The ounder of rphan X 
 -総受男装ハーマイオニー百合夢-




帽子は再び動かなくなった。
拍手が湧き起こったが、呟きと囁きで萎みがちだった。
こんなことはハリーの憶えているかぎり初めてだ。
大広間の生徒はみんな、隣同士で意見を交換している。
ハリーもみんなと一緒に拍手しながら、みんなが何を話しているのかわかっていた。

「今年はちょっと守備範囲が広がったと思わないか?」

ロンが眉を吊り上げて言った。

「まったくだ」

ハリーが言った。
組分け帽子は通常、ホグワーツの4つの寮の持つそれぞれの特性を述べ、帽子自身の役割を語るに留まっていた。
学校に対して警告を発するなど、ハリーの記憶ではこれまでなかったことだ。

「これまでに警告を発したことなんて、あった?」

ハーマイオニーが少し不安そうに聞いた。サクヤは首をひねった。

「左様。あります」

「ほとんど首無しニック」がラベンダーの向こうから身を乗り出すようにして、わけ知り顔で言った(ラベンダーはぎくりと身を引いた。ゴーストが自分の身体を通って身を乗り出すのは、気持ちのいいものではない)。

「あの帽子は、必要とあらば、自分の名誉にかけて、学校に警告を発する責任があると考えているのです――」

しかし、そのときマクゴナガル先生が、1年生の名簿を読み上げようとしていて、ひそひそ話をしている生徒を火のような目で睨みつけた。
「ほとんど首無しニック」は透明な指を唇に当て、再び優雅に背筋を伸ばした。
ガヤガヤが突然消えた。
4つのテーブルにくまなく視線を走らせ、最後の睨みを利かせてから、マクゴナガル先生は長い羊皮紙に目を落とし、最初の名前を読み上げた。

「アバクロンビー、ユーアン」

さっきハリーの目に止まった、怯えた顔の男の子が、つんのめるように前へ出て帽子を被った。
帽子は肩までズボッと入りそうだったが、耳がことさらに大きいのでそこで止まった。
帽子は一瞬考えた後、つば近くの裂け目が再び開いて叫んだ。

グリフィンドール!

ハリーもグリフィンドール生と一緒に拍手し、ユーアン・アバクロンビーはよろめくようにグリフィンドールのテーブルについた。
穴があったら入りたい、二度とみんなの前に出たくないという顔だ。

ゆっくりと、1年生の列が短くなった。
名前の読み上げと組分け帽子の決定の間の空白時間に、ロンの胃袋が大きくグルグル鳴るのが聞こえた。
やっと「ゼラー、ローズ」がハッフルパフに入れられた。
マクゴナガル先生が帽子と丸椅子を取り上げてきびきびと歩き去ると、ダンブルドア校長が立ち上がった。

最近ハリーは、校長に苦い感情を持っていたが、それでもダンブルドアが全生徒の前に立った姿は、なぜか心を安らかにしてくれた。
この気持ちは、サクヤに覚えた安心感に近いのか近くないのかはよく分からなかった。
ハグリッドはいないし、ドラゴンまがいの馬はいるしで、あんなに楽しみにホグワーツに帰ってきたのに、ここは思いがけない驚きの連続だった。
聞き慣れた歌にぎくりとするような調子外れが入っていたのと同じだ。
しかし、これでやっと、期待どおりだ――校長が立ち上がり、新学期の宴の前に挨拶する。

「新入生よ」

ダンブルドアは唇に微笑を湛え、両腕を大きく広げて朗々と言った。

「おめでとう!古顔の諸君よ――お帰り!
挨拶するには時がある。いまはその時にあらずじゃ。掻っ込め!」

嬉しそうな笑い声があがり、拍手が湧いた。
ダンブルドアはスマートに座り、長い鬚を肩から後ろに流して、皿の邪魔にならないようにした――どこからともなく食べ物が現れていた。
大きな肉料理、パイ、野菜料理、パン、ソース、かぼちゃジュースの大瓶。
5卓のテーブルが重さに唸っていた。

「いいぞ」

ロンは待ちきれないように呻き、一番近くにあった骨つき肉の皿を引き寄せ、自分の皿を山盛りにしはじめた。
「ほとんど首無しニック」がうらやましそうに見ていた。

「組分けの前に何か言いかけてたわね?」

ハーマイオニーがゴーストに聞いた。

「帽子が警告を発することで?」

「おお、そうでした」

ニックはロンから目を逸らす理由ができて嬉しそうだった。
ロンは恥も外聞もないという情熱で、今度はローストポテトにかぶりついていた。

「左様、これまでに数回、あの帽子が警告を発するのを聞いております。
いつも、学校が大きな危機に直面していることを察知したときでした。
そして、もちろんのこと、いつも同じ忠告をします。団結せよ、内側を強くせよと」

「ぼしなン がこきけん とってわかン?」

ロンが聞いた。
こんなに口いっぱいなのに、ロンはよくこれだけの音を出せたと、ハリーは感心した。
サクヤがかぼちゃジュースを吹き出し咽せていた。

「何と言われましたかな?」

「ほとんど首無しニック」は礼儀正しく聞き返し、ハーマイオニーはむかっとした顔をした。
ロンはゴックンと大きく飲み込んで言い直した。

「帽子なのに、学校が危険だとどうしてわかるの?」

「私には分かりませんな」

「ほとんど首無しニック」が言った。

「もちろん、帽子はダンブルドアの校長室に住んでいますから、敢えて申し上げれば、そこで感触を得るのでしょうな」

「それで、帽子は、全寮に仲良くなれって?」

ハリーはスリザリンのテーブルのほうを見ながら言った。
ドラコ・マルフォイが王様然と振舞っていた。

「とても無理だね」

「さあ、さあ、そんな態度はいけませんね」

ニックが咎めるように言った。

「平和な協力、これこそ鍵です。
我らゴーストは、各寮に分かれておりましても、友情の絆は保っております。
グリフィンドールとスリザリンの競争はあっても、私は『血みどろ男爵』と事を構えようとは夢にも思いませんぞ」

「単に恐いからだろ」

ロンが言った。
「ほとんど首無しニック」は大いに気を悪くしたようだった。

「恐い?
痩せても枯れてもニコラス・ド・ミムジー・ポーピントン卿。命在りしときも絶命後も、臆病の汚名を着たことはありません。この身体に流れる気高き血は――」

「どの血?」

ロンが言った。

「まさか、まだ血があるの――?」

「言葉の綾だろ」

サクヤが咎めるように言った。

「そうですとも」

「ほとんど首無しニック」は憤慨のあまり、ほとんど切り離されている首がわなわなと危なっかしげに震えていた。

「私が言の葉をどのように使おうと、その楽しみは、まだ許されていると愚考する次第です。たとえ飲食の楽しみこそ奪われようと。
しかし、私の死を愚弄する生徒がいることには、このやつがれ、慣れております!」

「ニック、ロンはあなたのことを笑い物にしたんじゃないわ!」

ハーマイオニーがロンに恐ろしい一瞥を投げた。
不幸にも、ロンの口はまたしても爆発寸前まで詰め込まれていたので、やっと言葉になったのは「ちがン ぼっきみンきぶン ごいすンつもるらい」だった。
ニックはこれでは十分な謝罪にはならないと思ったらしい。
羽飾りつきの帽子を直し、空中に浮き上がり、ニックはそこを離れてテーブルの端に行き、コリン、デニスのクリービー兄弟の間に座った。

「お見事ね、ロン」

ハーマイオニーが食ってかかった。

「なんが?」

やっと食べ物を飲み込み、ロンが怒ったように言った。

「簡単な質問をしちゃいけないのか?」

「ロン、配慮って言葉知ってるか?」

「サクヤ、いいわよ。ほっときましょう」

ハーマイオニーがイライラと言った。

「その言葉くらい、知ってるよ!」

とロンが躍起になったが、ハーマイオニーは無視してサクヤの目の前の石窯パンとバターを取ってくれないかとサクヤに言った。
それからは、食事の間中、ロンとハーマイオニーはぷりぷりして互いに口をきかなかった。
ハリーもサクヤも2人のいがみ合いには慣れっこになって、仲直りさせようとも思わなかった。
ステーキ・キドニーパイをせっせと食べるほうが時間の有効利用だと思った。
そのあとは、好物の糖蜜タルトを皿いっぱいに盛って食べた。



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