The ounder of rphan U 
 -総受男装ハーマイオニー百合夢-




「ハグリッド!」

校長室へ廊下を走っていると、
前方に急ぎ足のハグリッドの大きな背中を見つけたサクヤは
その名を叫んだ。

「サクヤか!
お前さんもハリーのことか?」

「ああ、校長を説得しないと!」

「そんじゃ、俺と目的は一緒だな」

間も無くして、校長室に着き、
ハグリッドが合言葉―レモンキャンデー―を唱えると、
大きな醜い怪獣―ガーゴイル像が突然生きた本物になり、
ピョンと脇に跳んで、その背後にあった壁が左右に割れた。

壁の裏のエスカレーターのように
滑らかに上の方に動く螺旋階段を駆け上がると、
グリフィンに模られたノック用の金具を無視し、
輝くような樫の扉をバーンと開いた。

「ハリーじゃねえです。ダンブルドア先生」

「どうか信じてください!ハリーの事を!」

「俺はハリーと話してたです。
あの子が発見されるほんの数秒前のこってす。
先生さま、ハリーにはそんな時間はねえです…」

ダンブルドアは何か言おうとしたが、ハグリッドが喚き続けていた。
興奮して手に持った鶏を振り回すので、そこら中に羽が飛び散った。
サクヤの頭にはらはらと積もっていく。

「ハリーのはずがねえです。
俺は魔法省の前で証言したってようがす…」

「ねえ、ハグリッド、校長先生をよく見てみ…?
疑ってる目、してねえよ」

ダンブルドアの目を見て、驚きつつもサクヤは言った。

「ヘッ」

鶏がぐにゃりと垂れ下がった。

「そうじゃ、ハグリッド。
わしはハリーがみんなを襲ったとは考えておらんよ」

「へ、へい。
そんじゃ、俺は外で待ってますだ。校長先生」

ハグリッドはきまり悪そうにドシンドシンと出て行った。

「先生、僕じゃないとお考えなのですか?」

ハリーは祈るように繰り返した。
ダンブルドアは机の上に散らばった、鶏の羽を払いのけていた。

「そうじゃよ、ハリー」

ダンブルドアはそう言いながらも、また陰鬱な顔をした。

「しかし、君には話したいことがあるのじゃ。
サクヤ、君にもな」

サクヤは思わぬときに自分の名前が出たのでドキッとした。
頭の上の数枚の羽根が床に落ちた。

ダンブルドアは長い指の先を合わせ、
何事か考えながら二人をじっと見ていた。
ハリーもサクヤも、落ち着かない気持ちでじっと待った。

「お主らは、わしに何か言いたいことはないかの?」

やわらかな口調だった。

「どんなことでもよい」

二人は何を言ってよいか分からなかった。
今学期に入ってから、本当に色々あった。
その記憶が一気に甦った。

二人は顔を見合わせてから、
そして声をそろえてこう答えた。

「いいえ。
先生、何もありません」



*****


ジャスティンと「ほとんど首無しニック」の二人が一度に襲われた事件で、
これまでのように単なる不安感ではすまなくなり、パニック状態が起こった。
奇妙なことに、一番不安を煽ったのはニックの運命だった。
ゴーストにあんなことをするなんて、いったい何者なのかと、
寄ると触るとその話だった。
もう死んでいる者に危害を加えるなんて、
どんな恐ろしい力を持っているんだろう?
クリスマスに帰宅しようと、生徒達がなだれを打って
ホグワーツ特急の予約を入れた。

「この調子じゃ、居残るのは僕達だけになりそう」

ロンが3人に言った。

「僕達とマルフォイ、クラッブ、ゴイルだ。
こりゃ楽しい休暇になるぞ」

クラッブとゴイルは、常にマルフォイのやる通りに行動したので、
居残り組に名前を書いた。
ほとんどみんないなくなることが、ハリーにはむしろ嬉しかった。
廊下でハリーに出会うと、まるでハリーが牙を生やしたり、
毒を吐きだしたりすると思っているかのように、
みんなハリーを避けて通った。
ハリーがそばを通ると、指さしては「シーッ」と言ったり、
ヒソヒソ声になったり、もうハリーはうんざりだった。

フレッドとジョージにしてみれば、
こんなおもしろいことはないらしい。
二人でわざわざハリーの前に立って、廊下を行進し、

「したーに、下に、まっこと邪悪な魔法使い、
スリザリンの継承者様のお通りだ…」

と先触れした。
パーシーはこのふざけをまったく認めなかった。

「笑い事じゃないぞ」

パーシーは冷たく言った。

「おい、パーシー、どけよ。
ハリー様は、はやく行かねばならぬ」

とフレッド。

「そうだとも。
牙をむき出した召使とお茶をお飲みになるので、
『秘密の部屋』にお急ぎなのだ」

ジョージが嬉しそうにクックッと笑った。
ジニーも冗談だとは思っていなかった。

フレッドがハリーに「次は誰を襲うつもりか」と大声で尋ねたり、
ジョージがハリーと出会った時、大きなにんにくの束で追い払うふりをすると、
そのたびに、ジニーは「お願い、やめて」と涙声になった。
サクヤにはその姿が、日に日にやつれていくように見えた。

ハリーは気にしていなかった。
少なくともフレッドとジョージは、
ハリーがスリザリンの継承者だなんて、まったくバカげた考えだと思っている。
そう思うと気が楽になった。
しかし、二人の道化を見るたび、マルフォイはイライラし、
ますます不機嫌になっていくようだった。

「そりゃ、ほんとうは自分なのだ
って言いたくてしょうがないからさ」

ロンが訳知り顔で言った。

「あいつ、ほら、どんなことだって、自分を負かすやつは憎いんだ。
なにしろ君は、やつの悪行の功績を全部自分のものにしてるわけだろ」

「長くはお待たせしないわ」

ハーマイオニーが満足げに言った。

「ポリジュース薬がまもなく完成だ。
ドラコが何を知っているか、直接聞ける日も近いぜ」

サクヤが言った。





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