The ounder of rphan X 
 -総受男装ハーマイオニー百合夢-




2人は宿題を続けた。
窓から見える空がだんだん暗くなり、談話室から少しずつ人が消えていった。
23時半に、ハーマイオニーが欠伸をしながら2人のそばにやってきた。

「もうすぐ終わる?」

「いや」

ロンがひと言で答えた。

「木星の一番大きな月はガニメデよ。カリストじゃないわ」

ロンの肩越しに「天文学」のレポートを指差しながら、ハーマイオニーが言った。

「それに、火山があるのはイオよ」

「ありがとうよ」

ロンは唸りながら、間違った部分をぐちゃぐちゃに消した。

「ごめんなさい。私、ただ――」

「ああ、ただ批判しにきたんだったら――」

「ロン――」

「お説教を聞いてる暇はないんだ、いいか、ハーマイオニー。
僕はもう首までどっぷり――」

「違うのよ――ほら!」

ハーマイオニーは一番近くの窓を指差した。ハリーとロンが同時にそっちを見た。
きちんとしたコノハズクが窓枠に止まり、部屋の中にいるロンのほうを見つめていた。

「ヘルメスじゃない?」

ハーマイオニーが驚いたように言った。

「ひえー、ほんとだ!」

ロンは小声で言うと、羽根ペンを放り出し、立ち上がった。

「パーシーがなんで僕に手紙なんか?」

ロンは窓際に行って窓を開けた。
ヘルメスが飛び込み、ロンのレポートの上に着地し、片脚を上げた。手紙が括りつけてある。
ロンが手紙を外すと、ふくろうはすぐに飛び立った。
ロンが描いた木星の月、イオの上にインクの足跡がベタベタ残った。

「間違いなくパーシーの筆跡だ」

ロンは椅子に戻り、とっぷりと腰掛けて巻紙の宛名書きを見つめながら言った。

"ホグワーツ、グリフィンドール寮、ロナルド・ウィーズリーへ"

ロンは2人を見上げた。

「どういうことだと思う?」

「開けてみて!」

ハーマイオニーが待ちきれないように言った。ハリーも頷いた。
ロンは巻紙を開いて読みだした。
先に読み進むほど、ロンのしかめっ面がひどくなった。
読み終わると、辟易した顔で、ハリーとハーマイオニーに手紙を突き出した。
2人は両側から覗き込み、顔を寄せ合って一緒に読んだ。


親愛なるロン

たったいま、君がホグワーツの監督生になったと聞かされた(しかも魔法大臣から直々にだ。大臣は君の新しい先生であるアンブリッジ先生から聞いた)。

この知らせは僕にとってうれしい驚きだった。
まずはお祝いを言わなければならない。
正直言うと、君が僕の足跡を追うのではなく、いわば「フレッド・ジョージ路線」を辿るのではないかと、僕は常に危惧していた。
だから、君が権威をバカにすることをやめ、きちんとした責任を負うことを決意したと聞いたときの僕の気持ちは、君にもわかるだろう。

しかし、ロン、僕はお祝い以上のことを君に言いたい。
忠告したいのだ。
だからこうして、通常の朝の便ではなく、夜に手紙を送っている。
この手紙は、詮索好きな目の届かないところで、気まずい質問を受けないように読んでほしい。

魔法大臣が、君が監督生だと知らせてくれたときに、ふと漏らしたことから推測すると、君はいまだにハリー・ポッターやサクヤ・フェリックスと親密らしい。
ロン、君に言いたいのは、あの少年少女とつき合い続けることほど、君のバッジを失う危険性を高めるものはないということだ。
そう、君はこんなことを聞いてきっと驚くだろう――君は間違いなく、ポッターたちはいつでもダンブルドアのお気に入りだった、と言うだろう――しかし、僕はどうしても君に言わなければならない義務がある。
ダンブルドアがホグワーツを取り仕切るのも、もうそう長くはないかもしれない。
重要人物たちは、ポッターの行動について、まったく違った意見を――そして恐らく、より正確な意見を――持っている。いまはこれ以上言うまい。
しかし、明日の「日刊予言者新聞」を読めば、風向きがどの方向なのかがわかるだろう――記事に僕の名前が見つかるかもしれない!
まじめな話、君はポッターやフェリックスと同類扱いされてはならない。
そんなことになれば、君の将来にとって大きな痛手だ。
僕は卒業後のことも含めて言っているのだ。
我々の父親がハリーの裁判につき添っていたことから君も承知のとおり、ポッターはこの夏、ウィゼンガモット最高裁大法廷で懲戒尋問を受け、結果はあまり芳しくなかった。
フェリックスも然りだ。ダンブルドアを連れていき罰を免れた。
僕の見るところ、彼らは単に手続き的なことで放免になった。
僕が話をした人の多くは、いまだに彼らが有罪だと確信している。

ポッターやフェリックスとの繋がりを断ち切ることを、君は恐れるかもしれない――なにしろポッターは情緒不安定で、フェリックスは不良少女だ。ことによったら暴力を振るうかもしれない――
しかし、それが少しでも心配なら、そのほか君を困らせるようなポッターやフェリックスの挙動に気づいたら、ドローレス・アンブリッジに話すように強く勧める。
本当に感じのいい人で、喜んで君にアドバイスするはずだ。

このことに関連して、僕からもう1つ忠告がある。
先ほどちょっと触れたことだが、ホグワーツでのダンブルドア体制はまもなく終わるだろう。
ロン、君が忠誠を誓うのは、ダンブルドアではなく、学校と魔法省なのだ。
アンブリッジ先生はホグワーツで、魔法省が切に願っている必要な改革をもたらす努力をしていらっしゃるのに、これまで教職員からほとんど協力を得られていないと聞いて、僕は非常に残念に思う。
(もっとも来週からはアンブリッジ先生がやりやすくなるはずだ――これも明日の「日刊予言者新聞」を読んでみたまえ!)
僕からはこれだけ言っておこう――いま現在アンブリッジ先生に進んで協力する姿勢を見せた生徒は、2年後に首席になる可能性が非常に高い!

夏のあいだ、君に会う機会が少なかったのは残念だ。親を批判するのは苦しい。
しかし、両親がダンブルドアを取り巻く危険な輩と交わっているかぎり、ひとつ屋根の下に住むことは、残念だが僕にはできない。
(母さんに手紙を書くことがあったら知らせてやってほしいのだが、スタージス・ポドモアとかいう、ダンブルドアの仲間が、魔法省に侵入した科で最近アズカバンに送られた。
両親も、これで、自分たちがつき合っている連中がつまらない小悪党だということに目を開かせられるかもしれない)
僕は、そんな連中と交わっているという汚名から逃れることができて幸運だった――魔法大臣は僕にこの上なく目をかけてくれる――ロン、家族の絆に目が曇り、君までが両親の間違った信念や行動に染まることがないように望んでいる。
僕は、あの2人もやがて、自らの大変な間違いに気づくことを切に願っている。
そのときはもちろん、僕は2人の十分な謝罪を受け入れる用意がある。

僕の言ったことを慎重によく考えてほしい。
とくにハリー・ポッターとサクヤ・フェリックスについての部分を。

もう一度、監督生就任おめでとう。

君の兄、パーシー


ハリーはロンを見た。

「さあ」

ハリーはまったくのお笑い種だという感じで切り出した。

「もし君が――えーと――なんだっけ?」

――ハリーはパーシーの手紙を見直した――

「そうそう――僕やサクヤとの『繋がりを断ち切る』つもりでも、僕は暴力を振るわないと誓うよ。
ああ――でも、サクヤはどうかな……なんたって不良少女なんだし――慎重にやったほうがいいかもな――」

「返してくれ」

ロンは手を差し出した。

「あいつは――」

ロンは手紙を半分に破いた。言葉も切れ切れだった。

「世界中で――」

ロンは手紙を4つに破いた。

「一番の――」

8つに破いた。

「大バカヤロだ」

ロンは破った手紙を暖炉に投げ入れた。

「さあ、夜明け前にこいつをやっつけなきゃ」

ロンはシニストラ先生の論文を再び手元に引き寄せながら、ハリーに向かってきびきびと言った。
ハーマイオニーは、何とも言えない表情を浮かべてロンを見つめていた。

「あ、それ、こっちによこして」

ハーマイオニーが唐突に言った。

「え?」

ロンが聞き返した。

「それ、こっちにちょうだい。
目を通して、直してあげる」

ハーマイオニーが言った。

「本気か?ああ、ハーマイオニー、君は命の恩人だ」

ロンが言った。

「僕、なんと言って――?」

「あなたたちに言ってほしいのは、『僕たちは、もう決してこんなにぎりぎりまで宿題を延ばしません』だわ」

両手を突き出して2人のレポートを受け取りながら、ハーマイオニーはちょっとおかしそうな顔をした。

「ハーマイオニー、ほんとにありがとう」

ハリーは弱々しく礼を言い、レポートを渡すと、目を擦りながら肘掛椅子に深々と座り込んだ。



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