The ounder of rphan X 
 -総受男装ハーマイオニー百合夢-




「ハグリッドはあそこにはいない」

ロンとサクヤ、ハーマイオニーも教職員テーブルを隅から隅まで眺めた。
もっとも、そんな必要はなかった。
ハグリッドの大きさでは、どんな列の中でもすぐに見つかる。

「辞めたはずはないし」

ロンは少し心配そうだった。

「そんなこと、絶対ない」

ハリーがきっぱり言った。

「もしかして……怪我しているとか、そう思う?」

ハーマイオニーが不安そうに言った。

「違う」

ハリーが即座に答えた。
一瞬間を置いて、ハリーが、パーバティやラベンダーに聞こえないように、ごく小さな声で言った。

「サクヤは夏休みのあいだ、ハグリッドに会ったりした?」

「それが、一度も見かけなかったんだ」

サクヤは首を振った。

「だって、それじゃ、どこにいるの」

ハーマイオニーだ。

「まだ戻ってきてないのかも。
ほら――任務から――ダンブルドアのために、この夏にやっていたことから」

「そうか……うん、きっとそうだ」

ロンが納得したように言った。
しかし、ハーマイオニーは唇を噛んで、教職員テーブルを端から端まで眺め、ハグリッドの不在の理由をもっと決定的に説明するものを探しているかのようだった。

あの人、誰?」

ハーマイオニーが教職員テーブルの真ん中を指差して鋭く言った。
ハリーはハーマイオニーの視線を追った。
最初はダンブルドア校長が目に入った。教職員用の長テーブルの中心に、銀の星を散らした濃い紫のローブにお揃いの帽子を被って、背もたれの高い金色の椅子に座っている。
ダンブルドアは隣の魔女のほうに首を傾げ、魔女がその耳元で何か話していた。
ハリーの印象では、その魔女は、そこいらにいるおばさんという感じで、ずんぐりした身体に、くりくりした薄茶色の短い髪をしている。
そこにけばけばしいピンクのヘアバンドを着け、それに合うふんわりしたピンクのカーディガンをローブの上から羽織っていた。
それから魔女は少し顔を正面に向け、ゴブレットからひと口飲んだ。
ハリーはその顔を見て愕然とした。この顔は知っている。
蒼白いガマガエルのような顔、弛んだ瞼と飛び出した両目……。

「アンブリッジってひとだ」

ハリーが気づいたとき、サクヤが苦々し気に答えた。

「誰?」

ハーマイオニーが聞いた。

「もしかして、サクヤの尋問にもいたの?
僕のにもいた――ファッジの下で働いてるんだ!」

「カーディガンがいいねぇ」

サクヤがハリーに頷いたとき、ロンがニヤリとした。

「ファッジの下で働いてるですって?」

ハーマイオニーが顔をしかめて繰り返した。

「なら、いったいどうしてここにいるの?」

「さあ……」

ハーマイオニーは、目を凝らして教職員テーブルを眺め回した。

「まさか」

ハーマイオニーが呟いた。

「違うわ、まさか……」

ハリーはハーマイオニーが何を言っているのかわからなかったが、敢えて聞かなかった。
むしろ教職員テーブルの後ろにいま現れた、グラブリー-プランク先生のほうに気を取られていた。
テーブルの端まで行き、ハグリッドが座るはずの席に着いたのだ。
つまり、1年生が湖を渡って城に到着したということになる。
思ったとおり、そのすぐあと、玄関ホールに続く扉が開いた。
怯えた顔の1年生が、マクゴナガル先生を先頭に、長い列になって入ってきた。
先生は丸椅子を抱え、その上には古ぼけた魔法使いの三角帽子が載っている。
継ぎはぎだらけで、擦り切れたつばのきわが大きく裂けている。

大広間のガヤガヤが静まってきた。
1年生は教職員テーブルの前に、生徒たちのほうを向いて勢揃いした。
マクゴナガル先生が、その列の前に大事そうに丸椅子を置き、後ろに退いた。

1年生の青い顔が蝋燭の明かりで光っている。
列の真ん中の小さな男の子は、震えているようだ。
あそこに立たされて、どの寮に属するのかを決める未知のテストを待っていたとき、どんなに怖かったか、ハリーは一瞬思い出した。

学校中が、息を殺して待った。
すると、帽子のつばのきわの裂け目が、口のようにパックリ開き、組分け帽子が突然歌いだした。


昔々のその昔、私がまだまだ新しく
ホグワーツ校も新しく
気高い学び舎の創始者は
別れることなど思わずに
師のもと同じ絆で結ばれた

同じ望みは類なき
魔法の学び舎興すこと
師の知識を残すこと
「ともに興さん、教えん!」と
4人の友は意を決し
4人が別れる日が来ると
夢にも思わず過ごしたり

これほどの友あり得るや?
スリザリンとグリフィンドール
匹敵するはあと2人?
ハッフルパフとレイブンクロー

なれば何故間違うた?
何故崩れる友情や?
なんとその場に居合わせた
私が悲劇を語ろうぞ

スリザリンの言い分は、
「学ぶものをば選ぼうぞ。祖先が純血ならばよし」
レイブンクローの言い分は、
「学ぶものをば選ぼうぞ。知性に勝るものはなし」
グリフィンドールの言い分は、
「学ぶものをば選ぼうぞ。勇気によって名を残す」
ハッフルパフの言い分は、
「学ぶものをば選ぶまい。すべてのものを隔てなく」

こうした違いは格別に
亀裂の種になりもせず
4人がそれぞれ寮を持ち
創始者好みの生徒をば
この学び舎に入れしかば

スリザリンの好みしは
純血のみの生徒にて
己に似たる狡猾さ
もっとも鋭き頭脳をば
レイブンクローは教えたり
勇気溢るる若者は
グリフィンドールで学びたり
ハッフルパフは善良で
すべてのものをば教えたり

かくして寮と創始者の
絆は固く真実で
ホグワーツ校は和やかに
数年間を過ごしたり

それから徐々に忍び寄る
恐れ疑惑の不和のとき
4本柱の各寮が
それまで支えし学び舎を
互いに反目さし上
分断支配を試みた

もはやこれにて学び舎も
終わりと思いし日々なりき
決闘に次ぐ決闘と
友と友との衝突が
ある朝ついに決着し
学び舎を去るスリザリン

争い事こそ無くなれど
後に残り虚脱感
4人がいまや3人で
その3人になりしより
創始者4人が目指したる
寮の結束成らざりき

組分け帽子の出番なり
諸君も先刻ご存知の
諸君を寮に振り分ける
それが私の役目なり

しかし今年はそれ以上
私の歌を聴くがよい
私の役目は分けること
されど憂えるその結果

私が役目を果たすため
毎年行う四分割
されど憂うはその後に
恐れし結果が来はせぬか

ああ、願わくば聞きたまえ
歴史の示す警告を
ホグワーツ校は危機なるぞ
外なる敵は恐ろしや
我らが内にて固めねば
崩れ落ちなん、内部より
すでに告げたり警告を
私は告げたり警告を……

いざいざ始めん、組分けを



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