The founder of orphan T
-総受男装ハーマイオニー百合夢-
「サクヤ!見て!
ニコラス・フラメルを見つけたわよ!」
サクヤが女子寮に戻るといきなり、ハーマイオニーが分厚い本を片手にやってきた。
「え…」
「ハリーがカエルチョコのカードで見つけて、それで分かったの!ほら!」
その本には、フラメルが錬金術師だという事や、今は665歳だという事など、サクヤが得ていた情報とほとんど同じだった。
「(ハル達もついに見つけたか…)
偉いぞハル!よくやった!」
一応は褒めたものの、サクヤの心境は複雑だった。
翌朝、「闇の魔術に対する防衛術」の授業で、
狼人間にかまれた傷の様々な処置法についてのノートを早めに採り終えたサクヤは居眠りをしていた。
(クィレルの授業だからだ)
「サクヤ、サクヤ…起きて」
「ん…?」
ハリーがサクヤを起こす。
「僕、やっぱり試合に出るよ…
スリザリンの連中に目にものを見せてやる…僕らが勝つんだ!」
「ハリー…。
そうだな、その意気だ!」
サクヤとハリーは拳をぶつけ合った。
その数日後、3人には適当な理由をつけて別れ、サクヤは1人廊下を歩いていた。
「次の試合もハリーが出場だ…クィレルも見に来るだろうし…危なすぎる…」
サクヤは目的の場所にたどり着いた。校長室だ。
校長室前でしばらく待っていると、ダンブルドアが校長室から出てきた。
「おやおや、どうしたねミス・フェリックス…こんな所で」
「校長先生、次のクィディッチの試合、見に来てもらえませんか?」
これがサクヤの待っていた理由だ。
ダンブルドアが見に来れば、クィレルはそう簡単にはハリーに手出し出来ないと踏んだのだ。
「ほっほ。
言われなくとも見に行くつもりじゃがの。
久々にスリザリンから寮対抗杯が動くかもしれん大事な試合じゃ。
…君はわざわざわしを誘いに来てくれたのかの?」
「あ…はい、ぜひ校長にも見て欲しくて…。
次はハリーが試合に出る番です。
楽しみにしていてください!それでは」
校長は本当の理由を知る必要はない。
そう判断したサクヤは尤もな理由を言ってその場を去った。
「(校長は居るだけでも偉大な魔術だ)」
そう思ったのだ。
*****
「ハリー、控室で祈ってんかんな!
オレの出番がないようにって」
試合当日。
ロンとハーマイオニーと別れたハリーとサクヤはウッドの激励の後、
試合開始の合図を待っているところだった。
自信がなさそうなハリーをサクヤはバシッと叩いて元気付けた。
「うん…!」
ハリーも一生懸命に自分を叱咤している。
「大丈夫、ハルやロンが見張っててくれてるから。
それに校長もかけつけてくれたんだぜ?危険はないさ!」
「…サクヤ、もしかして君がダンブルドアを…」
「さあ?どうだろね」
「はぐらかすなよ」
「もうじき試合開始だ!頑張ってこいよ!ハリー」
「………」
その時ちょうど合図の笛が鳴ったので、
サクヤ以外のグリフィンドールチームは箒に跨って飛び立っていった。
「さてと、オレは監視監視!」
サクヤは控室から頭をのぞかせ、クィレルを見つつ、
何か起きた時にいつでも飛び立てるように箒をずっと掴んでいた。
「(ハリー…少しでも早くスニッチを見つけてくれよ…!)」
と、ハリーをチラッと見たサクヤは息をのんだ。
ハリーがものすごい急降下を始めたのだ。
サクヤがハリーの視線の先を見ると、スニッチがあった。
「ハリー!行けぇー!!」
思わず叫んでしまった。
次の瞬間、ハリーは急降下を止め、意気揚々と手を挙げた。
その手にはスニッチが握られていた。
スタンドがドッと沸いた。
サクヤは思わず駆け出し、地上に降りたハリーに抱きついた。
「すごいよハリー!新記録だ!!」
「ありがとうサクヤ!」
他のグリフィンドール選手が次々とハリーの周りに降りてきた。
誰かがハリーの肩に手を置いた。ダンブルドアだ。
「よくやった。
君があの鏡の事をクヨクヨ考えず、一生懸命やってきたのは偉い…すばらしい…」
そうハリーだけに聞こえるよう言った。
「君もだミス・フェリックス…こんなすばらしい試合に招待してくれてありがとう」
ダンブルドアはそのキラッとした目でサクヤを見つめた。
「あ!やっぱりサクヤが先生を呼んだんじゃないか!」
ハリーは冗談混じりに怒ってみせた。
「あはは!いいじゃん!結果オーライだったんだし!
ね!校長!」
「そうじゃな。
実にすばらしかった」
ダンブルドアはサクヤの頭を撫でた。
サクヤはハリーやダンブルドアに簡単な別れをし、スネイプの元へ向かった。
「先生、もっと素直に喜びましょうよ!」
唇をギュッと結んでハリーを見ていたスネイプに言った。
「…なぜ喜ばしくない事でこの我輩が喜ばねばならん?」
「はぁ…ったく…」
あまりの捻くれにサクヤは少し呆れた。
「それより…ありがとうございました!」
丁寧にお辞儀をするサクヤ。
「…何の真似だ?」
「目の薬です!
名前が書いてなかったけど…先生しかいないじゃないですか。
あれがクリスマスプレゼントだなんて…最高のプレゼントでした!」
サクヤは本当に嬉しそうに笑った。
「…何の事だか分からんな」
スネイプはたまらず目を逸らした。
「もう!先生ってば!」
肩でど突く。
「調子にのるな!」
スネイプが本気で怒っていない事を知っているサクヤは笑いでその台詞を飛ばした。
「サクヤ!行くよー!」
ハリーが呼んでいる。
「じゃあ先生、本当にありがとうございました!」
サクヤはもう一度だけお辞儀をした。
「いいから早く行け」
そう言われたサクヤは、微笑んでハリーの所へ戻って行った。
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