The founder of orphan X
-総受男装ハーマイオニー百合夢-
「やあ、アンジェリーナ」
「やぁ、休みはどうだった?」
アンジェリーナがきびきびと挨拶し、答えも待たずに言葉を続けた。
「あのさ、私、グリフィンドール・クィディッチ・チームのキャプテンになったんだ」
「そりゃいいや」
「おめでとう!」
ハリーとサクヤがにっこりした。
アンジェリーナの試合前演説は、オリバー・ウッドほど長ったらしくないだろうと思った。
それは、1つの改善点と言える。
「うん。
それで、オリバーがもういないから、新しいキーパーが要るんだ。
ハリーかサクヤのどちらかをキーパーに回そうかとも考えたんだけど、試合を左右する重要なシーカーは、控えも持っておきたい。
だから、金曜の17時に新しく選抜して決めることにしたから、チーム全員に来てほしい。いい?
そうすれば、新人がチームにうまくはまるかどうかがわかる」
「オッケー」
ハリーとサクヤが答えた。
アンジェリーナはにっこりして歩き去った。
「ウッドがいなくなったこと、忘れてたわ」
ロンの脇に腰掛け、トーストの皿を引き寄せながら、ハーマイオニーがなんとなく言った。
「チームにとってはずいぶん大きな違いよね」
「たぶんね」
ハリーは反対側に座りながら言った。
「いいキーパーだったから……」
「だけど、新しい血を入れるのも悪くないじゃん?」
ロンが言った。
シューッ、カタカタという音とともに、何百というふくろうが上の窓から舞い込んできた。
ふくろうは大広間の至る所に降り、手紙や小包みを宛先人に届け、朝食をとっている生徒たちにたっぷり水滴を浴びせた。外は間違いなく大雨だ。
ヘドウィグは見当たらなかったが、ハリーは驚きもしなかった。
連絡してくるのはシリウスだけだし、まだ24時間しか経っていないのに、シリウスから新しい知らせがあるとは思えない。
ところがハーマイオニーは、急いでオレンジジュースを脇に置き、湿った大きなメンフクロウに道を空けた。
嘴にグショッとした「日刊予言者新聞」をくわえている。
「何のためにまだ読んでるの?」
シェーマスのことを思い出し、ハリーがイライラと聞いた。
ハーマイオニーがふくろうの脚についた革袋に1クヌートを入れると、ふくろうは再び飛び去った。
「僕はもう読まない……クズばっかりだ」
「敵が何を言ってるのか知っておいたほうがいいわ」
ハーマイオニーは暗い声でそう言うと、新聞を広げて顔を隠し、ハリーとロンが食べ終わるまで顔を現さなかった。
「何もないな」
顔を埋めるハーマイオニーのわきから、横目で新聞を読んでいたサクヤが、デザートの糖蜜タルトをごくんと飲み込んだあと言った。
新聞を丸めて自分の皿の脇に置きながら、ハーマイオニーも短く言った。
「あなたたちのこともダンブルドアのことも、ゼロ」
今度はマクゴナガル先生がテーブルを回り、時間割を渡していた。
「見ろよ、今日のを!」
ロンが呻いた。
「『魔法史』、『魔法薬学』が2時限続き、『占い学』、2時限続きの『闇の魔術防衛』……ビンズ、スネイプ、トレローニー、それにあのアンブリッジばばぁ。
これ全部、1日でだぜ!
フレッドとジョージが急いで『ずる休みスナックボックス』を完成してくれりゃなあ……」
「我が耳は聞き違いしや?」
フレッドが現れて、ジョージと一緒にハリーの横に無理やり割り込んだ。
「ホグワーツの監督生が、よもやずる休みしたいなど思わないだろうな?」
「今日の予定を見ろよ」
ロンがフレッドの鼻先に時間割を突きつけて、不平たらたら言った。
「こんな最悪の月曜日は初めてだ」
「もっともだ、弟よ」
月曜の欄を見て、フレッドが言った。
「よかったら『鼻血ヌルヌル・ヌガー』を安くしとくぜ」
「どうして安いんだ?」
ロンが疑わしげに聞いた。
「なぜならば、身体が萎びるまで鼻血が止まらない。まだ解毒剤がない」
ジョージがニシンの燻製を取りながら言った。
「そりゃ傑作だ」
サクヤが笑った。
「ありがとよ」
ロンが時間割をポケットに入れながら憂鬱そうに言った。
「だけど、やっぱり授業に出ることにするよ」
「ところで『ずる休みスナックボックス』のことだけど」
ハーマイオニーがフレッドとジョージを見抜くような目つきで見た。
「実験台求むの広告をグリフィンドールの掲示板に出すことはできないわよ」
「誰が言った?」
ジョージが唖然として聞いた。
「私が言いました」
ハーマイオニーが答えた。
「それに、ロンが」
「僕は抜かして」
ロンが慌てて言った。ハーマイオニーがロンを睨みつけた。
フレッドとジョージがニヤニヤ笑った。
「君もそのうち調子が変わってくるぜ、ハーマイオニー」
クランペットにたっぷりバターを塗りながら、フレッドが言った。
「5年目が始まる。
まもなく君は、スナックボックスをくれと、俺たちに泣きつくであろう」
「お伺いしますが、なぜ5年目が『ずる休みスナックボックス』なんでしょう?」
「5年目は『O・W・L』、つまり 『普通魔法使いレベル試験』の年である」
「それで?」
「だから、テストが待ちかまえているじゃないか。
5年生は徹底的に勉強に集中させられる。神経がやられっちまうぜ」
フレッドが満足そうに言った。
「俺たちの学年じゃ、OWLが近づくと、半数が軽い神経衰弱を起こしたぜ」
ジョージがうれしそうに言った。
「泣いたり癇癪を起こしたり……パトリシア・スティンプソンなんか、しょっちゅう気絶しかかったな……」
「ケネス・タウラーは吹き出物だらけでさ。憶えてるか?」
フレッドは思い出を楽しむように言った。
「あれは、おまえがやつのパジャマに球痘粉を仕掛けたからだぞ」
ジョージが言った。
「ああ、そうだ」
フレッドがニヤリとした。
「忘れてた……なかなか全部は憶えてられないもんだ」
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