The ounder of rphan X 
 -総受男装ハーマイオニー百合夢-




更衣室の物置からボールを取り出し、2人は練習に取りかかった。
ロンが3本のゴールポストを守り、ハリーがチェイサー役でクアッフルを投げてゴールを抜こうとした。
ロンはなかなか上手いとハリーは思った。
ハリーのゴールシュートの4分の3をブロックしたし、練習時間をかけるほどロンは調子を上げた。
2時間ほど練習して、2人は昼食を食べに城へ戻った――昼食の間ずっと、ハーマイオニーは、2人が無責任だとはっきり態度で示した。
それから2人にしっかり聞こえるように、「サクヤは本当に頑張ってるわ。『自然に施肥する灌木』を終わらせたし、あとはフリットウィック先生の反対呪文の宿題だけね」とこれ見よがしに褒めたたえた。
ハリーもロンも、しっかりと聞こえないふりをして昼食を胃袋に詰め込むと、そこでようやくサクヤに声をかけて、本番トレーニングのため、3人でクィディッチ競技場に戻った。
更衣室に入ると、アンジェリーナ以外の選手が全員揃っていた。

「大丈夫か、ロン?」

ジョージがウィンクしながら言った。

「うん」

ロンは競技場に近づくほど口数が少なくなっていた。

「俺たちに差をつけてくれるんだろうな、監督生ちゃん?」

クィディッチ・ユニフォームの首から髪をくしゃくしゃにして頭を出しながら、悪戯っぽいニヤニヤ笑いを浮かべて、フレッドが言った。

「黙れ」

ロンは初めて自分のユニフォームを着ながらむすっとした顔で言った。
肩幅がロンよりかなり広いオリバー・ウッドのユニフォームにしては、ロンにピッタリだった。

「さあ、みんな」

着替えをすませたアンジェリーナがキャプテン室から出てきた。

「始めよう。
アリシアとフレッド、ボールの箱を持ってきてよ。
ああ、それから、外で何人か見学しているけど、気にしないこと。いいね?」

アンジェリーナは何気ない言い方をしたつもりだったろうが、ハリーとサクヤは顔を見合わせ、招かれざる見学者が誰なのかを察した。
推察とおりだった。更衣室から競技場の眩しい陽光の中に出ていくと、そこはスリザリンのクィディッチ・チームと取り巻き連中数人の野次と口笛の嵐だった。
観客席の中間あたりの高さの席に陣取って野次る声が、空のスタジアムにワンワン反響していた。

「ウィーズリーが乗ってるのは、なんだい?」

マルフォイが気取った声で喋った。

「あんな黴だらけの棒っ切れに飛行呪文をかけたやつは誰だい?」

クラッブ、ゴイル、パンジー・パーキンソンが、ゲラゲラ、キャーキャー笑いこけた。
ロンは箒に跨り、地面を蹴った。
ハリーも、ロンの耳が真っ赤になるのを見ながらあとを追った。サクヤもため息を吐いて続いた。

「ほっとけよ」

スピードを上げてロンに追いついたサクヤが言った。
反対隣に飛んできたハリーも頷き、口を開いた。

「あいつらと対戦したあとで、どっちが最後に笑うかがはっきりする……」

「その態度が正解だよ、サクヤ、ハリー」

クアッフルを小脇に抱えて3人のそばに舞い上がってきたアンジェリーナが、頷きながら言った。
アンジェリーナは速度を落とし、空中のチームを前にして静止した。

「オッケー、みんな。
ウオーミングアップにパスから始めるよ。チーム全員で、いいね――」

「ヘーイ、ジョンソン。
そのヘアスタイルはいったいどうしたの?」

パンジー・パーキンソンが下から金切り声で呼びかけた。

「頭から虫が這い出してるような髪をするなんて、そんな人の気が知れないわ」

アンジェリーナはドレッドヘアを顔から払い退け、落ち着きはらって言った。

「それじゃ、みんな、広がって。さあ、やってみよう……」

ハリーは他のチームメートとは逆の方向に飛び、クィディッチ・ピッチの一番端に行った。
ロンはその反対側のゴールに向かって下がった。サクヤはその中間あたりだ。

アンジェリーナは片手でクアッフルを上げ、フレッドに向かって投げつけた。
フレッドはサクヤに、サクヤはジョージに、ジョージはハリーにパスし、ハリーからロンにパスしたが、ロンはボールを取り落とした。
マルフォイの率いるスリザリン生が、大声で笑ったり、甲高い笑い声をあげたりした。
ロンはクアッフルが地面に落ちる前に捕まえようと、一直線にボールを追いかけたが、急降下から体勢を立て直すときにもたついて、箒からズルリと横に滑ってしまい、プレーする高さにまで飛び上がってきたときは顔が真っ赤だった。
ハリーはフレッドとジョージが目を見交わすのを目撃したが、いつもの2人に似合わず何も言わなかったので、ハリーはそのことに感謝した。

「ロン、パスして」

アンジェリーナが何事もなかったかのように呼びかけた。
ロンはクアッフルをアリシアにパスした。
そこからハリーにボールが戻り、ジョージにパスされた。

「ヘーイ、ポッター、傷はどんな感じだい?」

マルフォイが声をかけた。

「寝てなくてもいいのか?
医務室に行かなくてすんだのは、これで、うん、まるまる1週間だ。記録的じゃないか?」

ジョージがアンジェリーナにパスし、アンジェリーナはハリーにバックパスした。
不意を衝かれたハリーは、それでも指の先でキャッチし、すぐにロンにパスした。
ロンは飛びついたが、数cmのところでミスした。

「何をやってるのよ、ロン」

アンジェリーナが不機嫌な声を出した。
ロンはまた急降下してクアッフルを追っていた。

「ぼんやりしないで」

ロンが再びプレイする高さまで戻ってきたときには、ロンの顔とクアッフルとどちらが赤いか判定が難しかった。
マルフォイもスリザリン・チームもいまや大爆笑だった。

三度目でロンはクアッフルをキャッチした。
それでほっとしたのか、今度はパスに力が入りすぎ、クアッフルは両手を伸ばして受け止めようとしたケイティの手をまっすぐすり抜け、思いっきり顔に当たった。

「ごめん!」

ロンがいて、怪我をさせはしなかったかとケイティのほうに飛び出した。

「ポジションに戻って!そっちは大丈夫だから!」

アンジェリーナが大声を出した。

「チームメートにパスしてるんだから、箒から叩き落とすようなことはしないでよ。頼むから。
そういうことはブラッジャーに任せるんだ!」

ケイティは鼻血を出していた。
下のほうで、スリザリン生が足を踏み鳴らして野次っている。
フレッドとジョージがケイティに近寄っていった。

「ほら、これ飲めよ」

フレッドがポケットから何か小さな紫色の物を取り出して渡した。

「一発で止まるぜ」

「よーし」

アンジェリーナが声をかけた。

「フレッド、ジョージ、バットとブラッジャーを持って。
ロン、ゴールポストのところに行くんだ。
ハリー、私が放せと言ったらスニッチを放して。サクヤとどっちが先に掴むか競争だ。
もちろん、チェイサーの目標はロンのゴールだ」

ハリーは双子のあとに続いて、スニッチを取りに飛んだ。

「ロンのやつ、ヘマやってくれるぜ、まったく」

3人でボールの入った木箱のそばに着地し、ブラッジャー1個とスニッチを取り出しながら、ジョージがブツブツ言った。

「上がってるだけだよ」

ハリーが言った。

「今朝、僕と練習したときは大丈夫だったし」

「ああ、まあな、仕上がりが早すぎたんじゃないか」

フレッドが憂鬱そうに言った。
3人は空中に戻った。
アンジェリーナの笛の合図で、ハリーはスニッチを放し、フレッドとジョージはブラッジャーを飛ばせた。
その瞬間から、ハリーは他のチームメートが何をしているのかほとんど気がつかなかった。
ハリーとサクヤの役目は、パタパタ飛ぶ小さな金のボールを捕まえることで、キャッチすればチーム得点が150点になるが、捕まえるには相当のスピードと技が必要なのだ。
ハリーはサクヤと抜きつ抜かれつスピードを競い合い、チェイサーの間を縫って、出たり入ったり、回転したり曲線を描いたりした。
暖かな秋の風が顔を打ち、遠くで騒いでいるスリザリン生の声は、まったく意味をなさない唸りにしか聞こえない。
しかし、たちまちホイッスルが鳴り、ハリーとサクヤはまた停止した。

「ストップ――ストップ――ストップ!」

アンジェリーナが叫んだ。

「ロン――真ん中のポストがガラ空きだ!」

2人はロンのほうを見た。
左側の輪の前に浮かんでいて、他の2本がノーガードだ。

「あ……ごめん……」

「チェイサーの動きを見ているとき、うろうろ動きすぎなんだ!」

アンジェリーナが言った。

「輪のどれかを守るのに移動しなければならなくなるまではセンターを守るか、さもなきゃ3つの輪の周囲を旋回すること。なんとなく左右に流れちゃだめだよ。
だから3つもゴールを奪われたんだ!」

「ごめん……」

ロンが繰り返した。
真っ赤な顔が、明るい青空に映える信号のように光っている。

「それに、ケイティ、その鼻血、なんとかならないの?」

「たんたんひとくなるのよ!」

ケイティが鼻血を袖で止めようとしながら、フガフガと言った。
サクヤはパッとフレッドを見た。
ハリーもちらりと目をやると、フレッドは心配そうにポケットに手を突っ込んでいる。
2人が見ていると、フレッドは何か紫色のものを引っ張り出し、ちょっとそれを調べると、しまった、という顔でケイティのほうを見た。



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