The ounder of rphan X 
 -総受男装ハーマイオニー百合夢-




校庭の向こうから終業ベルが遠く聞こえ、ハリーは血で汚れた羊皮紙を丸め、ハーマイオニーのハンカチで手を縛って、「薬草学」のクラスに向かった。
マルフォイの嘲り笑いが、まだ耳に残っていた。

「マルフォイのやつ、ハグリッドをもう1回ウスノロって呼んでみろ……」

ハリーが唸った。

「ハリー、マルフォイといざこざを起こしてはだめよ。
あいつがいまは監督生だってこと、忘れないで。
あなたをもっと苦しい目に遭わせることだってできるんだから……」

「へーえ、苦しい目に遭うって、いったいどんな感じなんだろうね?」

ハリーが皮肉たっぷりに言った。
ロンが笑ったが、ハーマイオニーは顔をしかめ、サクヤはため息をついた。
4人は重い足取りで野菜畑を横切った。
空は降ろうか照ろうか、まだ決めかねているようだった。

「僕、ハグリッドに早く帰ってきてほしい。それだけさ」

温室に着いたとき、ハリーが小さい声で言った。

「それから、グラブリー-プランクばあさんのほうがいい先生だなんて、言うな!

ハリーは脅すようにつけ加えた。

「そんなこと言うつもりなかったわ」

ハーマイオニーが静かに言った。

「あの先生は絶対に、ハグリッドには敵わないんだから」

きっぱりとそう言ったものの、ハリーはいましがた「魔法生物飼育学」の模範的な授業を受けたことが十分にわかっていたし、それが気になってしかたがなかった。
一番手前の温室の戸が開き、そこから4年生が溢れ出てきた。ジニーもいた。

「こんちわ」

すれ違いながら、ジニーが朗らかに挨拶した。
そのあと、ルーナ・ラブグッドが他の生徒の後ろからゆっくり現れた。髪を頭のてっぺんで団子に丸め、鼻先に泥をくっつけていた。
ハリーとサクヤを見つけると興奮して、飛び出た目がもっと飛び出したように見えた。
ルーナはまっすぐ2人のところに来た。
ハリーのクラスメートが、何だろうと大勢振り返った。
ルーナは大きく息を吸い込み、「こんにちは」の前置きもせずに話しかけた。

「あたしは、『名前を言ってはいけないあの人』が戻ってきたと信じてるよ。
それに、あんたたちが戦って、あの人から逃げたって、信じてる」

「え――そう」

ハリーはぎこちなく言った。

「ありがとう、ルーナ!」

サクヤの顔にいっぱいの笑顔が咲いた。
それから、サクヤは自分のローブの袖をひっぱり、鼻についた泥を拭ってやった。
ルーナはオレンジ色のラディッシュのようなものを耳につけていた。
どうやらパーバティとラベンダーがそれに気づいたらしく、2人ともルーナの耳たぶを指差してクスクス笑っていた。

「笑ってもいいよ」

ルーナの声が大きくなった。
どうやら、パーバティとラベンダーがイヤリングではなく、自分の言ったことを笑っていると思ったらしい。

「だけど、ブリバリング・ハムディンガーとか、しわしわ角スノーカックがいるなんて、昔は誰も信じていなかったんだから!」

「でも、いないでしょう?」

ハーマイオニーが我慢できないとばかりに口を出した。

「ブリバリング・ハムディンガーとか、しわしわ角スノーカックなんて、いなかったのよ」

ルーナはハーマイオニーを怯ませるような目つきをし、ラディッシュをブラブラ揺らしながら仰々しく立ち去った。
大笑いしたのは、今度はパーバティとラベンダーだけではなかった。

「僕たちを信じてるたった1人の人を怒らせないでくれる?」

授業に向かいながら、ハリーがハーマイオニーに申し入れた。

「何言ってるの、ハリー。
あの子よりましな人がいるでしょう?
ジニーがあの子のことをいろいろ教えてくれたけど、どうやら、全然証拠がないものしか信じないらしいわ。
まあ、もっとも、父親が『ザ・クィブラー』を出してるくらいだから、そんなところでしょうね」

「いたらおもしろそうなんだけどなぁ。しわしわの角……どんなんだろう……」

サクヤが空想するように上を見上げ、それからプッと噴き出していた。
ハリーは、ここに到着した夜に目にした、あの不吉な、翼の生えた馬のことを考え、ルーナも見えると言ったことを思い出した。ハリーはちょっと気落ちした。
結局、まだサクヤにあの馬が見えるかを聞けていない。機会がなかったわけじゃないが、城の外でのことを聞く気にはなれなかったのだ。
やっぱり、ルーナはでまかせを言っただけのだろうか?
ハリーがそんなことを考えていると、アーニー・マクミランが近づいてきた。

「言っておきたいんだけど」

よく通る大きな声で、アーニーが言った。

「君たちを支持しているのは変なのばかりじゃない。
僕も君たちを100%信じる。僕の家族はいつもダンブルドアを強く支持してきたし、僕もそうだ」

「え――ありがとう、アーニー」

ハリーは不意を衝かれたが、うれしかった。サクヤも目を丸くして、それでも先ほどと同じように満面の笑顔を見せた。
アーニーはこんな場面で大げさに気取ることがあるが、それでもハリーは、耳からラディッシュをぶら下げていない人の信任票には心から感謝した。
アーニーの言葉で、ラベンダー・ブラウンの顔から確実に笑いが消えたし、ハリーがサクヤやロン、ハーマイオニーに話しかけようとしたときに、ちらりと目に入ったシェーマスの表情は、混乱しているようにも、抵抗しているようにも見えた。

誰もが予想したとおり、スプラウト先生はOWLの大切さについての演説で授業を始めた。
どの先生もこぞって同じことをするのはいい加減やめてほしいと、ハリーは思った。
どんなに宿題が多いかを思い出すたび、ハリーは不安になり、胃袋が捩れるようになっていた。
スプラウト先生が、授業の終わりにまたレポートの宿題を出したとき、その気分が急激に悪化した。
ぐったり疲れ、スプラウト先生お気に入りの肥料、ドラゴンの糞の臭いをプンプンさせ、グリフィンドール生は、誰もが黙りこくって、ぞろぞろと城に戻っていった。
また長い1日だった。

腹ぺこだったし、17時からアンブリッジ先生の最初の罰則があるので、ハリーはカバンを置きにグリフィンドール塔に戻るのをやめ、サクヤと共にまっすぐ夕食に向かった。
アンブリッジが何を目論んでいるにせよ、それに向かう前に、急いで腹に何か詰め込もうと思ったのだ。
しかし、大広間の入口に辿り着くか着かないうちに、誰かが怒鳴った。

「おい、ポッター!フェリックス!」

「今度は何だよ?」

ハリーがうんざりして呟くと、振り向いていたサクヤに肘で小突かれた。
ハリーも振り返るとアンジェリーナ・ジョンソンが、ものすごい剣幕でやってくる。

今度は何だか、いま教えてあげるよ」

足音も高くやってきて、アンジェリーナはハリーとサクヤの胸をぐいっと両手それぞれの指で押した。

「揃いも揃って金曜日の17時に罰則を食らうなんて、どういうつもり?」

「え?」

「あっ……」

2人が声を漏らした。

「ああ、しまった――キーパーの選抜!」

やっと思い出したようね!」

アンジェリーナが唸り声をあげた。

チーム全員に来てほしい、チームにうまくはまる選手を選びたいって、そう言っただろう?
わざわざそのためにクィディッチ競技場を予約したって言っただろう?
それなのに、君たちシーカーは来ないと決めたわけだ!」

「僕が決めたんじゃない!」

理不尽な言い方が胸にちくりときた。

「アンブリッジのやつに罰則を食らったんだ。
『例のあの人』のことで本当のことを話したからっていう理由で」

「とにかく、まっすぐアンブリッジのところに行って、金曜日は自由にしてくれって頼むんだ」

アンジェリーナが情け容赦なく言った。

「どんなやり方でもかまわない。
『例のあの人』は自分の妄想でしたと言ったっていい。何がなんでも来るんだ!

アンジェリーナは嵐のように去った。

「あのさ」

大広間に入りながら、ハリーがサクヤ、ロン、ハーマイオニーに言った。

「パドルミア・ユナイテッドに連絡して、オリバー・ウッドが事故で死んでないかどうか調べたほうがいいな。
アンジェリーナに魂が乗り移ってるみたいだぜ」

「アンブリッジが金曜に君たちを自由にしてくれる確率はどうなんだい?」

グリフィンドールのテーブルに座りながら、ロンが期待していないかのように聞いた。

「0以下だろうな。
きっと喜んで阻止してくるだろうさ」

サクヤが絶望的に言った。
ハリーは子羊の骨つき肉を皿に取って、食べながら憂鬱そうにそれに続けた。

「でも、やってみたほうがいいだろうな。
2回多く罰則を受けるからとかなんとか言ってさ……」

ハリーは口いっぱいのポテトを飲み込んでしゃべり続けた。

「今晩あんまり遅くまで残らされないといいんだけど。
ほら、レポート3つと、マクゴナガルの『消失呪文』の練習と、フリットウィックの反対呪文の宿題をやって、ボウトラックルのスケッチを仕上げて、それからトレローニーのあのアホらしい夢日記に取りかかるだろ?」

ロンが呻いた。
そして、なぜか天井をちらりと見た。

その上、雨が降りそうだな」

「それが宿題と関係があるの?」

ハーマイオニーが眉を吊り上げた。

「ない」

ロンはすぐに答えたが、耳が赤くなった。




_

( 73/190 )
[prev] [next]
[back]
[しおりを挟む]



- ナノ -