The ounder of rphan X 
 -総受男装ハーマイオニー百合夢-




しかし、談話室に戻るとそこは満員で、笑い声や興奮した甲高い声で溢れていた。
フレッドとジョージが「悪戯専門店」の最近の商品を試して見せていたのだ。

「首なし帽子!」

ジョージが叫んだ。
フレッドが、見物人の前で、ピンクのふわふわした羽飾りがついた三角帽子を振って見せた。

「1個2ガリオンだよ。さあ、フレッドをご覧あれ!」

フレッドがにっこり笑って帽子をさっと被った。
一瞬、バカバカしい格好に見えたが、次の瞬間、帽子も首も消えた。
女子学生が数人、悲鳴をあげたが、他のみんなは大笑いしていた。

「はい、帽子を取って!」

ジョージが叫んだ。
するとフレッドの手が、肩の上あたりの何にもないように見えるところをもぞもぞ探った。
そして、首が再び現れ、脱いだピンクの羽飾り帽子を手にしていた。

「あの帽子、どういう仕掛けなのかしら?」

フレッドとジョージを眺めながら、ハーマイオニーは、一瞬宿題から気を逸らされていた。

「つまり、あれは一種の『透明呪文』には違いないけど、呪文をかけた物の範囲を越えたところまで『透明の場』を延長するっていうのは、かなり賢いわ……呪文の効き目があまり長持ちしないとは思うけど」

「もしかしたら、『透明呪文』は帽子だけにかかっていて、帽子の内側に『拡大呪文』をかけてある……とか?
そうしたら帽子のなかに頭をすっぽり入れられるし、見た目はああなる気がする」

サクヤがパッと思いついた考えを話すと、ハーマイオニーは「確かにそうね」とブツブツ呟いていた。
そのあいだ、ハリーは何も言わなかった。気分が悪かった。

「この宿題、明日やるよ」

ハリーは取り出したばかりの本をまた鞄に押し込みながら、ボソボソ言った。

「ええ、それじゃ、『宿題計画帳』に書いておいてね!」

ハーマイオニーが勧めた。

「忘れないために!」

ハリーとロンが顔を見合わせた。ハリーは鞄に手を突っ込み、「計画帳」を引っ張り出し、開くともなく開いた。

「あとに延ばしちゃダメになる!それじゃ自分がダメになる!」

ハリーがアンブリッジの宿題をメモすると、「計画帳」がたしなめた。
ハーマイオニーが「計画帳」に満足げに笑いかけた。

「僕、もう寝るよ」

ハリーは「計画帳」を鞄に押し込みながら、チャンスがあったらこいつを暖炉に放り込もうと心に刻んだ。

ハリーは、「首なし帽子」を被せようとするジョージをかわして、談話室を横切り、男子寮に続くひんやりと安らかな石の階段に辿り着いた。
また吐き気がした。蛇の姿を見た夜と同じような感じだった。
この気持ちの悪さがあるか、サクヤにも尋ねようと少し迷ったが、またあの騒がしい談話室に戻るのも、その中からサクヤを呼び出してロンやハーマイオニーの注意を引くのも嫌だった。
ちょっと横になれば治るだろう、とハリーは階段を上ることにした。

寝室のドアを開き、1歩足を踏み入れた途端、ハリーは激痛を感じた。
誰かが、頭のてっぺんに鋭い切れ込みを入れたかのようだった。
自分がどこにいるのかも、立っているのか横になっているのかもわからない。自分の名前さえわからなくなった。

狂ったような笑いが、ハリーの耳の中で鳴り響いた……こんなに幸福な気分になったのは久しぶりだ……歓喜、恍惚、勝利……すばらしい、すばらしいことが起きたのだ……。

「ハリー?ハリー?

誰かがハリーの顔を叩いた。
狂気の笑いが、激痛の叫びで途切れた。
幸福感が自分から流れ出していく……しかし笑いは続いた……。

ハリーは目を開けた。
そのとき、狂った笑い声がハリー自身の口から出ていることに気づいた。気づいた途端、声がやんだ。
ハリーは天井を見上げ、床に転がって荒い息を吐いていた。
額の傷痕がズキズキと疼いた。ロンが屈み込み、心配そうに覗き込んでいた。

「どうしたんだ?」

ロンが言った。

「僕……わかんない」

ハリーは身体を起こし、喘いだ。

「やつがとっても喜んでいる……とっても……」

「『例のあの人』が?」

「何かいいことが起こったんだ」

ハリーが呟くように言った。
ウィーズリーおじさんが蛇に襲われるところを見た直後と同じぐらい激しく震え、ひどい吐き気がした。

「何かやつが望んでいたことだ」

言葉が口をついて出てきた。
グリフィンドールの更衣室で、前にもそういうことがあったが、ハリーの口を借りて誰か知らない人がしゃべっているようだった。
しかも、それが真実だと、ハリーにはわかっていた。
ロンに吐きかけたりしないようにと、ハリーは大きく息を吸い込んだ。
こんな姿をディーンやシェーマスに見られなくて本当によかったと思った。

「サクヤが、何かを感じ取ったみたいで、君の様子も見てくるようにって言ったんだ」

ハリーを助け起こしながら、ロンが小声で言った。

「それに、ハーマイオニーも、君がスネイプに心を引っ掻き回されたあとだから、いまは防衛力が落ちてるだろうって言うんだ……でも、長い目で見れば、これって、役に立つんだろ?」

ハリーを支えてベッドに向かいながら、ロンはそうなのかなぁと疑わしげにハリーを見た。
ハリーは何の確信もないまま頷き、枕に倒れ込んだ。
ひと晩に何回も床に倒れたせいで身体中が痛む上、傷痕がまだちくちくと疼いていた。
「閉心術」への最初の挑戦は、心の抵抗力を強めるどころか、むしろ弱めたと思わないわけにはいかなかった。
そして、ヴォルデモート卿をこの14年間になかったほど大喜びさせた出来事は何だったのかと考えると、ぞくっと戦慄が走った。





>>To be continued

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