The ounder of rphan X 
 -総受男装ハーマイオニー百合夢-




ハリーは男子寮の階段を全速力で駆け上がり、トランクから「透明マント」と「忍びの地図」を取ってきた。
超スピードだったので、ハーマイオニーがスカーフと手袋を着け、お手製の凸凹したしもべ妖精帽子を被って、サクヤに背中を押されて女子寮から飛び出してくる5分前には、ハリーもロンもとっくに出かける準備ができていた。

「だって、外は寒いわよ!」

ロンが遅いぞとばかりに舌打ちしたので、ハーマイオニーが言い訳した。
4人は肖像画の穴を這い出し、急いで透明マントに包まった。
――ロンは背がぐんと伸びて、屈まないと両足が見えるほどだった――それから、時々立ち止まっては、フィルチやミセス・ノリスがいないかどうか地図で確かめ、ゆっくり、慎重にいくつもの階段を下りた。
運のいいことに、「ほとんど首無しニック」以外は誰も見かけなかった。
ニックはするする動きながら、なんとはなしに鼻歌を歌っていたが、なんだか「ウィーズリーこそ我が王者」に似た節なのがいやだった。
4人は玄関ホールを忍び足で横切り、静まり返った雪の校庭に出た。
行く手に四角い金色の小さな灯りと、小屋の煙突から煙がくるくる立ち昇るのが見え、ハリーは心が躍った。
ハリーが足を速めると、あとの3人は押し合いへし合いぶつかり合いながらあとに続いた。
だんだん深くなる雪を夢中でザクザク踏みしめながら、4人はやっと小屋の戸口に立った。
ハリーが拳で木の戸を三度叩くと、中で犬が狂ったように吠えはじめた。

「ハグリッド。僕たちだよ!」

ハリーが鍵穴から呼んだ。

「よう、来たか!」

どら声がした。
4人はマントの下で、互いににっこりした。
ハグリッドの声の調子で、喜んでいるのがわかった。

「帰ってからまだ3秒と経ってねえのに……ファング、どけ、どけ……どけっちゅうに、このバカタレ……」

閂が外され、扉がギーッと開き、ハグリッドの頭が隙間から現れた。
ハーマイオニーが悲鳴をあげた。

「おい、おい、静かにせんかい!」

ハグリッドが4人の頭越しにあたりをギョロギョロ見回しながら、慌てて言った。

「例のマントの下か?よっしゃ、入れ、入れ!」

狭い戸口を4人でぎゅうぎゅう通り抜け、ハグリッドの小屋に入ると、4人は透明マントを脱ぎ捨て、ハグリッドに姿を見せた。

「ごめんなさい!」

ハーマイオニーが喘ぐように言った。

「私、ただ――まあ、ハグリッド!

それ、いったいどうし――?」

「なんでもねえ。なんでもねえったら!」

サクヤの驚いた声を遮り、ハグリッドは慌ててそう言うと、戸を閉め、急いでカーテンを全部閉めた。
しかし、ハーマイオニーは驚愕してハグリッドを見つめ続けた。

ハグリッドの髪はべっとりと血で固まり、顔は紫色やどす黒い傷だらけで、腫れ上がった左目が細い筋のように見える。
顔も手も切り傷だらけで、まだ血が出ているところもある。そろりそろりと歩く様子から、ハリーは肋骨が折れているのではないかと思った。
たしかに、いま旅から帰ったばかりらしい。
分厚い黒の旅行マントが椅子の背に掛けてあり、小さな子どもなら数人運べそうな雑嚢が戸のそばに立て掛けてあった。
ハグリッド自身は、普通の人の2倍はある体で、足を引きずりながら暖炉に近づき、銅のヤカンを火にかけていた。

「いったい何があったの?」

ハリーが問い詰めた。
ファングは4人の周りを跳ね回り、顔を舐めようとしていた。

「言ったろうが、なんでもねえ

ハグリッドが断固として言い張った。

「茶、飲むか?」

「何でもないはずないよ」

ロンが言った。

「ひどい状態だぜ!」

「言っとるだろうが、ああ、大丈夫だ」

ハグリッドは上体を起こし、4人のほうを見て笑いかけたが、顔をしかめた。

「いやはや、おまえさんたちにまた会えてうれしいぞ――夏休みは、楽しかったか?え?」

「ハグリッド、襲われたんだろう!」

ロンが言った。

「何度も言わせるな。なんでもねえったら!」

ハグリッドが頑として言った。

「僕たち4人のうち誰かが、ひき肉状態の顔で現れたら、それでも何でもないって言うかい?」

ロンが突っ込んだ。

「マダム・ポンフリーのところに行くべきだわ、ハグリッド」

ハーマイオニーが心配そうに言った。

「ひどい切り傷もある――そうだ、マートラップの触手液はどうかな――」

サクヤが言った。

「自分で処置しとる。ええか?」

ハグリッドがみんなの言い分を抑えつけるように言った。

ハグリッドは小屋の真ん中にある巨大な木のテーブルまで歩いていき、置いてあった布巾をぐいと引いた。
その下から、車のタイヤより少し大きめの、血の滴る緑がかった生肉が現れた。

「まさか、ハグリッド、それ、食べるつもりじゃないよね?」

ロンはよく見ようと身体を乗り出した。

「毒があるみたいに見える」

「それでええんだ。ドラゴンの肉だからな」

ハグリッドが言った。

「それに、食うために手に入れたわけじゃねえ」

ハグリッドは生肉を摘み上げ、顔の左半分にピタッと貼りつけた。
緑色がかった血が顎ひげに滴り落ち、ハグリッドは気持ちよさそうにウーッと呻いた。

「楽になったわい。こいつぁ、ずきずきに効く」

「それじゃ、何があったのか、話してくれる?」

ハリーが聞いた。

「できねえ、ハリー、極秘だ。漏らしたらクビになっちまう」

「ハグリッド、巨人に襲われたの?」

ハーマイオニーが静かに聞いた。
ドラゴンの生肉がハグリッドの指からずれ落ち、グチャグチャとハグリッドの胸を滑り落ちた。

「巨人?」

ハグリッドは生肉がベルトのところまで落ちる前に捕まえ、また顔にピタッと貼りつけた。

「誰が巨人なんぞと言った?
おまえさん、誰と話をしたんだ?誰が言った?俺が何したと――誰が俺のその――なんだ?」

「そう思っただけよ」

ハーマイオニーが謝るように言った。

「ほう、そう思っただけだと?」

ハグリッドは、生肉で隠されていないほうの目で、ハーマイオニーを厳しく見据えた。

「なんて言うか……見え見えだし」

ロンが言うと、ハリーとサクヤが頷いた。
ハグリッドは4人をじろりと睨むと、フンと鼻を鳴らし、生肉をテーブルの上に放り投げ、ビービー鳴っているヤカンのほうにのっしのっしと歩いていった。

「おまえさんらみてえな小童は初めてだ。必要以上に知りすぎとる」

ハグリッドは、バケツ形マグカップ4個に煮立った湯をバシャバシャ注ぎながら、ぶつくさ言った。

「誉めとるわけじゃあねえぞ。
知りたがり屋、とも言うな。お節介とも」

しかし、ハグリッドのひげがひくひく笑っていた。

「それじゃ、巨人を探していたんだね?」

ハリーはテーブルに着きながらニヤッと笑った。
ハグリッドは紅茶を4人の前に置き、腰を下ろして、また生肉を取り上げるとピタッと顔に戻した。



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