The ounder of rphan X 
 -総受男装ハーマイオニー百合夢-




「クリーチャーって誰?」

ハリーが聞いた。

「ここに棲んでる屋敷しもべ妖精」

ロンが答えた。

「いかれぽんちさ。あんなの見たことない」

ハーマイオニーがロンを睨んだ。

いかれぽんちなんかじゃないわ、ロン」

「あいつの最大の野望は、首を切られて、母親と同じように楯に飾られることなんだぜ」

ロンが焦れったそうに言った。

「ハーマイオニー、それでもまともかい?」

「それは――それは、ちょっと変だからって、クリーチャーのせいじゃないわ」

ロンはやれやれという目でハリーを見た。

「ハーマイオニーはまだ反吐を諦めてないんだ」

「反吐じゃないってば!」

ハーマイオニーが熱くなった。

「S・P・E・W、しもべ妖精福祉振興協会です。
それに、私だけじゃないのよ。ダンブルドアもクリーチャーにやさしくしなさいっておっしゃってるわ」

「はい、はい」

ロンが言った。

「行こう。腹ぺこだ」

ロンは先頭に立ってドアから踊り場に出た。
しかし、3人が階段を下りる前に――。

「ストップ!」

ロンが声をひそめ、片腕を伸ばして、ハリーとハーマイオニーを押し止めた。

「みんな、まだホールにいるよ。何か聞けるかもしれない」

3人は慎重に階段の手摺から覗き込んだ。階下の薄暗いホールは、魔法使いと魔女たちで一杯だった。
ハリーの護衛隊もいた。興奮して囁き合っている。
グループの真ん中に、脂っこい黒髪で鼻の目立つ魔法使いが見えた。
ホグワーツでハリーが一番嫌いな、スネイプ先生だ。ハリーは階段の手摺から身を乗り出した。
スネイプが不死鳥の騎士団で何をしているのかがとても気になった……。

細い薄橙色の紐が、ハリーの目の前を下りていった。
見上げると、フレッドとジョージが上の踊り場にいて、下の真っ黒な集団に向かってそろりそろりと「伸び耳」を下ろしていた。
2人はしばらくのあいだ真剣な表情で「伸び耳」の先端を耳に突っ込んでいたが、やがて下の集団は全員、玄関の扉に向かい、姿が見えなくなった。

「ありがたいことに、スネイプは絶対ここで食事しないんだ」

ロンが小声でハリーに言うと、上の踊り場の兄たちを見上げた。

「なにか聞けた?」

フレッドとジョージは互いの顔を見合わせ、バシッと「姿現わし」で3人のところまで降りてきた。
玄関の扉が開き、また閉まる音が聞こえた。

「二、三言しか聞こえなかったけど、新情報だ」

「サクヤはホグワーツで何か『訓練』を受けてるらしい。
今、スネイプが『訓練は順調だ』って言ってた」

「なんだって?
じゃあ、スネイプがサクヤを鍛えてるってこと?」

ハリーの声が大きくなった。
ハーマイオニーは慌ててハリーの肩をぐいっと引いた。

「ホールでは声を低くするのを忘れないで、ハリー」

ハーマイオニーが囁いた。

「さあ、ほらみんな降りて行かないと――お夕食よ――」

しもべ妖精の首がずらりと並ぶ壁の前を通り過ぎるとき、ハリーはまたムカムカが蘇りつつあった。
スネイプの個人授業などとても願い下げだが、先生が誰であれ、サクヤだけが何かを教えられている。
もしかしてサクヤは不死鳥の騎士団に入ろうとしているんじゃないのか?そのために特訓してもらっているんじゃないのか?
ハリーがそう考えたところで、ルーピン、ウィーズリーおばさん、トンクスが玄関の戸口にいるのが見えた。
みんなが出ていったあとで、魔法の錠前や門をいくつも掛けているところだった。

「厨房で食べますよ」

階段下で3人を迎え、ウィーズリーおばさんが小声で言った。

「さあ、ハリー、忍び足でホールを横切って、ここの扉から――」

バタッ。

トンクス!

おばさんがトンクスを振り返り、呆れたように叫んだ。

「ごめん!」

トンクスは情けない声を出した。床に這いつくばっている。

「このバカバカしい傘立てのせいよ。躓いたのはこれで二度目――」

あとの言葉は、耳を劈き血も凍る、恐ろしい叫びに呑み込まれてしまった。
さっきハリーがその前を通った、虫食いだらけのビロードのカーテンが、左右に開かれていた。
その裏にあったのは扉ではなかった。
一瞬、ハリーは窓の向こう側が見えるのかと思った。
窓の向こうに黒い帽子を被った老女がいて、叫んでいる。
まるで拷問を受けているかのような叫びだ――次の瞬間、ハリーはそれが等身大の肖像画だと気づいた。
ただし、ハリーがいままで見た中で一番生々しく、一番不快な肖像画だった。

老女は涎を垂らし、白目を剥き、叫んでいるせいで、黄ばんだ顔の皮膚が引き攣っている。
ホール全体に掛かっている他の肖像画も目を覚まして叫びだした。
あまりの騒音に、ハリーは目をぎゅっとつぶり、両手で耳を塞いだ。

ルーピンとウィーズリーおばさんが飛び出して、カーテンを引き老女を閉め込もうとした。
しかしカーテンは閉まらず、老女はますます鋭い叫びをあげて、2人の顔を引き裂こうとするかのように、両手の長い爪を振り回した。

「穢らわしい!クズども!塵芥の輩!雑種、異形、でき損ないども。ここから立ち去れ!わが祖先の館を、よくも汚してくれたな――」

トンクスは何度も何度も謝りながら、巨大などっしりしたトロールの足を引きずって立て直していた。
ウィーズリーおばさんはカーテンを閉めるのを諦め、ホールを駆けずり回って、ほかの肖像画に杖で「失神術」をかけていた。
すると、ハリーの行く手の扉から、黒い長い髪の男が飛び出してきた。

「黙れ。この鬼婆。黙るんだ!

男は、ウィーズリーおばさんが諦めたカーテンをつかんで吼えた。
老女の顔が血の気を失った。

「こいつぅぅぅぅぅ!」

老女が喚いた。
男の姿を見て、両眼が飛び出していた。

「血を裏切る者よ、忌まわしや。わが骨肉の恥!」

「聞こえないのか――だ――ま――れ!

男が吼えた。
そして、ルーピンと2人がかりの金剛力で、やっとカーテンを元のように閉じた。
老女の叫びが消え、しーんと沈黙が広がった。

少し息を弾ませ、長い黒髪を目の上から掻き上げ、男がハリーを見た。
ハリーの名付け親、シリウスだ。

「やあ、ハリー」

シリウスが暗い顔で言った。

「どうやらわたしの母親に会ったようだね」





>>To be continued

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