The founder of orphan X
-総受男装ハーマイオニー百合夢-
「どんなことがあっても、パパやママの前でパーシーのことを持ち出さないで」
ロンが、緊張した声でハリーに言った。
「どうして?」
「なぜって、パーシーの名前が出るたびに、親父は手に持っているものを壊しちゃうし、お袋は泣きだすんだ」
フレッドが言った。
「大変だったのよ」
ジニーが悲しそうに言った。
「あいつなんかいないほうが清々する」
ジョージが、柄にもなく顔をしかめて言った。
「何があったんだい?」
ハリーが聞いた。
「パーシーが親父と言い争いをしたんだ」
フレッドが言った。
「親父が誰かとあんなふうに言い争うのを初めて見た。普通はお袋が叫ぶもんだ」
「学校が休みに入ってから1週間目だった」
ロンが言った。
「僕たち、騎士団に加わる準備をしてたんだ。
バーシーが家に帰ってきて、昇進したって言った」
「冗談だろ?」
ハリーが言った。
パーシーが野心家だということはよく知っていたが、ハリーの印象では、パーシーの魔法省での最初の任務は、大成功だったとは言えない。
上司がヴォルデモート卿に操作されていて(魔法省がそれを信じていたわけではない――みんな、クラウチ氏は気が触れたと思い込んでいた)、それに気づかなかったのは、パーシーが相当大きなポカをやったということになる。
「ああ、俺たち全員が驚いたさ」
ジョージが言った。
「だって、パーシーはクラウチの件でずいぶん面倒なことになったからな。尋問だとかなんだとか。
パーシーはクラウチが正気を失っていることに気づいて、それを上司に知らせるべきだったって、みんながそう言ってたんだぜ。
だけど、パーシーのことだから、クラウチに代理を任せられて、そのことで文句を言うはずがない」
「じゃ、なんで魔法省はパーシーを昇進させたの?」
「それこそ、僕らも変だと思ったところさ」
ロンが言った。
ハリーが喚くのをやめたので、ロンは普通の会話を続けようと熱心になっているようだった。
「パーシーは大得意で家に帰ってきた――いつもよりずっと大得意さ。そんなことがありうるならね――そして、親父に言った。
ファッジの大臣室勤務を命ぜられたって。
ホグワーツを卒業して1年目にしちゃ、すごくいい役職さ。大臣付下級補佐官。
パーシーは親父が感心すると期待してたんだろうな」
「ところが親父はそうじゃなかった」
フレッドが暗い声を出した。
「どうして?」
ハリーが聞いた。
「うん。ファッジはどうやら、魔法省を引っ掻き回して、誰かダンブルドアと接触している者がいないかって調べてたらしい」
ジョージが言った。
「ダンブルドアの名前は、近ごろじゃ魔法省の鼻摘みなんだ」
フレッドが言った。
「ダンブルドアが『例のあの人』が戻ったと言いふらして問題を起こしてるだけだって、魔法省じゃそう思ってる」
「親父は、ファッジが、ダンブルドアと繋がっている者は机を片づけて出ていけって、はっきり宣言したって言うんだ」
ジョージが言った。
「問題は、ファッジが親父を疑ってるってこと。
親父がダンブルドアと親しいって、ファッジは知ってる。
それに、親父はマグル好きだから少し変人だって、ファッジはずっとそう思ってた」
「だけど、それがパーシーとどういう関係?」
ハリーは混乱した。
「そのことさ。ファッジがパーシーを大臣室に置きたいのは、家族を――それとダンブルドアを――スパイするためでしかないって、親父はそう考えてる」
ハリーは低く口笛を吹いた。
「そりゃ、パーシーがさぞかし喜んだろうな」
ロンが虚ろな笑い方をした。
「パーシーは完全に頭に来たよ。
それでこう言ったんだ――うーん、ずいぶんひどいことをいろいろ言ったな。
魔法省に入って以来、父さんの評判がぱっとしないから、それと戦うのに苦労したとか、父さんは何にも野心がないとか、それだからいつも――ほら――僕たちにはあんまりお金がないとか、つまり――」
「
なんだって?」
ハリーは信じられないという声を出し、ジニーは怒った猫のような声を出した。
「そうなんだ」
ロンが声を落とした。
「そして、ますますひどいことになってさ。パーシーが言うんだ。
父さんがダンブルドアと連んでいるのは愚かだとか、ダンブルドアは大きな問題を引き起こそうとしているとか、父さんはダンブルドアと落ちるところまで落ちるんだとか。
そして、自分は――パーシーのことだけど――どこに忠誠を誓うかわかっている、魔法省だ。
もし父さんと母さんが魔法省を裏切るなら、もう自分はこの家の者じゃないってことを、みんなにはっきりわからせてやるって。
そしてパーシーはその晩、荷物をまとめて出ていったんだ。
いま、ここ、ロンドンに住んでるよ」
ハリーは声をひそめて毒づいた。
ロンの兄弟の中では、ハリーは昔からパーシーが一番気に入らなかった。
しかし、パーシーが、ウィーズリーおじさんにそんなことを言うとは、考えもしなかった。
「ママは気が動転してさ」
ロンが言った。
「わかるだろ――泣いたりとか。
ママはロンドンに出てきて、パーシーと話をしようとしたんだ。
ところがバーシーはママの鼻先でドアをぴしゃりさ。
職場でパパに出会ったら、パーシーがどうするかは知らない――無視するんだろうな、きっと」
「だけど、パーシーは、ヴォルデモートが戻ってきたことを知ってる
はずだ」
ハリーが考え考え言った。
「バカじゃないもの。
君のパパやママが、何の証拠もないのにすべてを懸けたりしないとわかるはずだ」
「ああ、うーん、君の名前も争いの引き合いに出された」
ロンがハリーを盗み見た。
「パーシーが言うには、証拠は君とサクヤの言葉だけだ……なんて言うのかな……パーシーはそれじゃ不十分だって」
「パーシーは『日刊予言者新聞』を真に受けてるのよ」
ハーマイオニーが辛辣な口調で言った。
すると、全員が首をこっくりした。
「いったい何のこと?」
ハリーがみんなを見回しながら聞いた。
どの顔もはらはらしてハリーを見ていた。
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