The founder of orphan X
-総受男装ハーマイオニー百合夢-
「どんなに驚くべき魔法かどうかは、この際問題ではない」
ファッジはイライラ声で言った。
「むしろ、この者は、あからさまにマグルの面前でそうしたのであるから、驚くべきであればあるほど性質が悪いと、私はそう考える!」
顔をしかめていた者たちが、そのとおりだとざわめいた。
それよりも、パーシーが殊勝ぶって小さく頷いているのを見たとき、ハリーはどうしても話をせずにはいられなくなった。
「吸魂鬼のせいなんだ!」
ハリーは、誰にも邪魔されないうちに、大声で言った。
ざわめきが大きくなるだろうと、ハリーは期待していた。ところが、沈黙だった。
なぜか、これまでよりもっと深い沈黙だった。
「吸魂鬼?」
しばらくしてマダム・ボーンズが言った。
げじげじ眉が吊り上がり、片眼鏡が危うく落ちるかと思われた。
「君、どういうことかね?」
「路地に、吸魂鬼が2人いたんです。そして、僕と、僕のいとこを襲ったんです!」
「ああ」
ファッジが、ニヤニヤいやな笑い方をしながら、ウィゼンガモット法廷を見回した。
あたかも、冗談を楽しもうじゃないかと誘いかけているかのようだった。
「うん、うん、こんな話を聞かされるのではないかと思った」
「リトル・ウィンジングに吸魂鬼?」
マダム・ボーンズが度肝を抜かれたような声を出した。
「わけがわからない――」
「そうだろう、アメリア?」
ファッジはまだ薄ら笑いを浮かべていた。
「説明しよう。この子は、いろいろ考え抜いて、吸魂鬼がなかなかうまい口実になるという結論を出したわけだ。
まさにうまい話だ。マグルには吸魂鬼が見えないからな。そうだろう、君?
好都合だ、まさに好都合だ……君の証言だけで、目撃者はいない……」
「嘘じゃない!」
またしてもざわめきだした法廷に向かって、ハリーが大声を出した。
「2人いたんだ。路地の両端からやって来た。
周りが真っ暗になって、冷たくなって。
いとこも吸魂鬼を感じて逃げだそうとした――」
「たくさんだ。もうたくさん!」
ファッジが小バカにしたような顔で、傲然と言った。
「せっかく何度も練習してきたに違いない嘘話を遮ってすまんが――」
ダンブルドアが咳払いをした。
ウィゼンガモット法廷が、再びしーんとなった。
「実は、路地に吸魂鬼が存在したことの証人がおる。
ダドリー・ダーズリーのほかに、という意味じゃが」
ダンブルドアが言った。
ファッジのふっくら顔が、誰かに空気を抜き取られたように弛んだ。
ひと呼吸、ふた呼吸、ダンブルドアをぐいと見下ろし、それから、辛うじて体勢を立て直した感じでファッジが言った。
「残念ながらダンブルドア、これ以上戯言を聞いている暇はない。この件は早く片づけたい――」
「間違っておるかもしれんが」
ダンブルドアは心地よく言った。
「ウィゼンガモット権利憲章に、たしかにあるはずじゃ。被告人は自分に関する事件の証人を召喚する権利を有するとな?
マダム・ボーンズ、これは魔法法執行部の方針ではありませんかの?」
ダンブルドアは片眼鏡の魔女に向かって話を続けた。
「そのとおり」
マダム・ボーンズが言った。
「まったくそのとおり」
「ああ、結構、結構」
ファッジがばしりと言った。
「証人はどこかね?」
「一緒に連れてきておる」
ダンブルドアが言った。
「この部屋の前におるが。それでは、わしが――?」
「いや――ウィーズリー、君が行け」
ファッジがバーシーに怒鳴った。
パーシーはすぐさま立ち上がり、裁判官バルコニーから石段を下りて、ダンブルドアとハリーには一瞥もくれずに、急いで脇を通りすぎた。
パーシーは、すぐ戻ってきた。後ろにフィッグばあさんが従っている。
怯えた様子で、いつにも増して風変わりに見えた。
いつものスリッパを履き替えてくる気配りがほしかったと、ハリーは思った。
ダンブルドアは立ち上がって椅子をばあさんに譲り、自分用にもう1つ椅子を取り出した。
「姓名は?」
フィッグばあさんがおどおどと椅子の端に腰掛けると、ファッジが大声で言った。
「アラベラ・ドーリーン・フィッグ」
フィッグばあさんはいつものわなわな声で答えた。
「それで、何者だ?」
ファッジはうんざりしたように高飛車な声で聞いた。
「あたしゃ、リトル・ウィンジングに住んどりまして、ハリー・ポッターの家の近くです」
フィッグばあさんが言った。
「リトル・ウィンジングには、ハリー・ポッター以外に魔法使いや魔女がいるという記録はない」
マダム・ボーンズが即座に言った。
「そうした状況は常に、厳密にモニターしてきた。過去の事件が……事件だけに」
「あたしゃ、できそこないのスクイブで」
フィッグばあさんが言った。
「だから、あたしゃ登録なんかされていませんでしょうが?」
「スクイブ、え?」
ファッジが疑わしそうにじろりと見た。
「それは確かめておこう。助手のウィーズリーに、両親についての詳細を知らせておくよう。
ところで、スクイブは吸魂鬼が見えるのかね?」
ファッジは裁判官席の左右を見ながら聞いた。
「見えますともさ!」
フィッグばあさんが怒ったように言った。
ファッジは眉を吊り上げて、またばあさんを見下ろした。
「結構だ」
ファッジは超然とした様子を装いながら言った。
「話を聞こうか?」
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