The ounder of rphan X 
 -総受男装ハーマイオニー百合夢-




ペチャクチャしゃべる女子学生の群れが、スネイプと、ジェームズ、シリウス、ルーピンとを分けていた。
その群れの真ん中に身を置くことで、ハリーはスネイプの姿を捕らえたままで、ジェームズとその仲間の声がなんとか聞こえるところにいた。

「ムーニー、第10問は気に入ったか?」

玄関ホールに出たとき、シリウスが聞いた。

「ばっちりさ」

ルーピンがきびきびと答えた。

狼人間を見分ける5つの兆候を挙げよ。いい質問だ」

「全部の兆候を挙げられたと思うか?」

ジェームズが心配そうな声を出してみせた。

「そう思うよ」

太陽の降り注ぐ校庭に出ようと正面扉の前に集まってきた生徒の群れに加わりながら、ルーピンがまじめに答えた。

「1、狼人間は僕の椅子に座っている。
2、狼人間は僕の服を着ている。
3、狼人間の名はリーマス・ルーピン」

笑わなかったのはワームテールだけだった。

「僕の答えは、口元の形、瞳孔、ふさふさの尻尾」

ワームテールが心配そうに言った。

「でも、そのほかは考えつかなかった――」

「ワームテール、おまえ、バカじゃないか?」

ジェームズが焦れったそうに言った。

「1ヵ月に一度は狼人間に出会ってるじゃないか――」

「小さい声で頼むよ」

ルーピンが哀願した。
ハリーは心配になってまた振り返った。スネイプは試験問題用紙に没頭したまま、まだ近くにいた――しかし、これはスネイプの記憶だ。
いったん校庭に出て、スネイプが別な方向に歩き出せば、ハリーはもうジェームズを追うことができないのは明らかだ。
しかし、ジェームズと3人の友達が湖に向かって芝生を闊歩しだすと――ああよかった――スネイプが従いてくる。
まだ試験問題を熟読していて、どうやらどこに行くというはっきりした考えもないらしい。
スネイプより少し前を歩くことで、ハリーはなんとかジェームズたちを観察し続けることができた。

「まあ、僕はあんな試験、楽勝だと思ったね」

シリウスの声が聞こえた。

「少なくとも僕は、『O・優』が取れなきゃおかしい」

「僕もさ」

そう言うと、ジェームズはポケットに手を突っ込み、バタバタもがく金色のスニッチを取り出した。

「どこで手に入れた?」

「ちょいと失敬したのさ」

ジェームズが事もなげに言った。ジェームズはスニッチをもてあそびはじめた。
30cmほど逃がしてはパッと捕まえる。すばらしい反射神経だ。ワームテールが感服しきったように眺めていた。

4人は湖の端にあるブナの木陰で立ち止まった。
ハリー、ロン、ハーマイオニーが、宿題をすませるのに、そのブナの木の下で日曜日を過ごしたことがある。
4人は芝生に身体を投げ出した。
ハリーはまた後ろを振り返ったが、なんとうれしいことに、スネイプは灌木の茂みの暗がりで、芝生に腰を下ろしていた。
相変わらず試験問題用紙に没頭している。
おかげでハリーは、ブナの木と灌木の間に腰を下ろし、木陰の4人組を眺め続けることができた。
陽の光が、滑らかな湖面に眩しく、岸辺には大広間からさっき出てきた女子学生のグループが座り、笑いさざめきながら、靴もソックスも脱ぎ、足を水につけて涼んでいた。
ルーピンは本を取り出して読みはじめた。
シリウスは芝生ではしゃいでいる生徒たちをじっと見回していた。いくぶん偉そうな感じで退屈そうに見えたが、そんな様子もとても絵になっていた。
ジェームズは相変わらずスニッチと戯れていた。だんだん遠くに逃がし、ほとんど逃げられそうになりながら、最後の瞬間に必ず捕まえた。
ワームテールは口をポカンと開けてジェームズを見ていた。とくに難しい技で捕まえるたびに、ワームテールは息を呑み、手を叩いた。
5分ほど見ているうちに、ハリーは、どうしてジェームズがワームテールに、騒ぐなと言わないのか気になった。
しかし、ジェームズは注目されるのを楽しんでいるようだった。
父親を見ていると、髪をくしゃくしゃにする癖がある。あまりきちんとならないようにしているかのようだった。それに、しょっちゅう水辺の女の子たちのほうを見ていた。

「それ、しまえよ」

ジェームズがすばらしいキャッチを見せ、ワームテールが歓声をあげる傍らで、とうとうシリウスそう言った。

「ワームテールが興奮して漏らしちまう前に」

ワームテールが少し赤くなったが、ジェームズはニヤッとした。

「君が気になるならね」

ジェームズはスニッチをポケットにしまった。
シリウスだけがジェームズの見せびらかしをやめさせることができるのだと、ハリーははっきりそう感じた。

「退屈だ」

シリウスが言った。

「満月だったらいいのに」

「君はそう思うかもな」

ルーピンが本の向こうで暗い声を出した。

「まだ『変身術』の試験がある。退屈なら、僕をテストしてくれよ。さあ……」

ルーピンが本を差し出した。

しかし、シリウスはフンと鼻を鳴らした。

「そんなくだらない本は要らないよ。全部知ってる」

「これで楽しくなるかもしれないぜ、パッドフット」

ジェームズがこっそり言った。

「あそこにいるやつを見ろよ……」

シリウスが振り向いた。そして、ウサギの臭いを嗅ぎつけた猟犬のように、じっと動かなくなった。

「いいぞ」

シリウスが低い声で言った。

スニベルスなきみそ

ハリーは振り返ってシリウスの視線を追った。
スネイプが立ち上がり、鞄にOWL試験用紙をしまっていた。スネイプが灌木の陰を出て、芝生を歩きはじめたとき、シリウスとジェームズが立ち上がった。
ルーピンとワームテールは座ったままだった。ルーピンは本を見つめたままだったが、目が動いていなかったし、微かに眉根に皺を寄せていた。ワームテールはわくわくした表情を浮かべ、シリウスとジェームズからスネイプへと視線を移していた。

「スニベルス、元気か?」

ジェームズが大声で言った。

スネイプはまるで攻撃されるのを予測していたかのように、素早く反応した。
鞄を捨て、ローブに手を突っ込み、杖を半分ほど振り上げた。そのときジェームズが叫んだ。

「エクスペリアームス!」

スネイプの杖が、3,4m宙を飛び、トンと小さな音を立てて背後の芝生に落ちた。
シリウスが吼えるような笑い声をあげた。

「インペディメンタ!」

シリウスがスネイプに杖を向けて唱えた。
スネイプは落ちた杖に飛びつく途中で、撥ね飛ばされた。
周りの生徒たちが振り向いて見た。何人かは立ち上がってそろそろと近づいてきた。
心配そうな顔をしている者もあれば、おもしろがっている者もいた。
スネイプは荒い息をしながら地面に横たわっていた。
ジェームズとシリウスが杖を上げてスネイプに近づいてきた。
途中でジェームズは、水辺にいる女の子たちを、肩越しにちらりと振り返った。ワームテールもいまや立ち上がり、よく見ようとルーピンの周りをじわじわ回り込み、意地汚い顔で眺めていた。

「試験はどうだった?スニベリー?」

ジェームズが聞いた。

「僕が見ていたら、こいつ、鼻を羊皮紙にくっつけてたぜ」

シリウスが意地悪く言った。

「大きな油染みだらけの答案じゃ、先生方は一語も読めないだろうな」

見物人の何人かが笑った。スネイプは明らかに嫌われ者だ。ワームテールが甲高い冷やかし笑いをした。
スネイプは起き上がろうとしたが、呪いがまだ効いている。見えない縄で縛られているかのように、スネイプはもがいた。

「いまに――見てろ」

スネイプは喘ぎながら、憎しみそのものという表情でジェームズを睨みつけた。

「覚えてろ!」

「なにを?」

シリウスが冷たく言った。

「何をするつもりなんだ?スニベリー?僕たちに鼻水でも引っかけるつもりか?」

スネイプは悪態と呪いを一緒くたに、次々と吐きかけたが、杖が3mも離れていては何の効き目もなかった。

「口が汚いぞ」

ジェームズが冷たく言った。

「スコージファイ!」

たちまち、スネイプの口から、ピンクのシャボン玉が吹き出した。
泡で口が覆われ、スネイプは吐き、噎せた。



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