The founder of orphan X
-総受男装ハーマイオニー百合夢-
「フレッドとジョージが『伸び耳』を発明したんだ。うん」
ロンが言った。
「なかなか役に立つぜ」
「伸び――?」
「耳。そうさ。
ただ、最近は使うのをやめざるをえなくなった。
ママが見つけてカンカンになってね。ママが耳をゴミ箱に捨てちゃうもんだから、フレッドとジョージは耳を全部隠さなくちゃならなくなった。
だけど、ママにばれるまでは、かなり利用したぜ。
騎士団が、面の割れてる『死喰い人』を追けてることだけはわかってる。つまり、様子を探ってるってことさ。うん――」
「騎士団に入るように勧誘しているメンバーも何人かいるわ――」
ハーマイオニーが言った。
「それに、何かの護衛に立ってるのも何人かいるな」
ロンが言った。
「しょっちゅう護衛勤務の話をしてる」
「もしかしたら僕の護衛のことじゃないのかな?」
ハリーが皮肉った。
「ああ、そうか」
ロンが急に謎が解けたような顔をした。
「それじゃ――騎士団のメンバーが城に出入りしてるってのも、あれはサクヤのことでか。やっと繋がった」
ハリーはフンと鼻を鳴らした。
そしてロンとハーマイオニーのほうを絶対見ないようにしながら、また部屋を往ったり来たりしはじめた。
「それじゃ、君たちはここで何してたんだい?会議に入れないなら」
ハリーは問い詰めた。
「2人とも忙しいって言ってたろう」
「そうよ」
ハーマイオニーがすぐ答えた。
「この家を除染していたの。何年も空家だったから、いろんなものが巣食っているのよ。
厨房はなんとかきれいにしたし、寝室もだいたい済んだわ。
それから、客間に取りかかるのが明日――
ああーっ!」
バシッバシッと大きな音がして、ロンの双子の兄、フレッドとジョージが、どこからともなく部屋の真ん中に現れた。
ピッグウィジョンはますます激しく囀り、洋箪笥の上のヘドウィグのそばにブーンと飛んでいった。
「いいかげんに
それやめて!」
ハーマイオニーが諦め声で言った。
双子はロンと同じ鮮やかな赤毛だが、もっとがっちりして背は少し低い。
「やあ、ハリー」
ジョージがハリーににっこりした。
「君の甘ーい声が聞こえたように思ったんでね」
「怒りたいときはそんなふうに抑えちゃだめだよ、ハリー。全部吐いっちまえ」
フレッドもにっこりしながら言った。
「100kmぐらい離れたとこに、君の声が聞こえなかった人が1人ぐらいいたかもしれないじゃないか」
「君たち2人とも、それじゃ、『姿現わし』テストに受かったんだね?」
ハリーは不機嫌なまま言った。
「優等でさ」
フレッドが言った。
手には何やら長い薄橙色の紐を持っている。
「階段を下りたって、30秒も余計にかかりゃしないのに」
ロンが言った。
「弟よ、『時はガリオンなり』さ」
フレッドが言った。
「とにかく、ハリー、君の声が受信を妨げているんだ。『伸び耳』のね」
ハリーがちょっと眉を吊り上げたので、フレッドが説明をつけ加え、紐を掲げて見せた。
ハリーは、その紐の先が踊り場に伸びているのを見た。
「下で何してるのか、聞こうとしてたんだ」
「気をつけたほうがいいぜ」
ロンが「耳」を見つめながら言った。
「ママがまたこれを見つけたら……」
「その危険を冒す価値ありだ。いま重要会議をしてる」
フレッドが言った。
ドアが開いて、長いふさふさした赤毛が現れた。
「ああ、ハリー、いらっしゃい」
ロンの妹、ジニーが明るい声で挨拶した。
「あなたの声が聞こえたように思ったの」
「『伸び耳』は効果なしよ。ママがわざわざ厨房の扉に『邪魔よけ呪文』をかけたもの」
フレッドとジョージに向かってジニーが言った。
「どうしてわかるんだ?」
ジョージががっくりしたように聞いた。
「トンクスがどうやって試すかを教えてくれたわ」
ジニーが答えた。
「扉に何か投げつけて、それが扉に接触できなかったら、扉は『邪魔よけ』されているの。
わたし、階段の上から糞爆弾をポンポン投げつけてみたけど、みんな撥ね返されちゃった。
だから、『伸び耳』が扉の隙間から忍び込むことは絶対できないわ」
フレッドが深いため息をついた。
「残念だ。あのスネイプのやつが何をするつもりだったのか、是非とも知りたかったのになあ」
「スネイプ!」
ハリーはすぐに反応した。
「ここにいるの?」
「ああ」
ジョージは慎重にドアを閉め、ベッドに腰を下ろしながら言った。
ジニーとフレッドも座った。
「マル秘の報告をしてるんだ」
「いやな野郎」
フレッドがのんびりと言った。
「スネイプはもう私たちの味方よ」
ハーマイオニーが咎めるように言った。
ロンがフンと鼻を鳴らした。
「それでも、いやな野郎はいやな野郎だ。あいつが僕たちのことを見る目つきときたら」
「ビルもあの人が嫌いだわ」
ジニーが、まるでこれで決まりという言い方をした。
ハリーは怒りが収まったのかどうかわからなかったが、情報を聞き出したい思いのほうが、怒鳴り続けたい気持ちより強くなっていた。
ハリーはみんなと反対側のベッドに腰掛けた。
「ビルもここにいるのかい?」
ハリーが聞いた。
「エジプトで仕事をしてると思ってたけど?」
「事務職を希望したんだ。
家に帰って、騎士団の仕事ができるようにって」
フレッドが答えた。
「エジプトの墓場が恋しいって言ってる。だけど」
フレッドがニヤッとした。
「その埋め合わせがあるのさ」
「どういう意味?」
「あのフラー・デラクールって子、覚えてるか?」
ジョージが言った。
「グリンゴッツに勤めたんだ。
えいごーがうまーくなるよーに――」
「それで、ビルがせっせと個人教授をしてるのさ」
フレッドがクスクス笑った。
「チャーリーも騎士団だ」
ジョージが言った。
「だけど、まだルーマニアにいる。
ダンブルドアは、なるべくたくさんの外国の魔法使いを仲間にしたいんだ。
それでチャーリーが、勤務が休みの日にいろいろと接触してる」
「それは、パーシーができるんじゃないの?」
ハリーが聞いた。
ウィーズリー家の三男が魔法省の国際魔法協力部に勤めているというのが、ハリーの聞いた一番新しい情報だった。
とたんに、ウィーズリー兄弟妹とハーマイオニーが暗い顔でわけありげに目を見交わした。
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