The ounder of rphan U 
 -総受男装ハーマイオニー百合夢-




夫妻の葬儀の後、サクヤは義祖父母の家の裏の森にいた。

その森の奥深くにある、
大きな木の切り株に寝ころんでいる。

そこが、サクヤがホグワーツに入学する前によく行った
お気に入りの場所だった。


穏やかに射し込む日の光と
どこからともなく聞こえる小鳥のさえずりは、
この状況でなければとても癒されるものだろう。

2年ぶりに寝転んでゆっくりと時間を過ごしているというのに、懐かしさの欠片も感じない。

今のサクヤにとっては、
何もかもが煩わしかった。


「………」


今日もまた、脳裏に焼きついた
生々しい記憶を思い返していた。


放たれた炎の中で、
義祖父母は倒れている。

マグルの警察は
火災から逃げ遅れ、一酸化炭素中毒で死亡と見ていたが、
そんなものではなかった。

炎が家中を回る前から、
義祖父母は死んでいた。殺されていた。

そして、ヴォルデモートは
何もかもを焼き払って去って行った。


苦しんだであろう夫妻を想像し、全てを焼き尽くす炎を想像し、胸はズキンと痛んだ。
去年家を出る前に言ってくれた最期の言葉を思い出した。

「行ってきなさい」

「何を迷う事があるんじゃ?
わし等の事は気にせんでいい」

「自分の思うままに動きなさい」




「っ…、」


また、走馬灯のように、
義祖父母との記憶が甦ってきた。




まだ、サクヤが
うんと小さいとき―…。


―――
『サクヤや。
誰もが最初に教わる魔法とは、
何か分かるかい?』

『だれもが?』

『そう、誰もが。
魔女も魔法使いも、
マグルまでもが教わる魔法じゃ』

『マグルも?
マグルはまほうを
つかえないんじゃないの?』

『使えはしないが、
知ることはできるんじゃよ。

さて、サクヤには
その魔法が何か、分かるかな?』

『んっと…
…わかんない』

『ほっほ…。
まだ、早かったかな』

『なに?おじーちゃん、
おしえて?』

『これはね、
人に教えてもらうものじゃないんだよ。
自分で、自分の心で、気付くものじゃ。

ヒントは…そう、サクヤも
もうたくさんもらっているものだよ』

『サクヤも?
えー…わかんないや…』―――




閉じていた目を、
静かに開ける。


「今なら、分かるよ…
おじいちゃん、おばあちゃん」


無表情でそう呟いた。
木漏れ日を受け輝く、涙の一筋。





誰もが
 最初に教わる魔法―


 言うまでもなくそれは、





 “愛情”、

だろ…?――









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