The ounder of rphan X 
 -総受男装ハーマイオニー百合夢-




「こっちだ、ハリー」

おじさんが言った。
2人は、黄金のゲートに向かって流れていく魔法省の役人たちから抜け出した。
左のほうに「守衛」と書かれた案内板があり、その下の机に、ピーコックブルーのローブを着た無精ひげの魔法使いが座っていて、2人が近づくのに気づき、「日刊予言者新聞」を下に置いた。

「外来者のつき添いです」

ウィーズリーおじさんはハリーのほうを見ながら言った。

「こっちへどうぞ」

守衛がつまらなそうに言った。
ハリーが近づくと、守衛は、車のアンテナのように細くてへなへなした、長い金の棒を取り出し、ハリーの身体の前と後ろで上下させた。

「杖」

金の棒を下に置き、無愛想にそう言うと、守衛は片手を突き出した。
ハリーは杖を差し出した。
守衛はそれを奇妙な真鍮の道具にポンと落とした。
皿が一つしかない秤のような道具が、震えはじめた。
台のところにある切れ目から、細長い羊皮紙がすっと出てきた。
守衛はそれをピリリと破り取り、書かれている文字を読み上げた。

「28cm、不死鳥の羽根の芯、使用期間4年。間違いないか?」

「はい」

ハリーは緊張して答えた。

「これは保管する」

守衛は羊皮紙の切れ端を小さな真鍮の釘に突き刺した。

「これはそっちに返す」

守衛は杖をハリーに突っ返した。

「ありがとうございます」

「ちょっと待て……」

守衛がゆっくりと言った。
守衛の目が、ハリーの胸の銀バッジから額へと走った。

「ありがとう、エリック」

ウィーズリーおじさんはきっぱりそう言うと、ハリーの肩をつかみ、守衛の机から引き離して、黄金のゲートに向かう魔法使いや魔女の流れに連れ戻した。

流れに揉まれるように、ハリーはおじさんのあとに続いてゲートをくぐり、その向こう側の小ホールに出た。
そこには少なくとも20機のエレベーターが、各々がっしりした金の格子の後ろに並んでいた。
ハリーはおじさんと一緒に、そのうちの1台の前に集まっている群れに加わった。
そばにひげ面の大柄な魔法使いが、大きなダンボール箱を抱えて立っていた。
箱の中から、ガリガリという音が聞こえる。

「やあ、アーサー」

ひげ面がおじさんに向かって頷いた。

「ボブ、何が入ってるんだい?」

おじさんが箱に目をやった。

「よくわからないんだ」

ひげ面が深刻な顔をした。

「ごくありきたりの鶏だと思っていたんだが、火を吐いてね。
どうも、『実験的飼育禁止令』の重大違反らしい」

ジャラジャラ、カタカタと派手な音を立てながら、エレベーターが目の前に下りてきた。
金の格子がスルスルと横に開き、ハリーとウィーズリー氏はみんなと一緒に乗り込んだ。
気がつくと、ハリーは後ろの壁に押しつけられていた。
魔法使いや魔女が数人、もの珍しげにハリーを見ている。
ハリーは目が合わないように足下を見つめ、同時に前髪を撫でつけた。
格子がスルスル滑り、ガチャンと閉まった。
エレベーターはチェーンをガチャガチャいわせながら、ゆっくりと昇りはじめた。
同時に、ハリーが電話ボックスで聞いた、あの落ち着きはらった女性の声がまた鳴り響いた。

「7階。魔法ゲーム・スポーツ部がございます。
そのほか、イギリス・アイルランド・クィディッチ連盟本部、公式ゴブストーン・クラブ、奇抜な特許庁はこちらでお降りください」

エレベーターの扉が開いた。
雑然とした廊下と、壁に曲がって貼ってあるクィディッチ・チームのいろいろなポスターが、目に入った。
腕いっぱいに箒を抱えた魔法使いが1人、やっとのことでエレベーターから降り、廊下の向こうに消えていった。
扉が閉まり、エレベーターはまた激しく軋みながら昇っていった。
女性のアナウンスが聞こえた。

「6階。魔法運輸部でございます。
煙突ネットワーク庁、箒規制管理課、移動キー局、姿現わしテストセンターはこちらでお降りください」

扉が再び開き、4,5人の魔法使いと魔女が降りた。
同時に、紙飛行機が数機、スィーッと飛び込んできた。
ハリーは、頭の上をのんびり飛び回る紙飛行機を見つめた。
薄紫色で、両翼の先端に魔法省とスタンプが押してある。

「省内連絡メモだよ」

ウィーズリーおじさんが小声でハリーに言った。

「昔はふくろうを使っていたんだが、とんでもなく汚れてね……机は糞だらけになるし……」

ガタゴトと上へ昇る間、メモ飛行機は天井から下がって揺れているランプの周りをハタハタと飛び回った。

「5階。国際魔法協力部でございます。
国際魔法貿易基準機構、国際魔法法務局、国際魔法使い連盟イギリス支部は、こちらでお降りください」

扉が開き、メモ飛行機が2機、2,3人の魔法使いたちと一緒にスイーッと出ていった。
しかし、入れ替わりに数機飛び込んできて、ランプの周りをビュンビュン飛び回るので、灯りがちらついて見えた。

「4階。魔法生物規制管理部でございます。
動物課、存在課、霊魂課、小鬼連絡室、害虫相談室はこちらでお降りください」

「失礼」

火を吐く鶏を運んでいた魔法使いが降り、あとを追ってメモ飛行機が群れをなして出ていった。
扉がまたガチャンと閉まった。

「3階。魔法事故惨事部がございます。
魔法事故リセット部隊、忘却術士本部、マグル対策口実委員会はこちらでお降りください」

この階でほとんど全員が降りた。
残ったのは、ハリー、ウィーズリー氏、それに、床まで垂れる長い羊皮紙を読んでいる魔女が1人だった。
残ったメモ飛行機は、エレベーターが再び揺れながら昇る間、ランプの周りを飛び回った。
そしてまた扉が開き、アナウンスの声がした。

「2階。魔法法執行部でございます。
魔法不適正使用取締局、闇祓い本部、ウィゼンガモット最高裁事務局はこちらでお降りください」

「ここで降りるよ、ハリー」

ウィーズリーおじさんが言った。
二人は魔女に続いて降り、扉がたくさん並んだ廊下に出た。

「私の部屋は、この階の一番奥だ」

「おじさん」

陽の光が流れ込む窓のそばを通りながら、ハリーが呼びかけた。

「ここはまだ地下でしょう?」

「そうだよ」

おじさんが答えた。

「窓に魔法がかけてある。
魔法ビル管理部が、毎日の天気を決めるんだ。
この間は2ヵ月もハリケーンが続いた。賃上げ要求でね。もうすぐそこだよ、ハリー」

角を曲がり、樫材のどっしりした両開きの扉を過ぎると、雑然とした広い場所に出た。
そこは小部屋に仕切られていて、話し声や笑い声でさざめいていた。
メモ飛行機が小型ロケットのように、小部屋からビュンビュン出入りしている。
一番手前の小部屋に、表札が曲がって掛かっている。
闇祓い本部


通りすがりに、ハリーは小部屋の入口からこっそり盗み見た。
闇祓いたちは、小部屋の壁にいろいろと貼りつけていた。
お尋ね者の人相書きやら、家族の写真、贔屓のクィディッチ・チームのポスター、「日刊予言者新聞」の切り抜きなどだ。
ビルより長いポニーテールの魔法使いが、真紅のロープを着て、ブーツを履いた両足を机に載せ、羽根ペンに報告書を口述筆記させていた。
そのちょっと先で、片目に眼帯をした魔女が、間仕切り壁の上からキングズリー・シャックルボルトに話しかけている。

「おはよう、ウィーズリー」

2人が近づくと、キングズリーが何気なく挨拶した。

「君と話したいと思っていたんだが、ちょっとお時間をいただけますかね?」

「ああ、ほんのちょっとだけなら」

ウィーズリーおじさんが言った。

「かなり急いでるのでね」

2人はほとんど互いに知らないような話し方をした。
ハリーがキングズリーに挨拶しようと口を開きかけると、おじさんがハリーの足を踏んだ。
キングズリーのあとに従いて、2人は小部屋の列に沿って歩き、一番奥の部屋に行った。



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