
ロンは自分に戻りつつあった。
ハリーを見るロンの目に急に恐怖の色が浮かんだのは、
ハリーもそうだからに違いない。

「クラッブ、顔が赤いけど、熱でもあるの?」

サクヤが機転を利かせてそう言ってマルフォイとの間に立った。

「医務室でも行ってきたら?
ほら、ゴイルも付き添ってあげて?
(オレはもう少し残るよ。すぐに追いかける)」

小声でそう付け加えて、二人を外に出るよう促した。
二人は小さく頷いてそそくさと談話室を出ていった。

「まったく、今日はやけに忙しない二人だな…」

「ねえドラコ?」

背を向けたまま、サクヤはドラコに尋ねた。

「あたしがあなたに、その…サクヤ・フェリックスのことで、
なんて言ったか覚えてる…?」

「ん?
そうだな…、お前、サクヤのことをたくさん言ってるから、
全部は覚えていない。
そんなにあいつが憎いのか?」

「たとえば、どんなことを言ったっけ…?」

ドラコの質問には答えずに、サクヤは再び問うた。

「今学期最初に言われたのは、確か
『サクヤが自分の一族が有名な一族だ
っていうコネを使ってた』
『それを鼻にかけて、色んな人たちに言い寄ってる。
僕も注意した方がいい』だったっけ?
それがどうかしたのか?」

「(ドラコが冷たいのは、それが原因か…?
オレはそんなこと、絶対にしないのに…)

うん、それね、なんか違ってたみたい」

次第にサクヤも元の姿に戻りかけていた。
鼻に違和感を感じ、こっそり触れてみると、
だんだんと高くなってきていた。

「これからも、あたし、
フェリックスの陰口を言うと思うけど、
わざわざ真に受けないで
ドラコはドラコの物差しで、人を見定めてね」

「パンジー…?」

次第に声色も戻り始めたその違和感に、
ドラコはパンジーの後ろ姿を凝視した。

「ちょっとクラッブが心配だから、
様子を見てくるね。ドラコはここにいて?

…じゃあね」

肩越しに振りかえったパンジーの瞳は、
いつもの黒い目ではなかった。
サクヤの金色が混じった、曖昧な色だった。

「あ、ああ…」

ドラコがその違和感に驚いている間に、
サクヤは走って談話室を出た。

ギリギリまでその場にいたため、
談話室を出てすぐ、サクヤは完全に元の姿に戻っていた。

「(危なかった…ばれて、ないよな…?)」

しかし今はそれよりも、
ハーマイオニーがなぜ行けなくなったのかが心配だったサクヤは
「嘆きのマートル」のトイレへと急いだ。




( 62/99 )
[prev] [next]
[back]
[しおりを挟む]



- ナノ -