The ounder of rphan X 
 -総受男装ハーマイオニー百合夢-




一瞬、部屋の真ん中に炎が燃え上がり、その場に1枚の金色の羽がひらひらと舞い降りた。

「フォークスの警告じゃ」

ダンブルドアが空中で羽を捕まえながら言った。

「アンブリッジ先生が、君たちがベッドを抜け出したことに気づいたに違いない……ミネルバ、行って足止めしてくだされ――適当な作り話でもして――」

マクゴナガル先生が、タータンを翻して出ていった。

「あいつは、喜んでと言っておりますぞ」

ダンブルドアの背後で、気乗りしない声がした。
フィニアスと呼ばれた魔法使いの姿がスリザリン寮旗の前に戻っていた。

「私の曾々孫は、家に迎える客に関して、昔からおかしな趣味を持っていた」

「さあ、ここに来るのじゃ」

ダンブルドアがハリーとサクヤ、ウィーズリーたちを呼んだ。

「急いで。邪魔が入らぬうちに」

ハリーもウィーズリー兄弟妹きょうだいも、ダンブルドアの机の周りに集まった。
サクヤはハーマイオニーを短く抱き、頷き合ってからその輪に加わった。

「移動キーは使ったことがあるじゃろな?」

ダンブルドアの問いにみんなが頷き、手を出して黒ずんだヤカンに触れた。

「よかろう。では、3つ数えて……1……2……」

ダンブルドアが3つ目を数え上げるまでのほんの一瞬、ハリーはダンブルドアを見上げた――2人は触れ合うほど近くにいた――ダンブルドアの明るいブルーの眼差しが、移動キーからハリーの顔へと移った。
たちまち、ハリーの傷痕が灼熱した。
まるで傷口がまたパックリと開いたかのようだった――望んでもいないのに独りでに、恐ろしいほど強烈に、内側から憎しみが湧き上がってきた。
あまりの激しさに、ハリーはその瞬間、ただ襲撃することしか考えられなかった――噛みたい――2本の牙を目の前にいるこの男にグサリと刺してやりたい――。

「……3」

臍の裏がぐいっと引っ張られるのを感じた。
足下の床が消え、手がヤカンに貼りついている。急速に前進しながら、互いに身体がぶつかった。
色が渦巻き、風が唸る中を、前へ前へとヤカンがみんなを引っ張っていく……やがて、膝ががくっと折れるほどの勢いで、ハリーの足が地面を強く打った。
ヤカンが落ちてカタカタと鳴り、どこか近くで声がした。

「戻ってきた。血を裏切るガキどもが。父親が死にかけてるというのは本当なのか?」

出ていけ!

別の声が吼えた。
ハリーは急いで立ち上がり、あたりを見回した。
到着したのは、グリモールド・プレイス12番地の薄暗い地下の厨房だった。
明かりといえば、暖炉の火と消えかかった蝋燭1本だけだ。それが、孤独な夕食の食べ残しを照らしていた。
サクヤも立ち上がり、きょろきょろとあちこちを見ている。
無理もない話だった。彼女がこの館に来たのはこれが初めてなのだ。
クリーチャーは、ドアから玄関ホールへと出ていくところだったが、腰布をずり上げながら振り返り、毒を含んだ目つきでみんなを見た。
心配そうな顔のシリウスが、急ぎ足でやって来た。
ひげも剃らず、昼間の服装のままだ。その上、マンダンガスのような、どこか酒臭い饐えた臭いを漂わせていた。

「サクヤの事情はダンブルドアから聞いてる。こっちへ来い――それで、今夜はいったいどうしたんだ?」

サクヤの肩に手を置きながらみんなを見回し、シリウスが聞いた。

「フィニアス・ナイジェラスは、アーサーがひどい怪我をしたと言っていたが――」

「ハリーとサクヤに聞いて」

フレッドが言った。

「そうだ。俺もそれが聞きたい」

ジョージが言った。
双子とジニーがハリーたちを交互に見つめていた。
厨房の外の階段で、クリーチャーの足音が止まった。

「それは――」

サクヤと顔を見合わせ、ハリーが口を開いた。
マクゴナガルやダンブルドアに話すよりずっと厄介だった。

「僕は見たんだ――一種の――幻を……」

そしてハリーは、自分が見たことを全員に話して聞かせた。
ただ、話を変えて、蛇が襲ったとき、自分は蛇自身の目からではなく、傍で見ていたような言い方をした。
それについてはサクヤは何も口を挟まず、ハリーに話を合わせてくれた。
ロンはまだ蒼白だったが、ちらりとハリーを見たものの、同じように何も言わなかった。
話し終えても、フレッド、ジョージ、ジニーは、まだしばらくハリーやサクヤを見つめていた。
ハリーの気のせいか、3人がどこか非難するような目つきをしているように思えた。
そうだろう、僕が攻撃を目撃しただけでみんなが非難するのなら、そのとき自分は蛇の中にいたなんて言わなくてよかった。

「ママは来てる?」

フレッドがシリウスに聞いた。

「たぶんまだ、何が起こったかさえ知らないだろう」

シリウスが言った。

「アンブリッジの邪魔が入る前に君たちを逃がすことが大事だったんだ。いまごろはダンブルドアが、モリーに知らせる手配をしているだろう」

「聖マンゴに行かなくちゃ」

ジニーが急き込んで言った。
兄たちを見回したが、もちろんみんなパジャマ姿だ。

「シリウス、マントか何か貸してくれない?」

「まあ、待て。聖マンゴにすっ飛んで行くわけにはいかない」

シリウスが言った。

「俺たちが行きたいならむろん行けるさ。聖マンゴに」

フレッドが強情な顔をした。

「俺たちの親父だ!」

「アーサーが襲われたことを、病院から奥さんにも知らせていないのに、君たちが知っているなんて、じゃあ、どう説明するつもりだ?」

「そんなことどうでもいいだろ?」

ジョージがむきになった。

「よくはない。何百kmも離れたところの出来事をハリーやサクヤが見ているという事実に注意を引きたくない!」

シリウスが声を荒らげた。

「そういう情報を、魔法省がどう解釈するか、君たちにはわかっているのか?」

フレッドとジョージは、魔法省が何をどうしようが知ったことかという顔をした。
ロンは血の気のない顔で黙っていた。
ジニーが言った。

「誰かほかの人が教えてくれたかもしれないし……ハリーじゃなくて、どこか別のところから聞いたかもしれないじゃない」

「誰から?」

シリウスがもどかしげに言った。

「いいか、君たちの父さんは、騎士団の任務中に負傷したんだ。
それだけでも十分状況が怪しいのに、その上、子どもたちが事件直後にそれを知っていたとなれば、ますます怪しい。
君たちが騎士団に重大な損害を与えることにもなりかねない――」

「騎士団なんかクソ食らえ!」

フレッドが大声を出した。

「俺たちの親父が死にかけてるんだ!」

ジョージも叫んだ。

「君たちの父さんは、自分の任務を承知していた。
騎士団のためにも、君たちが事を台無しにしたら、父さんが喜ぶと思うか!」

シリウスも同じぐらいに怒っていた。

「まさにこれだ――だから君たちは騎士団に入れないんだ――君たちはわかっていない――世の中には死んでもやらなければならないことがあるんだ!」

「口で言うのは簡単さ。ここに閉じこもって!」

フレッドが怒鳴った。

「そっちの首は懸かってないじゃないか!」

シリウスの顔にわずかに残っていた血の気がさっと消えた。一瞬、フレッドをぶん殴りたいように見えた。
しかし、次に口を開いたとき、その声は決然として静かだった。
隣のサクヤがしげしげとシリウスを見つめているのをハリーは見た。

「つらいのはわかる。
しかし、我々全員が、まだ何も知らないかのように行動しなければならないんだ。
少なくとも、君たちの母さんから連絡があるまでは、ここにじっとしていなければならない。いいか?」

フレッドとジョージは、それでもまだ反抗的な顔だったが、ジニーは、手近の椅子に向かって2,3歩歩き、崩れるように座った。
ハリーがロンの顔を見ると、ロンは頷くとも肩をすくめるともつかないおかしな動きを見せた。ハリーとロンも座り、双子はそれからしばらくシリウスを睨みつけていたが、やがてジニーを挟んで座った。

「それでいい」

シリウスが励ますように言った。

「さあ、みんなで……みんなで何か飲みながら待とう。
アクシオ、バタービール!

シリウスが杖を上げて呪文を唱えると、バタービールが7本、食料庫から飛んできて、テーブルの上を滑り、シリウスの食べ残しを蹴散らし、7人の前でぴたりと止まった。みんなが飲んだ。
しばらくは暖炉の火がパチパチ爆ぜる音と、瓶をテーブルに置くコトリという音だけが聞こえた。




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