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燧が寝入ってしばらくした頃、静かに部屋の扉を開ける人物がいた。
咲夜だ。
「………、」
傷が痛むのだろうか、燧はひどく寝苦しそうだった。
「どうして、あなたが…」
汗で顔にはり付いた燧の綺麗な赤髪を払う。
「何しにここへ来たの…?
…燧」
咲夜は目を伏せ、何かを思う。
それを知る者はここに誰もいない。
しばらく燧を見つめたあと、頬を撫で、
踵を返しまた静かに部屋を出ていった。
「………」
燧はそっと目を開けた。
髪を払われたときに、目が覚めてしまったようだ。
「名前…」
思えば、やっと今、初めて自分の名を口にしてくれた。
「僕は、何かをするために、ここへ来たのか…?
分からないよ…」
片手で顔を覆い、汗を大雑把に拭った。
「痛い…」
永琳からもらった痛み止めを飲んで、
複雑な思いとともに、燧はまた寝入った。
>>To be continued
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