The founder of orphan U
-総受男装ハーマイオニー百合夢-
「えーっと…」
再びハーマイオニー探しをして空きのコンパートメントを覗いた瞬間、
不意に後ろから背中を押された。
「っぅお!?」
座席に顔面から突っ込み、危うく筋を違えそうになった首を擦りながら振り向く。
「どうだ?驚いた?」
「フレッド!」
いたずらっぽく笑うフレッドがそこに立っていた。
「サクヤ、一緒に座ろう!」
「ジョージ!」
続いてジョージも入った。
「ま、そういうことで」
「リー!…さん!」
ツインズの悪友、リー・ジョーダンも座席に座った。
「"さん"はいらないよ、リーで」
「あ、ジニーも!」
続いて入ってきたのはジニーだった。
「さっき誘おうとしたんだけど、忘れちゃってさ!」
「君を探してたら、ちょうど空きのコンパートメントと一緒に見つけたってワケさ!」
フレッドとジョージがサクヤの両脇をガッチリ挟んで座った。
「僕は君と話すのは初めてだよね?
はじめまして。僕もサクヤって呼んでもいい?」
ジョーダンだ。
「ですね、はじめまして!
もちろん好きに呼んでくれて構わないです!
…せっかく誘ってくれたのに悪いなみんな、オレの分も取って待ってる子がいるから…」
「ストップ!」
サクヤが立ち上がって言うと、ジョーダンがいきなり叫んだ。
「!?」
反射的に立ち止まったサクヤの足元を、まるで狩りをする虎のように兄弟とジョーダンはジッと見つめている。
ジニーは少しひきつった顔で足元を見ている。
つられて見たサクヤは飛び上がった。
「タ、タランチュラ!?」
ジョーダンがそっと手ですくって見せてくれた。
「コイツ、僕のなんだけど…また逃げ出したんだ」
「…毒とか…持ってないんですか?」
「持ってるけど…毒性は低いし、噛まないように躾けてあるから大丈夫だよ。
それと、フレッド達みたいに敬語使わなくってもいいよ」
「あ、はい」
「こんな距離でこんなデッカい蜘蛛を見たら、ロンだったら絶対卒倒すると思わないか?」
「あーあ、この汽車にロンが乗ってれば確かめられるのに…」
フレッドとジョージが言った。
「ロン…蜘蛛苦手なの?」
「そうさ」
「ほんのちっちゃな蜘蛛でも逃げ出すぜアイツ」
「小さいのなら、私でも平気なのに」
「へーえ?」
思わぬ弱点を持つロンを知り、サクヤは薄く笑みを浮かべた。
「サクヤ!」
急にコンパートメントが開き、誰かがサクヤの名を呼んだ。
「あ…ハル!」
サクヤはしまった、と反射的に立ち上がった。
「いつになったら来てくれるのかって待ってたのに…、
ハリーもロンも来ないし…。
行くわよ!」
「お、おう…!
ジニー、フレッド、ジョージ、リー!
また後でな!」
ハーマイオニーに手を引かれ、サクヤはそう言ってコンパートメントを後にした。
「探してたんだけど…他にもいろいろあってさ…。
ってコレ言い訳か」
サクヤはズンズンと前を歩くハーマイオニーに向かって弁明するが、反応はなかった。
やがてハーマイオニーが取っておいてくれたコンパートメントに着き、中に入る。
「…それで?
ハリーとロンは?」
向かい合って座席に座り、ハーマイオニーが切り出した。
「それがさ、キングズ・クロス駅までは一緒に来たんだけど…、
9番線と10番線の間を先に通り抜けて待ってたんだけど2人とも来なくって。
そうしたらこの汽車が出発する時間になって、仕方なくフレッド達と乗ったんだ。
きっと何かが起こって、あの柵が通り抜けられないようになっちゃったんだ」
「そう…じゃあこの汽車には乗ってないのね…。
…どうやってくるのかしら?
ハリーはどうにかして、絶対にホグワーツに来たがるだろうから…。
規則に引っ掛かるようなことをしかねないわ」
「それは言えてるな。
実は…ここへ来る時に車を使ってきたんだけど…、
その車、ロンの父親が改造して、空飛べるんだよね」
ハーマイオニーは勢いよく立ちあがった。
「それは大変だわ!
ロンならその手を使わないわけがないはずよ…」
どうしましょう…と右往左往しだしたハーマイオニー。
「まあ落ち着けって!
きっと無事にホグワーツに着いて、罰則もなしだ!
だって緊急事態だったんだ、しょうがないだろ?」
サクヤがハーマイオニーを座らせた。
「そ、そうね…」
ハーマイオニーもそれで自分を納得させようとしていた。
「それよりも、久々のハルとの時間を楽しませろ!」
サクヤがハーマイオニーに抱きつき言った。
「これから1年はずっと一緒よ?
いやでも楽しめるわ」
2人は手紙では書ききれなかった、この夏休みのことを互いに語り合った。
それから、ハリーの身に起きた事も、詳しく聞かせた。
「何か怪しいわ…」
「だよな…今年も忙しい1年になりそうだ」
サクヤが腕組みをしてうつむいた。
このポーズは、サクヤが居眠りしている時か、
何か考え事をしている時によくとるポーズだった。
もちろんこの場合は後者だが。
「オレが思うに…。
そのドビーってやつがあの柵を閉じたんじゃないかな。
まだ確証は出来ないけど…。
ドビーはハリーを学校に来させたくないっていうこのタイミングで…。
もし空飛ぶ車で駅まで来なかったら、ホグワーツまで行ける方法はなかったんだ。
これは偶然なのか否か…
って、今思ってた!」
遠くを見て話していたサクヤが急にハーマイオニーの方に向き直ったので、ハーマイオニーは驚いた。
今までのサクヤなら、そう思っても心の中だけにしまい込み、自分一人で解決しようとするだろう。
それが今では、思ったままのことを言った。
その進歩にも、ハーマイオニーは驚き、同時に嬉しかった。
「そうね、まだ憶測の範囲だけれど、そうと考えるのが一番妥当みたいね」
そこで車内販売のおばさんが扉を開けたので、会話は中断された。
「嬢ちゃん達、お菓子はいらないかい?」
「あ、買います!」
適当なものを選んで、座席に置いた。
「ハルも好きなの食べていいよ!」
2人で食べていると、再び扉が開いた。
「あの3人といると心臓がもたないの…。
一緒に座ってもいい?」
ジニーだ。
「お疲れ様だな、ジニー。
もちろん、いいだろ?ハル」
「ええ」
「ジニーもお菓子食べる?」
3人でワイワイ話していると、朝早くに起きたせいか、準備に疲れたのか、
だんだんと眠くなってきたジニーはサクヤに肩を預け眠ってしまった。
「ジニー、寝ちゃったな」
ジニーを起こさないようにそっとリュックから自分のローブを取り出し、サクヤはジニーに掛けてあげた。
「…ジニーには優しいのね!」
ハーマイオニーはそっぽを向いて言った。
「ん?
ハルにもしてあげるよ?」
ジニーと反対側に座っていたハーマイオニーの頭を、自分の肩に引き寄せた。
「…、」
「着くまで寝よう…オレも眠いや…」
3人はそのまま眠りについた。
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