The ounder of rphan X 
 -総受男装ハーマイオニー百合夢-




「ところが、その晩、なんもかもだめになった」

「どういうこと?」

ロンが急き込んだ。

「まあ、さっき言ったように、連中は一緒に暮らすようにはできてねえ。巨人てやつは」

ハグリッドは悲しそうに言った。

「あんなに大きな集団ではな。どうしても我慢できねえんだな。数週間ごとにお互いに半殺しの目に遭わせる。
男は男で、女は女で戦うし、昔の種族の残党がお互いに戦うし、そこまでいかねえでも、それ食いもんだ、やれ一番いい火だ、寝る場所だって、小競り合いだ。
自分たちが絶滅しかかっているっちゅうのに。お互いに殺し合うのはやめるかと思えば……」

ハグリッドは深いため息をついた。

「その晩、戦いが起きた。俺たちは洞穴の入口から谷間を見下ろして、そいつを見た。何時間も続いた。
その騒ぎときたら、ひでえもんだった。そんで、太陽が昇ったときにゃ、雪が真っ赤で、やつの頭が湖の底に沈んでいたわ」

「誰の頭が?」

ハーマイオニーが息を呑んだ。

「カーカスの」

ハグリッドが重苦しく言った。

「新しいガーグがいた。ゴルゴマスだ」

ハグリッドがフーッとため息をついた。

「いや、最初のガーグと友好的に接触して2日後に、かしらが新しくなるたぁ思わなんだ。
そんで、どうもゴルゴマスは俺たちの言うことに興味がねえような予感がした。そんでも、やってみなけりゃなんねえ」

「そいつのところに話しにいったの?」

ロンがまさかという顔をした。

「仲間の巨人の首を引っこ抜いたのを見たあとなのに?」

「むろん、俺たちは行った」

ハグリッドが言った。

「はるばる来たのに、たった2日で諦められるもんか!
カーカスにやるはずだった次の贈り物を持って、俺たちは下りていった」

「口を開く前に、俺はこりゃぁだめだと思った。
あいつはカーカスの兜を被って座っててな、俺たちが近づくのをニヤニヤして見とった。でっかかったぞ。
そこにいた連中の中でも一番でっけえうちに入るな。髪とお揃いの黒い歯だ。そんで骨のネックレスで、ヒトの骨のようなのも何本かあったな。
まあ、とにかく俺はやってみた――ドラゴンの革の大きな巻物を差し出したのよ――そんで、こう言った。
『巨人のおかしらへの贈り物――』次の瞬間、気がつくと、足を捕まれて逆さ吊りだった。やつの仲間が2人、俺をむんずとつかんでいた」

ハーマイオニーが両手でパチンと口を覆った。

そんなのからどうやって逃れたの?」

ハリーが聞いた。

「オリンペがいなけりゃ、だめだったな」

ハグリッドが言った。

「オリンペが杖を取り出して、俺が見た中でも一番の早業で呪文を唱えた。実に冴えとったわ。
俺をつかんでた2人の両目を、『結膜炎の呪い』で直撃だ。で、2人はすぐ俺を落っことした。
だが、さあ、厄介なことになった。やつらに不利な魔法を使ったわけだ。巨人が魔法使いを憎んどるのはまさにそれなんだ。逃げるしかねえ。
そんで、どうやったってもう、連中の居住地に堂々と戻ることはできねえ」

「うわあ、ハグリッド」

ロンがぼそりと言った。

「じゃ、3日間しかそこにいなかったのに、どうしてここに帰るのにこんなに時間がかかったの?」

ハーマイオニーが聞いた。

「3日でそっから離れたわけじゃねえ!」

ハグリッドが憤慨したように言った。

「ダンブルドアが俺たちにお任せなすったんだ!」

「だって、いま、どうやったってそこには戻れなかったって言ったわ!」

「『堂々と戻ることできない』って言ったね?」

サクヤが言葉尻を拾った。

「つまり、こっそりまた行ったの?」

ハグリッドがコガネムシのような目をキラッとさせて頷いた。

「昼日中はだめだった。そうとも。ちいっと策を練り直す羽目になった。
目立たねえように、2,3日洞穴に閉じこもって様子を見てたんだ。しかし、どうも形勢はよくねえ」

「ゴルゴマスはまた首を刎ねたの?」

ハーマイオニーは気味悪そうに言った。

「いいや」

ハグリッドが言った。

「そんならよかったんだが」

「どういうこと?」

「まもなく、やつが全部の魔法使いに逆らっていたっちゅうわけではねえことがわかった――俺たちにだけだった」

「死喰い人?」

ハリーの反応は早かった。

「そうだ」

ハグリッドが暗い声で言った。

「ガーグに贈り物を持って、毎日2人が来とったが、やつは連中を逆さ吊りにはしてねえ」

「どうして死喰い人だってわかったの?」

ロンが聞いた。

「連中の1人に見覚えがあったからだ」

ハグリッドが唸った。

「マクネア、憶えとるか?バックビークを殺すのに送られてきたやつだ。
殺人鬼よ、やつは。ゴルゴマスとおんなじぐれえ殺すのが好きなやつだし、気が合うわけだ」

「それで、マクネアが『例のあの人』の味方につくようにって、巨人を説き伏せたの?」

ハーマイオニーが絶望的な声で言った。

「ドゥ、ドゥ、ドゥ。急くな、ヒッポグリフよ。話は終わっちゃいねえ!」

ハグリッドが憤然として言った。
最初は、4人に何も話したくないはずだったのに、いまやハグリッドは、かなり楽しんでいる様子だった。

「オリンペと俺とでじっくり話し合って、意見が一致した。
ガーグが『例のあの人』に肩入れしそうな様子だからっちゅうて、みんながみんなそうだとはかぎらねえ。
そうじゃねえ連中を説き伏せなきゃなんねえ。ゴルゴマスをガーグにしたくなかった連中をな」

「どうやって見分けたんだい?」

ロンが聞いた。

「そりゃ、しょっちゅうこてんぱんに打ちのめされてた連中だろうが?」

ハグリッドは辛抱強く説明した。

「ちーっと物のわかる連中は、俺たちみてえに谷の周りの洞穴に隠れて、ゴルゴマスに出会わねえようにしてた。
そんで、俺たちは、夜のうちに洞穴を覗いて歩いて、その連中を説得してみようと決めたんだ」

「巨人を探して、暗い洞穴を覗いて回ったの?」

ロンは恐れと尊敬の入り交じった声で聞いた。

「いや、俺たちが心配したのは、巨人のほうじゃねえ」

ハグリッドが言った。

「むしろ、死喰い人のほうが気になった。
ダンブルドアが、できれば死喰い人にはかかわるなと、前々から俺たちにそう言いなすった。
ところが、連中は俺たちがそのあたりにいることを知っていたから厄介だった――大方、ゴルゴマスが連中に俺たちのことを話したんだろう。
夜、巨人が眠っている間に俺たちが洞穴に忍び込もうとしとったとき、マクネアのやつらは俺たちを探して山ん中をこっそり動き回っちょったわ。
オリンペがやつらに飛びかかろうとするのを止めるのに苦労したわい」

ハグリッドのぼうぼうとしたひげの口元がきゅっと持ち上がった。

「オリンペはさかんに連中を攻撃したがってな……怒るとすごいぞ、オリンペは……そうとも、火のようだ……うん、あれがオリンペのフランス人の血なんだな……」

ハグリッドは夢見るような目つきで暖炉の火を見つめた。
ハリーは、30秒間だけハグリッドが思い出に浸るのを待ってから、大きな咳払いをした。



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