The founder of orphan X
-総受男装ハーマイオニー百合夢-
「とにかくだ、この1年は悪夢だぞ。5年生は」
ジョージが言った。
「テストの結果を気にするならばだがね。
フレッドも俺もなぜかずっと元気だったけどな」
「ああ……2人の点数は、たしか、3科目合格で2人とも3OWLだっけ?」
ロンが言った。
「当たり」
フレッドはどうでもいいという言い方だった。
「しかし、俺たちの将来は、学業成績とは違う世界にあるのだ」
「7年目に学校に戻るべきかどうか、2人で真剣に討議したよ」
ジョージが朗らかに言った。
「なにしろすでに――」
サクヤが目配せしたのでジョージが口をつぐんだ。
ハリーも、サクヤと相談して2人に譲った三校対抗試合の賞金のことを言うだろうと分かった。
「なにしろすでにOWLも終わっちまったしな」
ジョージが急いで言い換えた。
「つまり、『めちゃめちゃ疲れる魔法テスト』の『N・E・W・T』なんかほんとに必要か?
しかし、俺たちが中途退学したら、お袋がきっと耐えられないだろうと思ってさ。
パーシーのやつが世界一のバカをやったあとだしな」
「しかし、最後の年を、俺たちはむだにするつもりはない」
大広間を愛しげに見回しながら、フレッドが言った。
「少し市場調査をするのに使う。
平均的ホグワーツ生は、悪戯専門店に何を求めるかを調査し、慎重に結果を分析し、需要に合った製品を作る」
「だけど、悪戯専門店を始める資金はどこで手に入れるつもり?」
ハーマイオニーが疑わしげに聞いた。
「材料がいろいろ必要になるでしょうし――それに店舗だって必要だと思うけど……」
サクヤは何気なく、また新聞に目を落とした。
ハリーも双子の顔を見なかった。顔が熱くなって、わざとフォークを落とし、拾うのに下に潜った。
フレッドの声が聞こえてきた。
「ハーマイオニー、質問するなかれ、さすれば我々は嘘をつかぬであろう。
来いよ、ジョージ。早く行けば、『薬草学』の前に『伸び耳』の2,3個も売れるかもしれないぜ」
ハリーがテーブル下から現れると、フレッドとジョージがそれぞれトーストの山を抱えて歩き去るのが見えた。
「何のことかしら?」
ハーマイオニーがサクヤとハリーとロンの顔を見た。
「『質問するなかれ』って……悪戯専門店を開く資金を、もう手に入れたってこと?」
「あのさ、僕もそのこと考えてたんだ」
ロンが額に皺を寄せた。
「夏休みに僕に新しいドレス・ローブを買ってくれたんだけど、いったいどこでガリオンを手に入れたかわかんなかった……」
サクヤが何かを言う前に、ハリーは話題を危険水域から逸らせるときが来たと思った。
「今年はとってもきついっていうのはほんとかな?試験のせいで?」
「ああ、そうだな」
ロンが言った。
「そのはずだろ?
OWLって、どんな仕事に応募するかとかいろいろ影響するから、とっても大事さ。
今学年の後半には進路指導もあるって、ビルが言ってた。
相談して、来年どういう種類のNEWTを受けるかを選ぶんだ」
「ホグワーツを出たら何をしたいか、決めてる?」
それからしばらくして「魔法史」の授業に向かうのに大広間を出て、ハリーが3人に聞いた。
「いやあ、まだ」
ロンが考えながら言った。
「ただ……うーん……」
ロンは少し弱気になった。
「なんだい?」
ハリーが促した。
「うーん、闇祓いなんか、かっこいい」
ロンはほんの思いつきだという言い方をした。
「うん、そうだよな」
ハリーが熱を込めて言った。
「だけど、あの人たちって、ほら、エリートじゃないか」
ロンが言った。
「うんと優秀じゃなきゃ。ハーマイオニー、君は?」
「わからない」
ハーマイオニーが答えた。
「何か本当に価値のあることがしたいと思うの」
「闇祓いは価値があるよ!」
ハリーが言った。
「ええ、そうね。でもそれだけが価値のあるものじゃない」
ハーマイオニーが思慮深く言った。
「つまり、SPEWをもっと推進できたら……」
ハリーとロンは慎重に、互いに顔を見ないようにした。
「はい、はい。
サクヤは?ハーマイオニーの手伝いでもするかい?」
ロンが噴き出さないように注意しながらサクヤに訊ねた。
サクヤは明後日の方向を見ながら曖昧な声を出した。
「うーん……オレもわかんないな……。
家の復興をしたいって漠然とした気持ちはあるけど、具体的に何をすればいいのか、何をしたいのかまではまだわかんないし。
でも、闇祓いか……闇祓いなら、やりやすいかも……」
「やるって、何を?」
ロンが聞き返した。
サクヤはロンを見て、それからハリー、ハーマイオニーに目を移した。
周りの誰にも聞かれないように声を落として慎重に言った。
「昨日、ハリーから教えてもらったんだ――じいちゃんとばあちゃんの事件の捜査が、凍結状態になってるって」
「まさか、自分で捜査しようってこと?」
ハーマイオニーが静かに、しかし強い口調で言った。
サクヤは肩をすくめ、首を振った。
「事件から2年経ってこの状況だ。
もう2,3年経つあいだに何かが変われば、必ずしもそうしてやろうとは思わないかもしれない。
けど、もしずっとこのままなら――このままにはしておけない、って、それだけだよ。候補のひとつ。それだけ」
サクヤが努めて明るく言った。
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