The founder of orphan T
-総受男装ハーマイオニー百合夢-
その時、ネビルが談話室に倒れこんできた。
両足がピッタリくっついていて、“足縛りの呪い”をかけられたことがすぐに分かった。
みんな笑い転げたが、サクヤがキッと睨むと、途端に笑いが止まった。
ハーマイオニーはすぐに立ち上がり、呪いを解く呪文を唱えた。
「どうした?」
サクヤが手を差し出して尋ねた。
「マルフォイが…」
ネビルはサクヤの手を借り、自由になった足で立ち上がった。
震えている。
「図書館の外で出会って…だれかに呪文を試してみたかったって…」
「マクゴナガル先生のところに行きなさいよ!
マルフォイがやったって報告するのよ!」
ハーマイオニーが急き立てた。
「これ以上面倒事は…サクヤ?」
サクヤは出口に向かって歩き出した。
「ちょっとマルフォイのところへ行ってくるよ。
大丈夫、減点になるようなヘマしないから」
ニコッと笑い、サクヤは談話室を出た。
「ったく、何やってんだかドラコのヤツ…」
図書館の近くの廊下の角を曲がると、未だに笑いこけているマルフォイとクラッブ、ゴイルがいた。
「ドラコ!」
「サクヤか!」
マルフォイはサクヤに気付くと、クラッブ達をスリザリンの談話室に戻らせた。
「なにかネビルに伝えたいことは!?」
サクヤはマルフォイのネクタイを掴み、詰め寄った。
「あ、え…!?」
マルフォイは急なことで分からなかったが、先ほどの自分の行為を思い出した。
「あー、だって…試す相手に困っていたんだ」
「だからってネビルにすることないだろ!?」
「じゃあサクヤが実験体になってくれたか?」
マルフォイは冗談混じりに言った。
「最終的にちゃんと呪文を解いてくれるってんならな!
ネビル怖がってたぞ!次会ったら絶対謝れ!
あと、悪いことをしたら、言い訳する前に素直に謝ることを覚えろ!OK!?」
「オ、オーケー…」
マルフォイはサクヤの気迫に押されていた。
「んならよし!」
サクヤはネクタイから手を放し、微笑んだ。
「!」
マルフォイはサクヤの首元に目が行った。
ネックレスのチェーンが覗いている。
無意識に手を伸ばした。
「っわ!
どこ触ってんだよ!」
サクヤは極端に肩を竦めた。
「あ、ごめん…」
マルフォイはすぐに手を引っ込めた。
「いきなり首触んなよ!くすぐったいだろ!」
サクヤはクルリと背を向け、腕組みをした。
「首…弱いんだ?」
マルフォイはサクヤの意外な弱点を知り、面白がって首をそっと撫でた。
「うぁっ…もう!ドラコ!」
情けない声が漏れ、サクヤは慌ててゴチン!とドラコにゲンコツした。
「イタッ!
ごめんごめん。
そのネックレス、どうしたんだ?
休暇前には無かったよな、貰い物?」
ネックレスを指さし言った。
「これ?
うん、ハリーとロンとハーマイオニーとでお揃いなんだ!」
サクヤは嬉しそうに言いつつネックレスを出した。
「へぇそうかい…」
ドラコは途端に興味が失せた。
と、もう一つ何かが付いているのに気づく。
「これって…もしかして…」
「おう、ドラコから貰った指輪」
「そ、そうか…」
マルフォイは必死に顔がゆるむのを我慢した。
顔も熱い気がする。
先ほどとは大違いで、今は途轍もなく嬉しい。
「ありがとな、指輪」
サクヤはニコッと笑った。
「いや、こちらこそ『ありがとう』だよ…
付けてくれてありがとう、フェリックス嬢」
紳士の辞儀をしたマルフォイ。
サクヤはつい笑ってしまった。
「あは、ドラコじゃないみたい!」
「失敬な!」
「じゃ、次ネビルに会った時に絶対に謝れよ!
おやすみ、ドラコ」
「ああ。おやすみ」
グリフィンドールに戻っていくサクヤをしばらく見つめた後、マルフォイもスリザリンの談話室へと戻っていった。
談話室に戻ったマルフォイの機嫌がよかったのは、言うまでもない話だ。
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