The founder of orphan X
-総受男装ハーマイオニー百合夢-
ウィーズリーおばさんは、みんなのあとからむっつりと階段を上った。
「まっすぐベッドに行くんですよ。おしゃべりしないで」
最初の踊り場に着くとおばさんが言った。
「明日は忙しくなるわ。ジニーは眠っていると思います」
最後の言葉はハーマイオニーに向かって言った。
「だから、起こさないようにしてね」
「眠ってる。ああ、絶対さ」
ハーマイオニーがおやすみを言って別れ、あとのみんなが上の階に上るとき、フレッドが小声で言った。
「ジニーは目をばっちり開けて寝てる。
下でみんなが何を言ったか、ハーマイオニーが全部教えてくれるのを待ってるさ。
もしそうじゃなかったら、俺、レタス食い虫並みだ」
「さあ、ロン、ハリー」
2つ目の踊り場で、2人の部屋を指差しながらおばさんが言った。
「寝なさい。2人とも」
「おやすみ」
ハリーとロンが双子に挨拶した。
「ぐっすり寝ろよ」
フレッドがウィンクした。
おばさんはハリーが部屋に入ると、ピシャッと勢いよくドアを閉めた。
寝室は、最初に見たときより、一段と暗くじめじめしていた。
絵のないカンバスは、まるで姿の見えない絵の主が眠っているかのように、ゆっくりと深い寝息を立てていた。
ハリーはパジャマに着替え、眼鏡を取って、ひやっとするベッドに潜り込んだ。
ヘドウィグとピッグウィジョンが洋箪笥の上で、カタカタ動き回り、落ち着かない様子で羽を擦り合わせていたので、ロンは、おとなしくさせるのに「ふくろうフーズ」を投げてやった。
「あいつらを毎晩狩りに出してやるわけにはいかないんだ」
栗色のパジャマに着替えながら、ロンが説明した。
「ダンブルドアは、この広場のあたりで、あんまりたくさんふくろうが飛び回るのはよくないって。怪しまれるから。
あ、そうだ……忘れてた……」
ロンはドアのところまで行って、鍵を掛けた。
「どうしてそうするの?」
「クリーチャーさ」
ロンが明かりを消しながら言った。
「僕がここに来た最初の夜、クリーチャーが夜中の3時にふらふら入ってきたんだ。
目が覚めたとき、あいつが部屋の中をうろついてるのを見たらさ、まじ、いやだぜ。ところで……」
ロンはベッドに潜り込んで上掛けをかけ、暗い中でハリーのほうを向いた。
煤けた窓を通して入ってくる月明かりで、ハリーはロンの輪郭を見ることができた。
「
どう思う?」
ロンが何を聞いたのか、聞き返す必要もなかった。
「うーん、僕たちが考えつかないようなことは、あんまり教えてくれなかったよね?」
ハリーは、地下で聞いたことを思い出しながら言った。
「つまり、結局何を言ったかというと、騎士団が阻止しようとしてるってこと――みんながヴォル――」
ロンが突然息を呑む音がした。
「
――デモートに与するのを」
ハリーははっきり言いきった。
「いつになったら、あいつの名前を言えるようになるんだい?
シリウスもルーピンも言ってるよ」
ロンはその部分は無視した。
「うん、君の言うとおりだ」
ロンが言った。
「みんなが話したことは、僕たち、だいたいもう知ってた。『伸び耳』を使って。
ただ、初耳だったのは――」
バシッ。「
あいたっ!」
「大きな声を出すなよ、ロン。ママが戻ってくるじゃないか」
「2人とも、僕の膝の上に『姿現わし』してるぞ!」
「そうか、まあ、暗いとこじゃ、少し難しいもんだ」
フレッドとジョージのぼやけた輪郭が、ロンのベッドから飛び降りるのを、ハリーは見ていた。
ハリーのベッドのバネが呻くような音を出したと思うと、ベッドが数cm沈み込んだ。ジョージがハリーの足元に座ったのだ。
「それで、もうわかったか?」
ジョージが急き込んで言った。
「サクヤが閉じ込められて訓練を受けなくちゃいけなくなった理由と、シリウスが言ってた武器のこと?」
ハリーが言った。
「武器のほうは、うっかり口が滑ったって感じだな」
今度はロンの隣に座って、フレッドがうれしそうに言った。
「愛しの『伸び耳』でも、そいつは聞かなかったな?そうだよな?」
「サクヤのことと武器は関係あると思う?」
ハリーが聞いた。
「なんでもありえちまうな」
フレッドが言った。
「だけど、『アバダケダブラ』の呪いより恐ろしい武器なんて、それこそありえないだろ?」
ロンが言った。
「死ぬより恐ろしいもの、あるか?
まさかサクヤ死にかけたりしてないよね?」
「あの様子だと、それはないんじゃないか?
本人の字の手紙だってもらってることだし」
ジョージが意見を述べた。
「武器は何か、一度に大量に殺せたり……とっても痛い殺し方のやつかも」
ロンが怖そうに言った。
「痛めつけるなら、『磔呪文』が使えるはずだ」
ハリーが言った。
「やつには、あれより強力なものはいらない」
しばらくの間、みんな黙っていた。
みんなが、自分と同じように、サクヤの身に何が起きて、武器というものはいったいどんな恐ろしいことをするのか考えているのだと、ハリーにはわかった。
「それじゃ、いまは誰がその武器を持ってると思う?」
ジョージが聞いた。
「僕たちの側にあればいいけど」
ロンが少し心配そうに言った。
「もしそうなら、たぶんダンブルドアが持ってるな」
フレッドが言った。
「どこに?」
ロンがすぐに聞いた。
「ホグワーツか?」
「きっとそうだ」
ジョージが言った。
「『賢者の石』を隠したところだし」
「だけど、武器はあの石よりずっと大きいぞ!」
ロンが言った。
「そうとはかぎらない」
フレッドが言った。
「うん。大きさで力は測れない」
ジョージが言った。
「ジニーを見ろ」
「どういうこと?」
ハリーが聞いた。
「あの子の『コウモリ鼻糞の呪い』を受けたことがないだろう?」
「シーッ」
フレッドがベッドから腰を浮かしながら言った。
「静かに!」
みんなしーんとなった。階段を上がってくる足音がする。
「ママだ」
ジョージが言った。
間髪を容れず、
バシッという大きな音がして、ハリーはベッドの端から重みが消えたのを感じた。
2,3秒後、ドアの外で床が軋む音が聞こえた。ウィーズリーおばさんが、2人がしゃべっていないかどうか、聞き耳を立てているのだ。
ヘドウィグとピッグウィジョンが哀れっぽく鳴いた。
床板がまた軋み、おばさんがフレッドとジョージを調べに上がっていく音が聞こえた。
「ママは僕たちのこと全然信用してないんだ」
ロンが悔しそうに言った。
ハリーはとうてい眠れそうにないと思った。
今夜は考えることがあまりにいろいろ起こって、何時間も悶々として起きているだろうと思った。
ロンと話を続けたかったが、ウィーズリーおばさんがまた床を軋ませながら階段を下りていく音が聞こえた。
おばさんが行ってしまうと、何か別なものが階段を上がってくる音をはっきり聞いた……それは、肢が何本もある生き物で、カサコソと寝室の外を駆け回っている。
魔法生物飼育学の先生、ハグリッドの声が聞こえる。
「どうだ、美しいじゃねえか、え?ハリー?今学期は、武器を勉強するぞ……」ハリーはその生き物が頭に大砲を持っていて、自分のほうを振り向いたのを見た……ハリーは身をかわした……。
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