The ounder of rphan U 
 -総受男装ハーマイオニー百合夢-




やがて皆が待ちわびたハロウィンの日が来た。
誰もが大広間に集まり、談笑や豪勢な料理などを楽しんだ。

ダンブルドア校長が余興用に“骸骨舞踏団”を呼び、
皆は大いに騒ぎ、楽しんでいた。

しかしハリー・ロン・ハーマイオニーは3人寂しく
地下牢へと重たい足を運ばなくてはならなかった。
絶命日パーティーなんかより、ハロウィン・パーティーの方が
当然楽しく思えると気付いたからだ。

「じゃ、じゃあ、オレはここで…」

大広間前の廊下でサクヤが言いにくそうに呟いた。
3人は苦笑いで返し、地下牢へと向かって行った。

サクヤは大広間に入ると、
今朝したフレッドとジョージとの打ち合わせ通り、
グリフィンドールの隅の方の机にこっそり座った。

「(しっかし…うまくいくかなぁ…)」

脳内でシュミレーションを何度も行った。

「サクヤ!
どう?緊張してる?」

ジョージが様子を見にきた。

「してるって!
こんなデカいいたずら初めてだし…

なによりも
箒に立ち乗りなんてやったことないって!!」

声をひそめてサクヤは反論した。
もちろんやってみたい気もするのだが、
練習なしのぶっつけ本番がサクヤを不安にさせているのだ。

上座ではフレッドが場を盛り上げている。
今回は“いたずら”というよりも“出し物”という概念の方が強いようだ。

「大丈夫さ。
あと、普通の箒だと足場が悪いから
これに乗るといいよ」

そう言って差し出されたのは
足場が平面に作り直された箒だった。

「これなら足場はいいだろ?
あ、あと、衣装はこれで!」

今度はサクヤに向かって杖を振った。

「えっ、えっ!?」

箒を押し付けられたり自分の服に魔法がかけられたり、
少しパニック状態だったが、魔法の光が収まると、
ドラキュラの格好を元にした
ボーイッシュな衣装に服が変えられていた。

「まずは打ち合わせ通りカッコよく登場だからな!」

フレッドの盛り上げも佳境に入り、
生徒のテンションもかなり上がってきていた。
(ちなみに先生陣は校則ギリギリの見世物に
ヒヤヒヤしたり今にも怒鳴ろうとしたりしていた)

「さーあお次はメインイベント!
フィリバスターの長々花火、
ハロウィン特別バージョンだ!!」

杖を喉に当て拡声させてフレッドが言った。

「よし、行ってこい!」

ジョージに背中を押され、
サクヤは箒にスケボーの要領で飛び乗った。

「…お、意外と安定するもんだな」

サクヤはジョージにグッと親指を立てて飛び出した。
もちろん箒にはフィリバスターの長々花火が
いくつも仕掛けられている。

最初は不安だったサクヤも、
安定した箒と跨っている時とは違う風の感じ方に、
次第と楽しくなってきていた。

フレッドとジョージも箒に跨り、
3人はさまざまなパフォーマンスを見せた。

生徒からは歓声がドッと上がり、
手を叩く者、足で地面を踏み鳴らす者、口笛で場を盛り上げる者…
様々だった。

サクヤが上座の上を通った時に
口を手で覆ったマクゴナガル先生が目に入ったが、
あまり気にならなかった。

「サクヤ!いよいよ着火だー!」

フレッドが自分の箒につけた花火に引火させながら言った。
ジョージも着火した。

「おうよ!」

サクヤも宙に浮く蝋燭(もちろんハロウィン仕様のものだ)で
火をつけ、いよいよフィナーレだ。

3人が衝突スレスレで何度も入り乱れ、
交差するたびに花火が一段と綺麗になった。

サクヤは光の尾を引くその箒で宙返りをしたり
箒の上で片手逆立ちをしたりした。

大広間は大変盛り上がり、
生徒は大興奮、先生方の中にも
ヒヤヒヤしながらも
楽しんでいるような様子の先生がちらほらいた。

「ぃやっほー!!」

サクヤもフレッドもジョージも最高に楽しかった。

みんなの笑顔が見られたし、
いたずら(というよりパフォーマンスと
言った方がいいかもしれない)も大成功。

何よりサクヤの満面の笑顔が見られたことが
今年起こった最も嬉しいことの一つとする者が大半を占めていた。

「ここでサクヤの衣装チェンジ!」

フレッドが杖を振った。
すると、今度はマグル界の童話の
魔女の格好を元にした
とてもかわいい衣装に一瞬で変わった。

すると大広間は一瞬歓声が止んだが、
すぐに、さっきよりも大きな歓声が上がった。
…サクヤの人気ぶりがうかがえる。

「(今朝衣装を見せてもらったけど…、
いざ着てみるとかなり恥ずかしい…っ!)」

サクヤはサクヤでそれなりに赤面していた。
しかしすぐに笑顔に戻り、また
宙を切り始めた。

「そろそろグランドフィナーレだぜ!」

3人が交わる時に互いにハイタッチをし、
ジョージがそう知らせた。

フレッドとジョージの箒に仕掛けられた花火は
やがて終り、立ち乗りするサクヤの
“フィリバスターの長々花火”だけが
華麗に宙を飛んでいた。

サクヤが皆が見やすい位置・高さに静止すると、
先日火トカゲの口から流れだしたように、
箒の尾から滝のように橙色の星が降り注いだ。

歓声は感動のため息に変わり、
拍手が沸き起こった。
先生方の中にも誰も3人を咎めようとする者はいなくなっていた。

サクヤが箒の上から周りを見ると、
それもまたすばらしい景色だった。
ハロウィン用に飾り付けられた大広間はとても綺麗で、
長テーブルに所狭しと並べられたおいしそうな食事も
色とりどりで、場の雰囲気に合っていた。
蝋燭もちらちらと揺れ、まるで蝋燭も拍手をしてくれているようだった。
箒から降りたフレッドとジョージが
ガッチリと成功を称え合う握手をしているのも見えた。

「やった…成功だ…!」

サクヤもその喜びに浸ろうとしたその時、
誰もが目を見開くような事件が起きた。

橙色の滝が終わり、
その余韻に皆が浸ろうとした瞬間、
サクヤの乗った箒が爆発を起こしたのだった。

フィリバスターの長々花火は最後に大きな爆発を起こすのだ。

「…っ、!」

爆風で箒から手を放してしまったサクヤは、
ただ人形のように宙に放られるしかなかった。

生徒たちは驚いて、サクヤに大事が起こることがないよう祈るしかなく、
先生方も何か対処しようと、しかし立ち上がることしかできなかった。
(杖を即座に取り出せる者はいなかったし、
もちろん箒を持っている先生もいなかった)

サクヤ!!!

そんな中、すぐに動けるのはフレッドとジョージだけだった。
握っていた箒に跨り、姿勢を低く猛スピードで
サクヤの元へ飛んで行った。
2人の中でもフレッドが必死の形相で飛びつけた。

落ちてゆくサクヤをフレッドがガッチリ掴み不時着した。
先生生徒問わず、誰もがその周りに集まってきた。

「サクヤっ、サクヤっ!
大丈夫か!?おい!!!」

フレッドがサクヤをガクガクと激しく揺すった。

「…痛い痛い!
フレッド痛いから!!」

気は失っていないサクヤがたまらず叫んだ。

「どこ!?
どこが痛むの!?」

「そこ!
フレッドが掴んでる肩!!」

「肩!?
まさか折れてるんじゃ…!
脱臼とか…!?」

フレッドがすぐさま手を放して
ノースリーブで露わになっている
サクヤの肩を見た。

「違う違う、フレッドが
力入れ過ぎて掴むから痛かったんだよ!
大丈夫、どっこも痛くないし、
怪我もしてないからさ!」

心配そうに見つめるフレッドやジョージ、周りの皆に、
サクヤが安心させるように微笑んでみせた。

「ほ、ほんと…!?」

フレッドはなおもサクヤが
やせ我慢してるんじゃないかと疑ってきた。

「ほんとだって!」

サクヤはにっこりとフレッドに笑いかけた。

「よかった…!」

フレッドは横たわっているサクヤを抱きあげ、
力いっぱい抱きしめた。

「く、苦しい…!」

サクヤはまたたまらず声を上げた。

「ゴメンな、ゴメンな…
もっとちゃんと計画を立てておけば
こんなことにはならなかったんだよな…っ」

サクヤはフレッドが心底
心配してくれたのを感じ取ったと同時に、
こんなことに巻きこんでしまった負い目を
フレッドが感じている事も悟った。

「だから、大丈夫だって。
みんな感動してくれたし、
オレも怪我してない。
…フレッドがキャッチしてくれたからね」

ようやくサクヤを放したフレッドを見て言った。
言葉を続けようとしたサクヤだが、思わず噴き出してしまった。

「ぷっ…、っははははは!!」

「?」

突然笑い出したサクヤに皆が疑問符を飛ばした。

「フレッド…、
顔なっさけないのー!」

息も絶え絶えに、サクヤはそう言った。
それを聞いた生徒の皆も、フレッドの顔を見て笑いだした。
当のフレッドは呆気にとられていたが、
すぐに怒りだした。

「う、うるさいな!
安心したらこうなっちゃったんだ!!」

必死にそう言うも、
皆の笑いが絶えることはなかった。




(…ねぇフレッド、
グリフィンドールの机まで運んでくれない?)
(ん?どうして?立てないの?)
(…爆発にビックリして腰抜けた…)
(ぷっ…!!サクヤ
人のこと笑えないじゃん!!なっさけな!!)
(うっさい、さっさと運べッ!!)

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