The ounder of rphan X 
 -総受男装ハーマイオニー百合夢-




ほとんど食欲がなかったが、ハリーはマンダンガスのあとからテーブルに戻った。
パーティーが楽しいと思ったのも突然湧いた感情だったが、同じぐらい突然に喜びが消えてしまった。
上に戻ってベッドに潜りたいと、ハリーは思った。

マッド-アイ・ムーディが、わずかに残った鼻で、チキンの骨つき腿肉をクンクン嗅いでいた。
どうやら、毒はまったく検出されなかったらしく、次の瞬間、歯でバリッと食いちぎった。

「……柄はスペイン樫で、呪い避けワックスが塗ってある。
それに振動コントロール内蔵だ――」

ロンがトンクスに説明している。

「――いいえ、魔法ではなく、自分の手でやりたいんです……」

ハーマイオニーが何やらウィーズリーおばさんに相談事をしていた。

「それなら、あとで道具を部屋に持っていきましょう。
でも気を付けるのよ――マグル式は、指に刺さると痛いわよ――」

ウィーズリーおばさんが大欠伸をした。

「さて、寝る前にまね妖怪を処理しておかなくちゃ……アーサー、みんなをあんまり夜更かしさせないでね。いいこと?おやすみ、ハリー」

おばさんは厨房を出ていった。
皿を下に置き、自分もみんなが気づかないうちに、おばさんに従いていけないかなと思った。

「元気か、ポッター?」

ムーディが低い声で聞いた。

「うん、元気」

ハリーは嘘をついた。
ムーディは鮮やかなブルーの目でハリーを横睨みしながら、腰の携帯瓶からぐいっと呑んだ。

「こっちへ来い。
おまえが興味を持ちそうなものがある」

ムーディが言った。
ローブの内ポケットから、ムーディは古いボロボロの写真を1枚引っ張り出した。

「不死鳥の騎士団創立メンバーだ」

ムーディが唸るように言った。

「昨夜、『透明マント』の予備を探しているとき見つけた。ポドモアが、礼儀知らずにも、わしの一張羅マントを返してよこさん……。
みんなが見たがるだろうと思ってな」

ハリーは写真を手に取った。
小さな集団がハリーを見つめ返していた。
何人かがハリーに手を振り、何人かは乾杯した。

「わしだ」

ムーディが自分を指した。
そんな必要はなかった。写真のムーディは見間違えようがない。
ただし、いまほど白髪ではなく、鼻はちゃんとついている。

「ほれ、わしの隣がダンブルドア、反対隣がディーダラス・ディグルだ……。
これは魔女のマーリン・マッキノン。この写真の2週間後に殺された。家族全員殺られた。
こっちがフランク・ロングボトムと妻のアリス」

すでにむかむかしていたハリーの胃が、アリス・ロングボトムを見てぎゅっと捻れた。
一度も会ったことがないのに、この丸い、人懐っこそうな顔は知っている。息子のネビルそっくりだ。

「――気の毒な2人だ」

ムーディが唸った。

「あんなことになるなら、死んだほうがましだ……。
こっちはエメリーン・バンス。もう会ってるな?こっちは、言わずもがな、ルーピンだ……。
ベンジー・フェンウィック。こいつも殺られた。死体の欠けらしか見つからんかった……ちょっと退いてくれ」

ムーディは写真をつついた。
写真サイズの小さな姿たちが脇に避け、それまで半分陰になっていた姿が前に移動した。

「エドガー・ボーンズ……アメリア・ボーンズの弟だ。こいつも、こいつの家族も殺られた。すばらしい魔法使いだったが……。
スタージス・ボドモア。なんと、若いな……。
キャラドック・ディアボーン。この写真から6ヵ月後に消えた。遺体は見つからなんだ……。
ハグリッド。紛れもない、いつもおんなじだ……。
エルファイアス・ドージ。こいつにもおまえは会ったはずだ。あのころこんなバカバカしい帽子を被っとったのを忘れておったわ……。
ギデオン・プルウェット。こいつと、弟のフェービアンを殺すのに、『死喰い人』が5人も必要だったわ。雄々しく戦った……退いてくれ、退いてくれ……」

写真の小さな姿がわさわさ動き、一番後ろに隠れていた姿が一番前に現れた。

「これはダンブルドアの弟でアバーフォース。このとき一度しか会ってない。奇妙なやつだったな……。
ドーカス・メドウズ。ヴォルデモート自身の手にかかって殺された魔女だ……。
こっちはセインとローザ・フェリックス……もちろん知っとろうが。その隣がアーネスト、ハーヴィー、エバ……フェリックス所縁の者はみんな殺された。
シリウス。まだ髪が短かったな……それと……ほうれ、これがおまえの気に入ると思ったわ!」

ハリーは心臓が引っくり返った。
父親と母親がハリーににっこり笑いかけていた。
2人の真ん中に、しょぼくれた目をした小男が座っている。ワームテールだとすぐにわかった。
ハリーの両親を裏切ってヴォルデモートにその居所を教え、両親の死をもたらす手引きをした男だ。

「む?」

ムーディが言った。
ハリーはムーディの傷だらけ、穴だらけの顔を見つめた。
明らかにムーディは、ハリーに思いがけないご馳走を持ってきたつもりなのだ。

「うん」

ハリーはまたしてもにっこり作り笑いをした。

「あっ……あのね、いま思い出したんだけど、トランクに詰め忘れた……」

ちょうどシリウスが話しかけてきたので、ハリーは何を詰め忘れたかを考え出す手間が省けた。

「マッド-アイ、そこに何を持ってるんだ?」

そしてマッド-アイがシリウスのほうを見た。
ハリーは誰にも呼び止められずに、厨房を横切り、そろりと扉を抜けて階段を上がった。



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