The ounder of rphan X 
 -総受男装ハーマイオニー百合夢-




翌朝は、昨日と同じように朝からどんよりとして雨が降っていた。
朝食のとき、ハグリッドはやはり教職員テーブルにいなかった。

「だけど、いいこともある。今日はスネイプなしだ」

ロンが景気をつけるように言った。
ハーマイオニーは大きな欠伸をしてコーヒーを注いだ。
なんだかうれしそうなので、ロンがいったい何がそんなに幸せなのかと聞くと、ハーマイオニーは単純明快に答えた。

「帽子がなくなっているわ。
しもべ妖精はやっぱり自由がほしいのよ」

「僕はそう思わない」

ロンは皮肉っぽく言った。

「あれは服のうちには入らない。
僕にはとても帽子には見えなかった。むしろ毛糸の膀胱に近いな」

ハーマイオニーは午前中一度もロンと口をきかなかった。
2時限連続の「呪文学」の次は、2時限続きの「変身術」だ。
フリットウィック先生もマクゴナガル先生も授業の最初の15分は、OWLの重要性について演説した。

「みなさんが覚えておかなければならないのは」

チビのフリットウィック先生は、机越しに生徒を見るために、いつものように積み上げた本の上にちょこんと乗って、キーキー声で話した。

「この試験が、これから何年にもわたって、みなさんの将来に影響するということです。
まだみなさんが真剣に将来の仕事を考えたことがないなら、いまこそそのときです。
そして、それまでは、自分の力を十分に発揮できるように、大変ですがこれまで以上にしっかり勉強しましょう!」

それから1時間以上、「呼び寄せ呪文」の復習をした。
フリットウィック先生はこれが間違いなくOWLに出ると言い、授業の締め括りに、これまでにない大量の宿題を出した。
「変身術」も負けず劣らずひどかった。

「OWLに落ちたくなかったら」

マクゴナガル先生が厳めしく言った。

「刻苦勉励、学び、練習に励むことです。
きちんと勉強すれば、このクラス全員が『変身術』でOWL合格点を取れないわけはありません」

ネビルが悲しげに、ちょっと信じられないという声をあげた。

「ええ、あなたもです、ロングボトム」

マクゴナガル先生が言った。

「あなたの術に問題があるわけではありません。ただ自信がないだけです。
それでは……今日は『消失呪文』を始めます。
『出現呪文』よりは易しいですが、OWLでテストされるものの中では一番難しい魔法の1つです。
『出現呪文』は通常、NEWTレベルになるまではやりません」

先生の言うとおりだった。
ハリーは「消失呪文」が恐ろしく難しいと思った。
2時限授業の最後になっても、ハリーもロンも、練習台のカタツムリを消し去ることができなかったが、ロンは自分のカタツムリが少しぼやけて見えると楽観的な言い方をした。
一方ハーマイオニーは、三度目でカタツムリを消し、マクゴナガル先生からグリフィンドールに10点のボーナス点をもらった。
それから授業の終わりギリギリに、ハーマイオニーからアドバイスをもらったサクヤが滑り込みで合格をもらい、さらに5点の追加点をグリフィンドールに献上した。
ハーマイオニーとサクヤだけが宿題なしで、他の全員が、翌日の午後にもう一度カタツムリ消しに挑戦するため、夜のうちに練習するように言われた。

宿題の量にややパニックしながら、ハリーとロンは昼休みの1時間を図書館で過ごし、魔法薬に月長石をどう用いるかを調べた。
ロンが毛糸の帽子をけなしたのに腹を立て、ハーマイオニーは一緒に来なかったし、サクヤは昨晩のうちに終わらせたと2人を驚かせた。
図書館でロンは、「月長石のレポートを手伝ってもらえるなら、僕だってハーマイオニーに交際を申し込むよ」と皮肉ったが、ハリーはもしかしたらサクヤは自力でレポートを終わらせたのではないかと心の中で思った。
スネイプの授業中、ハーマイオニーに劣らない集中力でノートをとっていたサクヤの姿を思い出したのだ。
午後の「魔法生物飼育学」の時間のころ、ハリーはまた頭痛がしてきた。

その日は冷たく風も出てきていた。
禁じられた森の端にあるハグリッドの小屋まで、下り坂の芝生を歩いていると、時々雨がパラパラと顔に当たった。
グラブリー-プランク先生はハグリッドの小屋の戸口から10m足らずのところで生徒を待っていた。
先生の前には小枝がたくさん載った長い架台が置かれている。
ハリーとロンが先生のそばに行くと、後ろから大笑いする声が聞こえた。
振り向くと、ドラコ・マルフォイが、いつものスリザリンの腰巾着に囲まれて、大股で近づいてくるのが見えた。
たったいまマルフォイが何かおもしろおかしいことを言ったのは明らかだ。
クラッブ、ゴイル、パンジー・パーキンソン、その他の取り巻き連中は、架台の周りに集まったときもまだ思いっきりニヤニヤ笑いを続けていた。
みんながハリーのほうを見てばかりいるので、冗談の内容が何だったのか、苦もなく推測できる。

「みんな集まったかね?」

スリザリンとグリフィンドールの全員が揃うと、グラブリー-プランク先生が大声で言った。

「早速始めようかね。
ここにあるのが何だか、名前がわかる者はいるかい?」

先生は目の前に積み上げた小枝を指した。
ハーマイオニーの手がパッと挙がった。
その背後でマルフォイがハーマイオニーのまねをして、歯を出っ歯にし、答えたくてしかたがないようにピョンピョン飛び上がっている。
パンジー・パーキンソンがキャーキャー笑ったが、それがほとんどすぐに悲鳴に変わった。
架台の小枝が宙に跳ねて、ちょうど木でできた小さなピクシー妖精のような正体を現したからだ。
節の目立つ茶色の腕や脚、両手の先に2本の小枝のような指、樹皮のようなのっぺりした奇妙な顔にはコガネムシのようなこげ茶色の目が2つ光っている。

「おぉ〜〜!」

パーバティとラベンダーの声が、ハリーを完全にイライラさせた。
まるでハグリッドが、生徒の感心する生物を見せた例がないとでも言うような反応だ。
たしかに、「レタス食い虫」はちょっとつまらなかったが、「火とかげ」や「ヒッポグリフ」は十分おもしろかったし、「尻尾爆発スクリュート」は、もしかしたらおもしろすぎた。

「女生徒たち、声を低くしとくれ!」

グラブリー-プランク先生が厳しく注意し、小枝のような生き物に、玄米のようなものをひと握り振りかけた。
生き物がたちまち餌に食いついた。

「さてと――誰かこの生き物の名前を知ってるかい?ミス・グレンジャー?」

「ボウトラックルです」

ハーマイオニーが答えた。

「木の守番で、普通は杖に使う木に棲んでいます」

「グリフィンドールに5点」

グラブリー-プランク先生が言った。

「そうだよ。ボウトラックルだ。
ミス・グレンジャーが答えたように、だいたいは杖品質の木に棲んでる。
何を食べるか知ってる者は?ミス・フェリックス?」

「ワラジムシですか?」

2番目に手を挙げていたサクヤが、架台のほうを見て思い出しながら答えた。
ハリーは玄米がモゾモゾ動くのが気になっていたが、これでわかった。

「でも、手に入るなら妖精の卵です」

ハーマイオニーが続けて模範解答した。
サクヤは「ああ、そうか」という顔をした。

「よくできた。もう5点。
じゃから、ボウトラックルが棲む木の葉や木材が必要なときは、気を逸らしたり喜ばせたりするために、ワラジムシを用意するほうがよい。
見た目は危険じゃないが、怒ると指で人の目をくり貫く。
見てわかるように非常に鋭い指だから、目玉を近づけるのは感心しないね。
さあ、こっちに集まって、ワラジムシを少しとボウトラックルを1匹ずつ取るんだ――4人に1匹はある――もっとよく観察できるだろう。
授業が終るまでに1人1枚スケッチすること。身体の部分に全部名称を書き入れること」

クラス全員が一斉に架台に近寄った。
ハリーはわざとみんなの後ろに回り、グラブリー-プランク先生のすぐそばに近寄った。

「ハグリッドはどこですか?」

みんながボウトラックルを選んでいるうちに、ハリーが聞いた。

「気にするでない」

グラブリー-プランク先生は押さえつけるような言い方をした。
以前にハグリッドが授業に出てこなかったときも先生は同じ態度だった。
顎の尖った顔いっぱいに薄ら笑いを浮かべながら、ドラコ・マルフォイがハリーの前を遮るように屈んで、一番大きなボウトラックルをつかんだ。

「たぶん」

マルフォイが、ハリーだけに聞こえるような低い声で言った。

「あのウスノロのウドの大木は大怪我をしたんだ」

「黙らないと、おまえもそうなるぞ」

ハリーも唇を動かさずに言った。

「たぶん、あいつにとって巨大すぎるものにちょっかいを出してるんだろ。言ってる意味がわかるかな」

マルフォイがその場を離れながら、振り返りざまにハリーを見てニヤリとした。
ハリーは急に気分が悪くなった。
マルフォイは何か知っているのか?なにしろ父親が「死喰い人」だ。
まだ騎士団の耳に届いていないハグリッドの情報を知っていたとしたら?
ハリーは急いで架台のそばに戻り、ロンとサクヤ、ハーマイオニーのところに行った。
3人は少し離れた芝生に座り込み、ボウトラックルをスケッチの間だけでも動かないようにしようと、なだめすかしていた。
ハリーも羊皮紙と羽根ペンを取り出し、3人のそばに屈み込み、小声でマルフォイがいま言ったことを話した。

「ハグリッドに何かあったら、ダンブルドアがわかるはずよ」

ハーマイオニーが即座に言った。

「心配そうな顔をしたら、マルフォイの思うつぼよ。
何が起こっているか私たちがはっきり知らないってあいつに知らせるようなものだわ。ハリー、無視しなきゃ。
ほら、ボウトラックルをちょっと押さえてて。私が顔を描く間……」

「そうなんだよ」

マルフォイの気取った声が、一番近くのグループからはっきり聞こえてきた。

「数日前に父上が大臣と話をしてねえ。
どうやら魔法省は、この学校の水準以下の教え方を打破する決意を固めているようなんだ。
だから育ちすぎのウスノロが帰ってきても、またすぐ荷物をまとめることになるだろうな」

アイタッ!

ハリーが強く握りすぎて、ボウトラックルをほとんど折ってしまいそうになり、反撃に出たボウトラックルが鋭い指でハリーの手を襲い、手に長い深い切り傷を2本残した。
ハリーはボウトラックルを取り落とした。
クラッブとゴイル、そしてパンジーは、ハグリッドがクビになるという話にバカ笑いしていたが、ボウトラックルが逃げ出したのを見て、ますますバカ笑いした。
動く棒切れのようなボウトラックルは、森に向かって全速力で走り、まもなく木の根の間に飲まれるように見えなくなった。




_

( 72/190 )
[prev] [next]
[back]
[しおりを挟む]



- ナノ -