The founder of orphan T
-総受男装ハーマイオニー百合夢-
‐翌朝、クリスマス休暇初日‐
「じゃあなっハル…!」
ぶわっ…とでも効果音が付きそうな程の勢いで泣くサクヤ。
「ええサクヤ…元気でねっ!」
がばっ…とでも効果音が付きそうな程の勢いで抱きつくハーマイオニー。
「ハーマイオニー!」
口を挟むのはロンだ。
「君は、家に帰ったらフラメルについて聞いてみて。
パパやママなら聞いても安全だろう?」
「ええ、安全よ。
二人とも歯医者だから」
ハーマイオニーはそう答えた。
時間になると、帰省する生徒を乗せた紅の蒸気機関車がホグワーツを出ていった。
クリスマス休暇はサクヤにとって、否、全生徒にとっても、
楽しいことがいっぱいで、ハリーもロンもフラメルのことを忘れた。
談話室はいつもより閑散としていて、暖炉のそばの心地よいひじかけ椅子に座ることができた。
何時間も座り込んで、串に刺せるものはおよそ何でも刺して火であぶって食べた
――パン、トースト用のクランペット、マシュマロ――
そして、マルフォイを退学させる策を練った。
実際にはうまくいくはずはなくとも、話すだけで楽しかった
――サクヤも、話すだけなら、と許してくれた――
ある日はロンがハリーに魔法使いのチェスを手ほどきし、
またある日はサクヤとロンがチェスでいい勝負を繰り広げた――軍配はロンに上がった――
――そして飛ぶように毎日が過ぎ、クリスマス当日
「Merry Christmas!ハリー、ロン!」
クリスマス休暇になると同時に、
ハリー達と同じ部屋で寝ることにしていたサクヤ――一人だと悪夢を見るからだ――は、
ネビルのベッドから飛び起きた。
「メリークリスマス、サクヤ…」
ロンは寝ぼけまなこで、
「メリークリスマス!サクヤ!」
ハリーはすでに覚醒していて、ガウンを着つつの挨拶だ。
二人ともクリスマスプレゼントを開け始めたので、サクヤも山ほど積まれた自分宛てのクリスマスプレゼントを開け始めた。
『サクヤへ─おじいちゃんおばあちゃんより』
手編みのニット帽だ。…とても暖かい。
『Dearサクヤ…ハーマイオニー』
ハーマイオニーには珍しく、本の贈り物ではない。
しかし腐ってもハーマイオニー・グレンジャー。本でなかったなら、万年筆だ。
『サクヤ─fromドラコ・マルフォイ』
包みの中には、いかにも高そうなシルバーリングだ。
『サクヤへ…セドリック』
セドリックらしい、綺麗に透き通っている水晶の置き物だ。
『toサクヤ─ハグリッドより』
…オークルが喜びそうな、大型ふくろう用のエサだ。
『我らがサクヤへ!フレッド、ジョージ』
やはり、イタズラ道具のセットだ。最新式がずらり。
「はい。サクヤに」
ハリーからだ。
「そばにいるなら、手渡しに限るよね」
「僕からも」
ロンも包みを差し出した。
「ありがとう、二人とも!
…はい、オレから。
オレも手渡しがいいなって思ってたんだ」
サクヤは包みを受け取り、ベッドサイドから2つの包みをそれぞれに渡した。
ハリーの包みには、目の色によく似た緑の石が埋め込まれたネックレス。
ロンのには、燃えるような赤の同じ種類のネックレスを。
「ちなみにハルと買いに行ったんだ。
ハルは金色のをあげたんだ。
ハルはオレに買ってくれた。――目の色に合うからって」
そう言って見せたのは、淡い空色。
ハリー達も嬉しくなって早速つけた。
サクヤは今もらった包みを開けてみた。
ハリーからはクリスマスカードとお菓子のセット、
「ごめんね、今持ってるお金じゃこれしか買えなかったんだ…」
ロンからは――包みが2つあった――、魔法使いのチェスセットと、手編みのセーターだった。
「君も自分のチェスセットは無いって言ってただろう?
あとそれは…僕のママからだよ…手紙でサクヤの事を話したんだ…」
「ハリー、そんな事気にすんな!
カードに気持ちが籠もってるから、すっごく嬉しいよ!
ロンもチェスセットをありがとう!セーターも…すっげぇあったかいよ!
おばさんに礼しなきゃな!」
サクヤはSと書かれたセーターを着て言った。
「あ、そうだ…」
サクヤはつけていたネックレスに、ドラコからもらったリングを通した。
「これでよしっと」
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