The ounder of rphan X 
 -総受男装ハーマイオニー百合夢-




「君のパパが」

ハリーたちの寮室の扉は開けられたままだった。そこからハリーの苦しそうな声が聞こえてきた。

「君のパパが……襲われた……」

「え?」

そう聞き返したのは、部屋から聞こえるロンの声だけではなかった。
ハーマイオニーも同じように声を上げ、サクヤを見上げた。
サクヤは苦い表情のまま、深刻そうに頷いた。

サクヤとハーマイオニーが部屋に辿り着いても、ディーンやシェーマス、それにロンも、誰も気がつかなかった。
ルームメイトたちは全員、ほとんど錯乱状態になっているハリーに釘付けだった。
ハリーは震えを抑えつけながら、必死になって訴え続けている。

「ロン、君のパパだよ!噛まれたんだ。重態だ。どこもかしこも血だらけだった……」

「おい、ハリー」

ロンが半信半疑で言った。

「君……君は夢を見てただけなんだ……」

「そうじゃない!」

ハリーは激しく否定した。肝心なのはロンにわかってもらうことだった。

「夢なんかじゃない……普通の夢じゃない……僕がそこにいたんだ。僕は見たんだ……僕がやったんだ……

「ハリーがやったんじゃない」

不安げにベッドを取り囲むディーンとシェーマスの間に、サクヤが割り込んだ。

「ハリーはただ、見ていただけなんだ。ハリーがやったんじゃない」

そう繰り返しながら、ハリーの腕を掴んでベッドから立たせようとしたが、ロンがそれを押し戻した。

「サクヤ、だめだよ!ハリーは病気なんだ。具合が悪いんだ……」

「僕、平気だ――」

ハリーが胸を波打たせ、喘ぎながら言った。

たしかにロンの言う通り、ハリーの状態はサクヤよりずっとひどく見えた。
ハリーも間違いなく真っ青な顔をしているし、全身が冷や汗でぐっしょりとしている。
ひどく冷えた手足は震え、その手を押し付けている額は、きっと燃えるように痛んでいるのだろう。
ベッドの端からは、ハリーが戻したものがツンとした臭いを放っていた。

「そうじゃないのよ、ロン」

今度はハーマイオニーが割り入って、辛抱強く言った。

「聞いたでしょう?ロン、あなたのパパが危ないのよ――」

「詳しいことは歩きながら話す。事態は一刻を争うんだ。
ハリー、立てる?急いで校長室に行こう――」

そう促すサクヤを、こんなに嬉しく思ったことはなかった。
いまハリーに必要なのは、「不死鳥の騎士団」のメンバーか、彼らに引き合わせてくれる誰かだ。小うるさく世話を焼いて役にも立たない薬を処方する人ではない。
ハリーは迷うことなくベッドから飛び降り、ガウンを着て、眼鏡を鼻にぐいっと押しつけた。


ハリー、ロン、サクヤ、ハーマイオニーは寮室を出ると、足早に談話室を横切った。
その間にも、時間を惜しむようにハリーは早口で捲くし立てた。

「ロン、君のパパが蛇に襲われたんだ。僕はそれを見てたんだ」

「見てたって、どういうこと?」

さっぱり訳が分からないという声で、ロンが言った。
ハーマイオニーもショックを受けたように口元を手で覆い、次の言葉を待っていた。

「どういうことなのかは、僕にも分からない……僕は眠ってたんだ。そしたらそこにいて……」

「夢に見たってことだろ?」

「違う!」

ハリーは腹が立った。
誰も分かってくれないのだろうか?
いや、理解者はここに1人いるじゃないか。彼女はハリーの身に何が起きたのか知っているようだった。彼女は分かっている。

「サクヤなら分かるだろ?あれは夢じゃなかった。そうだろ?
だって、僕は最初、まったく違う夢を見ていたんだ。バカバカしい夢を……そしたら、それが夢に割り込んできた……そうだろ?」

「あれは少なくとも、夢なんかじゃなかった」

サクヤは深刻な顔で、ロンとハーマイオニーにも分かるように話した。

「だって、オレはまだ起きてたんだ。
それなのに、急に目の前にその光景が現れて――蛇がロンのお父さんを襲った。ハリーの意識がそこにあることも感じてた。現実のことだと思う」

そこまで言って、廊下の後ろから自分たちを呼び止める声が聞こえた。
振り返ると、マクゴナガル先生が、タータンチェックのガウンを羽織り、骨ばった鼻柱に載った眼鏡を斜めに傾かせながら、あたふたと追いついてくるところだった。
ネビルの姿が見えないのは、先生が寮へ戻るように指示したからだろうか。

「いったいどうしたのですか?どこが痛むのですか?」

「ロンのパパなんです」

ハリーは再び急ぎ足で歩き出しながら、また同じ説明を繰り返さなくちゃいけないのかと苛立った。

「ウィーズリーおじさんが床で寝ていて、そしたら巨大な蛇に襲われたんです。血の海でした。おじさんが倒れて。
誰か、おじさんの居所を探さないと……ダンブルドア先生なら知っていますか?」

マクゴナガル先生は曲がった眼鏡の奥からハリーをじっと見つめていた。
まるで、自分の見ているものに恐怖を感じているような目だった。

「僕、嘘なんかついていない!狂ってない!」

ハリーは先生に訴えた。叫んでいた。

「ハリーの言ってることは本当です。オレも感じ取りました。きっと現実に起こったことです。
急がないと、ウィーズリーさんが危ないんです」

サクヤがハリーに続いて、辛抱強く繰り返した。

「ええ、信じますよ。ポッター、フェリックス」

マクゴナガル先生が短く答えた。

「校長先生が間違いなくお目にかかってくれるでしょう」





>>To be continued

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