The ounder of rphan U 
 -総受男装ハーマイオニー百合夢-




5分後、4人は「嘆きのマートル」の「故障中」のトイレに再び立てこもっていた。
ハーマイオニーがロンの異議を却下したのだ。
―まともな神経の人はこんなところには絶対来ない、
だからわたしたちのプライバシーが保障される―
というのが理由だった。

「嘆きのマートル」は自分の小部屋でうるさく泣き喚いていたが、
4人はマートルを無視したし、マートルも4人を無視した。
(サクヤは最初、マートルを慰めようとしたが、
マートルの終わりなき鬱の世界に自分が引きこまれそうになったのに気づいたのか、
途中で慰めるのを諦めた。)

「最も強力な薬」の本の中身は、いかにも「禁書」らしい中身だった。
身の毛のよだつような結果をもたらす魔法薬がいくつもあったし、
気持ちが悪くなるような挿絵も描いてある。

「うへ…こんな魔法薬も作れちまうのか…」

ある挿絵を見たサクヤは口元を押さえていた。

「あったわ」

ハーマイオニーが興奮した顔で「ポリジュース薬」という題のついたページを指した。
そこには他人に変身していく途中のイラストがあった。
挿絵の表情がとても痛そうだった。
画家がそんな風に想像しただけでありますように、とハリーは心から願った。

「こんなに複雑な魔法薬は、初めてお目にかかるわ」

4人で薬の材料にざっと目を通しながら、ハーマイオニーが言った。

「クサカゲロウ、ヒル、満月草にニワヤナギ…
こんくらいは簡単に手に入るな」

サクヤが腕を組んで言った。

「でも見て。
二角獣の角の粉末―これ、どこで手に入れたらいいか分からないわ…。
毒ツルヘビの皮の千切り―これも難しわね…。
それに、当然だけど、変身したい相手の一部」

「なんだって?」

ロンが鋭く聞いた。

「どういう意味?
変身したい相手の一部って。
僕、クラッブの足の爪なんか入ってたら、絶対飲まないからね」

ハーマイオニーはなんにも聞こえなかったかのように話し続けた。

「でも、それはまだ心配する必要はないわ。
最後に入れればいいんだから…」

ロンは絶句してハリーの方を見たが、
ハリーは別なことを心配していた。

「ハーマイオニー、どんなにいろいろ盗まなきゃならないか、分かってる?
毒ツルヘビの皮の千切りなんて、生徒用の棚には絶対あるはずないし。
どうするの?
スネイプの個人用の保管倉庫に盗みに入るの?
うまくいかないような気がする…」

ハーマイオニーは本をピシャッと閉じた。

「そう。二人とも怖気づいて、やめるって言うなら、結構よ」

ハーマイオニーの頬はパーッと赤みが差し、
目はいつもよりキラキラしている。

「わたしは規則を破りたくない。わかってるでしょう。
だけどマグル生まれの者を脅迫するなんて、
ややこしい魔法薬を密造することよりずーっと悪いことだと思うの。
でも、2人ともマルフォイがやってるのかどうか知りたくないって言うんなら、
これからまっすぐマダム・ピンスのところへ行って
この本をお返ししてくるわ…」

「まさかハルが、
オレたちに規則を破れなんて説教する日が来ようとは…」

サクヤは感心したように言った。

「わかった。やるよ。
でも僕、足の爪だけは勘弁してくれ。いいかい?」

「じゃあロンは踵の皮な?」

サクヤがにこやかに言った。

「え!?」

「ははっジョーダンだって!」

「でも、造るのにどのくらいかかるの?」

ハーマイオニーが機嫌を直してまた本を開いたところで、
ハリーが尋ねた。

「そうね。
満月草は満月の時に摘まなきゃならないし、
クサカゲロウは21日間煎じる必要があるから…
そう、材料が手に入れば、だいたい1ヵ月で出来上がると思うわ」

「1ヵ月も?
マルフォイはその間に
学校中のマグル生まれの半分を襲ってしまうよ!」

ロンが言った。
しかし、ハーマイオニーの目がまた吊り上がって険悪になってきたので、
ロンは慌ててつけ足した。

「でも、今のとこ、
それがベストの計画だな。全速前進だ」

ところが、トイレを出るとき、
ハーマイオニーが誰もいないことを確かめている間に、
ロンが振り返って、ハリーとサクヤに尋ねた。

「明日のクィディッチ、どっちが出るんだ?」

「あ、ハリーだよ。ジャンケンで決めた。
どうかした?」

「ううん、それじゃ、明日
ハリーがマルフォイを箒から叩き落とせば、
万事解決だな」

ロンがクスクス笑いながら言った。



*****



土曜の朝、サクヤは
いつも下に下りていく時間の少し前に目が覚めた。

「(今日の一戦は大事な一戦だ…負けられない。
今回オレは控えだけど、
いつも以上に気合入れないとな…)」

窓から射し込む朝日と小鳥のさえずりを聞きながら、
サクヤは額に手を置いてそう思った。

「っし…そろそろ行くか」

静かにそう言うと、
まだ眠っているハーマイオニーの頬に
そっとキスを落して寮を出た。

「おはよ、みんな」

大広間に下りていくと、
グリフィンドールの長テーブルで
チームメンバーがもう朝食を摂り始めていた。
皆緊張した面持ちで一ヵ所に固まって座っていた。

「………」

スリザリンの長テーブルを見ると、
同じく固まって座っていたが、
グリフィンドール・チームより少しだけ余裕があるのだろう。
談笑が時々聞こえてきた。

マルフォイはサクヤがこちらを見ていることに気づき、
目が合うとすぐに逸らした。

サクヤは寂しそうに小さくため息をつき、
やがて朝食を食べ始めた。


11時が近づき、学校中がクィディッチ競技場へと向かい始めた。
なんだか蒸し暑く、雷でも来そうな気配が漂っていた。
ハリー達が更衣室に入ろうとすると、ロンとハーマイオニーが急いでやってきて
「幸運を祈る」と元気づけた。
選手はグリフィンドールの真紅のユニフォームに着替え、
座って、お定まりのウッドの激励演説を聞いた。

「スリザリンには我々より優れた箒がある」

ウッドの第一声だ。

「それは、否定すべくもない。
しかしだ、我々の箒にはより優れた乗り手がいる。
我々は敵より厳しい訓練をしてきた。
我々はどんな天候でも空を飛んだ―」

(「まったくだ」
ジョージ・ウィーズリーが呟いた。
「八月からずっと、俺なんかちゃんと乾いたためしがないぜ」)

「―そして、あの小賢しいねちねち野郎のマルフォイが、
金の力でチームに入るのを許したその日を、
連中に後悔させてやるんだ」

感極まって胸を波打たせながら、ウッドはハリーの方を向いた。

「ハリー、君次第だぞ。
シーカーの資格は、金持ちの父親だけではダメなんだと、
目にもの見せてやれ。
マルフォイより先にスニッチをつかめ。
然らずんば死あるのみだ、ハリー。
控えにサクヤがいる、という甘ったれた考えは持つな。
ハリー、自分がスニッチを掴むんだ。
なぜならば、我々は今日は勝たねばならないのだ。
何がなんでも。
甘い考えは絶対に持つなよ」

「だからこそ、プレッシャーを感じるなよ、ハリー」

フレッドがハリーにウィンクした。

「甘い考えは持っちゃいけないけど…、
ヤバくなったらすぐに言えよ?
オレもいつでも出られるように準備しとくから」

サクヤが言った。

グリフィンドール選手がグラウンドに入場すると、
ワーッというどよめきが起こった。
ほとんどが声援だった。
レイブンクローもハッフルパフも
スリザリンが負けるところを見たくてたまらないのだ。
それでもその群衆の中から、
スリザリン生のブーイングや野次もしっかり聞こえた。

クィディッチを教えるマダム・フーチが、
フリントとウッドに握手するよう指示した。
二人は握手したが互いに威嚇するように睨みあい、
必要以上に固く相手の手を握り締めた。

「笛が鳴ったら試合開始」

マダム・フーチが合図した。

「いち―に―さん」

観客のワーッという声に煽られるように、
14人の選手が鉛色の空に高々と飛翔した。

「ひと雨きそうだな…、
ハリー、早めにケリをつけろよ…」

控室から試合を見守るサクヤが呟いた。





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