The ounder of rphan U 
 -総受男装ハーマイオニー百合夢-




やがて全ての準備が整い、4人は大鍋が置いてある小部屋に詰まっていた。
大鍋の中には、どろりと水あめ状になった煎じ薬がグツグツ、ゴボゴボ泡立っている。
便座にはタンブラー・グラスが4つ用意されていた。

「着替えもちゃんと用意した」

一人分に小分けしたスリザリンのローブが入った袋を
3人に配りながら、サクヤが言った。

「すべて、間違いなくやったと思うわ」

ハーマイオニーがしみだらけの「最も強力な薬」のページを
神経質に読み返しながら言った。

「見た目もこの本に書いてある通りだし…。
これを飲むと、また自分の姿に戻るまできっかり一時間よ」

「次は何だい?」

ロンがささやいた。

「薬を4杯に分けて、髪の毛をそれぞれ薬に加えるの」

ハーマイオニーがひしゃくでそれぞれのグラスに、
どろりとした薬をたっぷり入れた。
それから震える手で、
小瓶に入ったミリセント・ブルストロードの髪を、
自分のグラスに振り入れた。
サクヤも同じように、パンジーの髪を入れた。

煎じ薬は、やかんのお湯が沸騰するような
シューシューという音を立て、激しく泡立った。
サクヤの持つグラスに入った薬は、真っ暗な黒に、
ハーマイオニーのはむかむかするような黄色に変わった。

「おぇー…
スリザリン生のエキスだ」

ロンが胸糞悪いという目つきをした。

「きっとイヤな味がするよ」

「さあ、あなたたちも加えて」

ハーマイオニーが促した。

ハリーはゴイルの髪を加えた。
すると、薬は鼻くそのようなカーキ色、
ロンが入れたクラッブの髪が入った薬は濁った暗褐色になった。

「ちょっと待って」

3人が薬を飲もうとした時、ハリーが止めた。

「4人一緒にここで飲むのはやめた方がいい。
パンジーはいいとして、クラッブやゴイルの姿になって
無事にここに収まっていられるかが不安だ。
それに、ブルストロードだってとても小柄とは言えないんだから」

「よく気付いたな」

ロンが戸をあけながら言った。

「4人別々の小部屋にしよう」

ポリジュース薬を一滴もこぼさないよう注意しながら、
4人は別々の小部屋に入った。

「いいかい?」

ハリーが呼びかけた。

「いいよ」

3人の声だ。

「いち…にの…さん…」

サクヤはハリーの掛け声に合わせて飲み干そうとしたが、
手は途中で止まってしまった。
ローブが小部屋の扉に挟まっていてそれ以上上がらなかったのだ。

タイミングはズレたが、ローブを扉から外し、
今度こそサクヤは一気に薬を呷った。
一年次に飲んだ眼を治す薬もまずかったが、
ポリジュース薬も十分にまずかった。

吐きそうになり、便器に向かって前屈みになった。

茶色の髪は漆黒の髪に変わり、
肩の長さまでに縮んでいった。
目にかかっていた前髪も縮んだ。
視界に入っていた鼻は見えなくなり、
触ってみるとずいぶんと低くなっていた。
パグ犬を思わせる顔つきに変わったのだろう。

体つきも変わり、着なれたグリフィンドールのローブが
身体に合わなくなっていた。

「これが、“パンジー・パーキンソン”になる
って、ことか…」

おかっぱになった髪を落ち着かなさげに撫でつけると、
サクヤはスリザリンのローブに着替えて小部屋を出た。

そこにはクラッブとゴイルが立っていて一瞬ぎょっとしたが、
すぐにハリーとロンだと分かった。

「ハリーに、ロン…?」

「そういう君は、サクヤかい…?」

疑わしげにお互いを見つめていると、笑いがこみあげてきた。

「こうして並んでると、なんか変な感じだな!
ハル!早く出てこいよ!時間がなくなっちまうぜ?」

サクヤがそう小部屋に話しかけると、
中から甲高い声が返ってきた。

「わたし―わたし行けないと思うわ。
三人だけで行って」

「ハーマイオニー、ミリセント・ブルストロードがブスなのはわかってるよ。
誰も君だってこと、わかりゃしない」

ロンが言った。

「ダメ―ほんとにダメ―行けないわ。
三人とも急いで。
時間を無駄にしないで」

「ハル、ほんとに大丈夫か?」

サクヤがそうドア越しに声をかけた。

「大丈夫…わたしは大丈夫だから…行って―」

ハリーが腕時計を見ると、
貴重な60分のうち、5分も経ってしまっていた。

「あとでここで会おう。いいね?」

ハリーが言った。
3人はトイレの入り口をそろそろと開け、
周りに誰もいないことを確かめてから出発した。

「腕をそんなふうに振っちゃダメだよ」

ハリーがロンにささやいた。

「えっ?」

「クラッブって、こんなふうに腕を突っ張ってる…」

「こうかい?」

「ウン、その方がいい」

「ははっ、変な感じだな」

「サクヤ…じゃない、パンジー、
喋り方も気をつけないと…」

「あら、それは失礼」

「カンペキだ」

地下に下りたころ、そう喋っていると、前方に人影を見た。
スリザリン生かと思い近づいてみると、その人物はパーシーだった。

「こんなところでなんの用だい?」

ロンが驚いて聞いた。
パーシーはむっとした様子だ。
そっけない返事をした。

「そんなこと、君の知ったことじゃない。
そこにいるのはクラッブだな?」

「エ―あぁ、ウン」

ロンが答えた。

「それじゃ、自分の寮に戻りたまえ」

パーシーが厳しく言った。

「このごろは暗い廊下をうろうろしていると危ない」

「自分はどうなんだ」

とロンが突ついた。

「僕は」

パーシーは胸を張った。

「監督生だ。僕を襲うものは何もない」

突然、ハリー達の背後から声が響いた。
ドラコ・マルフォイがこっちへやってくる。
ハリーは生まれて初めて、ドラコに会えて嬉しいと思った。

「おまえたち、こんなところにいたのか」

マルフォイがハリーとロンを見て、いつもの気取った言い方をした。

「二人とも、今まで大広間でバカ食いしていたのか?
ずっと探していたんだ。
すごくおもしろい物をみせてやろうと思って。

…ん?
パンジー、お前、帰ったんじゃないのか」

クラッブとゴイルの大きな影に隠されていた
パンジーの姿を見つけ、ドラコはそう尋ねた。

「うん…、今日だけは、戻ってきちゃった!
ドラコとね、クリスマスを過ごしたかったの…」

思いっきりの猫なで声で、サクヤはそう言った。
ハリーもロンも、噴き出すのを我慢しているかのように肩を震わせていた。

「そ、そうか…まあいい…。

ところで、ウィーズリー、こんなところで何の用だ?」

マルフォイがせせら笑った。
パーシーはカンカンになった。

「監督生に少しは敬意を示したらどうだ!
君の態度は気にくわん!」

マルフォイはフンと鼻であしらい、
ハリーとロン、サクヤについてこいと合図した。
ハリーはもう少しでパーシーに謝りそうになったが、危うく踏みとどまった。

しばらく薄暗い廊下を歩くと、
湿ったむき出しの石が並ぶ壁の前でマルフォイは立ち止まった。

「新しい合言葉はなんだったかな?」

マルフォイはハリーに聞いた。

「えーと―」

「あ、そうそう―純血!」

マルフォイは答えも聞かずに合言葉を言った。
壁に隠された石の扉がするすると開いた。
マルフォイがそこを通り、3人はそれに続いた。





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