The ounder of rphan X 
 -総受男装ハーマイオニー百合夢-




1時間後、ハリーは「ストップ」と叫んだ。

「みんな、とってもよくなったよ」

ハリーは全員に向かってにっこりした。

「休暇から戻ったら、何か大技を始められるだろう――守護霊とか」

みんなが興奮でざわめいた。
いつものように数人ずつ固まって部屋を出ていくとき、ほとんどのメンバーがハリーに「メリー・クリスマス」と挨拶した。
楽しい気分で、ハリーはサクヤロン、ハーマイオニーと一緒にクッションを集め、きちんと積み上げた。
サクヤとハーマイオニーがロンを伴って、ひと足先に部屋を出た。
ハリーは少しあとに残ることにした。チョウがまだ部屋にいたので、チョウから「メリー・クリスマス」と言ってもらいたかったからだ。

「ううん、あなた、先に帰って」

チョウが友達のマリエッタにそう言うのが聞こえた。
ハリーは心臓が飛び上がって喉仏のあたりまで上がってきたような気がした。

ハリーは積み上げたクッションをまっすぐにしているふりをした。
間違いなく2人っきりになったと意識しながら、ハリーはチョウが声をかけてくるのを待った。
ところが、聞こえたのは大きくしゃくり上げる声だった。

振り向くと、チョウが部屋の真ん中で涙に頬を濡らして立っていた。

「どうし――?」

ハリーはどうしていいのかわからなかった。
チョウはただそこに立ち尽くし、さめざめと泣いていた。

「どうしたの?」

ハリーはおずおずと聞いた。
チョウは首を振り、袖で目を拭った。

「ごめん――なさい」

チョウが涙声で言った。

「たぶん……ただ……いろいろ習ったものだから……私……もしかしてって思ったの……彼がこういうことをみんな知っていたら……死なずにすんだろうにって」

ハリーの心臓はたちまち落下して、元の位置を通り過ぎ、臍のあたりに収まった。
そうだったのか。チョウはセドリックの話がしたかったんだ。

「セドリックは、みんな知っていたよ」

ハリーは重い声で言った。

「とても上手だった。そうじゃなきゃ、あの迷路の中心まで辿り着けなかっただろう。
だけど、ヴォルデモートが本気で殺すと決めたら、誰も逃げられやしない」

チョウはヴォルデモートの名前を聞くとヒクッと喉を鳴らしたが、たじろぎもせずにハリーを見つめていた。

あなたは、ほんの赤ん坊だったときに生き残ったわ」

チョウが静かに言った。

「ああ、そりゃ」

ハリーはうんざりしながらドアのほうに向かった。

「どうしてなのか、僕にはわからない。誰にもわからないんだ。
だから、そんなことは自慢にはならないよ」

「お願い、行かないで!」

チョウはまた涙声になった。

「こんなふうに取り乱して、本当にごめんなさい……そんなつもりじゃなかったの……」

チョウはまたヒクッとしゃくり上げた。
真っ赤に泣き腫らした目をしていても、チョウは本当にかわいい。
ハリーは心底惨めだった。「メリー・クリスマス」と言ってもらえたら、それだけで幸せだったのに。

「あなたにとってはどんなに酷いことなのか、わかってるわ」

チョウはまた袖で涙を拭った。

「私がセドリックのことを口にするなんて。あなたは彼の死を見ているというのに……。
あなたは忘れてしまいたいのでしょう?」

ハリーは何も答えなかった。
たしかにそうだった。しかし、そう言ってしまうのは残酷だ。

「あなたは、と、とってもすばらしい先生よ」

チョウは弱々しく微笑んだ。

「私、これまでは何にも失神させられなかったの」

「ありがとう」

ハリーはぎごちなく答えた。2人はしばらく見つめ合った。
ハリーは走って部屋から逃げ出したいという焼けるような思いと裏腹に、足がまったく動かなかった。

「ヤドリギだわ」

チョウがハリーの頭上を指差して、静かに言った。

「うん」

ハリーは口がカラカラだった。

「でもナーグルだらけかもしれない」

「ナーグルってなあに?」

「さあ」

ハリーが答えた。
チョウが近づいてきた。ハリーの脳みそは失神術にかかったようだった。

「ルーニーに、あ、ルーナに聞かないと」

チョウは啜り泣きとも笑いともつかない不思議な声をあげた。
チョウはますますハリーの近くにいた。鼻の頭のそばかすさえ数えられそうだ。

「あなたがとっても好きよ、ハリー」

ハリーは何も考えられなかった。
ぞくぞくした感覚が体中に広がり、腕が、足が、頭が痺れていった。
チョウがこんなに近くにいる。睫毛に光る涙の1粒1粒が見える……。




_

( 133/190 )
[prev] [next]
[back]
[しおりを挟む]



- ナノ -