The founder of orphan T
-総受男装ハーマイオニー百合夢-
「やったなハリー!」
「うん、ありがとう!」
サクヤが片手を挙げると、ハリーはそれにハイタッチした。
「祈っててくれたサクヤのおかげだよ!」
「いやいやハリーの実力さ!」
「それだって、練習でサクヤと鬼ごっこしたからこんなに上手くなれたんだよ?
やっぱサクヤのおかげ!」
競技場を出ると、そこにはグリフィンドール寮生が皆、2人の登場を待ちわびていた。
「すごかったよ!我らが天才シーカー・ハリー&サクヤ!!」
皆が口をそろえて祝福を述べた。
「ありがとうみんな!」
素直に喜ぶハリーと、
「え、オレも?」
驚くサクヤ。
「ほら、みんな知ってるんだよ」
「サクヤがハリーの練習に大きく貢献してるって事を」
ハリーが皆にもみくちゃにされていくのを見つつ、ウィーズリーツインズがサクヤの両サイドにやってきた。
「サクヤは知らないの?
練習中、サクヤ目当てのギャラリーが毎回できてる事」
ジョージが言う。
「いやいや、それオレ目当てじゃなくて、ハリー目当てだとおもうぜ?」
「寮を超えて、他寮の生徒だって見に来てるし、
たまにマクゴナガル先生まで見に来てるんだぜ?
『ミス・フェリックスがまた怪我をしてしまわないか心配です!』とか言ってな」
フレッドが言う。
「え、マクゴナガル先生まで!?
…ってかそれよりも、オレ=怪我って扱い!?」
「まあまあサクヤ」
「そんな事より!今は祭りだー!!」
ツインズでサクヤを持ち上げ、人の波に突っ込んでいく。
「わー!わー!降ろせ二人とも!!
恥ずかしいだろっ!?」
途端に周りに人が集まる。
「わっ、誰だ今ほっぺにチューしたの!
ぅわ!今くすぐったの誰!?」
ハリー同様…否、それ以上にもみくちゃにされるサクヤ。
それを複雑な面持ちで見つめる少女が1人。
「(私まだサクヤに『おつかれさま』って言ってないのに…
サクヤったらあんなにチヤホヤされて満更でもない顔して…)」
ハーマイオニーだ。
「(なにかしらこのモヤモヤ…なんだか嫌な気分だわ…)」
1人イライラしていた。
と、そこへサクヤがやっとの思いで辿り着く。
「や…やっっと見つけた…!」
息は完全に切れている。
「な、何?」
ハーマイオニーはつい素っ気ない態度をとってしまう。
「え…あ、いや…
…ただ、ハルはどこかなーって思って!」
一瞬の寂しそうな表情はすぐに笑顔に変わってしまった。
「ってロン?
どうしたんだその鼻血!?」
ロンに「おつかれさま」と後ろから言われて振り返ったサクヤのセリフだ。
「こ、これは…さっき人にぶつかって…」
ロンは喧嘩の事は伏せた。
後で尻拭いをしてくれるサクヤを、申し訳ないと思ったからだ。
「ま、言う気がないならいいけど。
だいたい予想はつくしな」
しかし、サクヤにはお見通しだった。
丁度そこへ青あざを作ったマルフォイがやってきた。
「これはこれは…立派なアイメイクをお召しで」
ロンが嫌味っぽい丁寧な口調で言った。
「そちらこそ、髪の色と同じスキンメイクとは…とても似合ってますね」
引きつった笑みを貼り付け、マルフォイも負けじと返す。
「とうっ!」
「ぐはっ!?」
サクヤはマルフォイの横腹に肘鉄を喰らわせた。
「な、何だよサクヤ!?」
脇腹をさすりながら問う。
「ネビルに謝ったか?」
また制服のネクタイを掴み、睨み上げた。
「あ、謝ったよ!さっき観戦席で!」
「…へぇ?
それで解決したかに思われたが、そこに偶然居合わせたロンとまた厄介事を起こしたってか」
「情けない」とため息を吐くサクヤに反論はできなかった。
「もっかい謝れ。今度はロンに」
ロンの前まで引っぱり、面と向かわせる。
「わ、悪かった」
決して目は合わせない。
「ほら、ロンも」
「ごめん…」
「はい、仲直りの握手!」
互いの右手をとり、無理やり合わせる。
「「な、なんでこんな事までしなきゃいけないんだよ!」」
「…おお、ナイスハモり。
けっこう気が合うんじゃない?」
「「誰が!!」」
「あっはっは」
「まあまあ」と2人をなだめる。
「あのさ…あんまりこの僕に指図するもんじゃないよ?」
ニヤりと笑ったマルフォイは、サクヤの首にそっと触れた。
「お、おお前っ…どこ触ってんだよ…っ!」
一気に後ずさる。
「?
サクヤ、首がどうかしたの?」
「あれ?
親友のミスター・ウィーズリーはこの事を知らなかったのかな?」
腐ってもマルフォイ。演技がくさかった。
「ではもう1人、ミス・グレンジャー。
君も知らなかったと?」
「…ええ」
ハーマイオニーは先ほどからずっと機嫌が悪い。
「ばかっ、ばらす事ないだろ!?」
「ああ、悪いね。
君と僕しか知らない秘密だったね」
マルフォイは卑しく笑う。完全に確信犯だ。
「それじゃあ僕はもう戻るよ。
また、僕の所に来てもいいよ。サクヤ。
じゃあね」
「ふん、もう行かねぇよ!」
マルフォイは“また”の部分を強調して言い、去っていった。
マルフォイの事でハーマイオニーの機嫌が最悪になったのは言うまでもない。
( 76/98 )
[prev] [next]
[back]
[しおりを挟む]