The founder of orphan X
-総受男装ハーマイオニー百合夢-
重い雲に切れ目ができたのは、夕方のことだった。
オレンジ色の差し込む光は眩しくて清々しい。
明日晴れるかな、とサクヤが期待をこめて言うと、まだわからないわとハーマイオニーは生真面目な顔で答えた。
「最近、天気が変わりやすいから…。多少天気を操る魔法はあるけど、小規模すぎてやっぱりダメよね。晴れるように祈るしかないわ」
実力行使も辞さないハーマイオニーに彼女らしいなと肩をすくめながら、サクヤはハーマイオニーを散歩に誘った。
一足先に玄関を出たサクヤは、階段の上から辺りを見回した。
雨のあがったホグワーツは美しい。キラッキラッと水滴を反射する芝生。濡れた木々や建物は色濃く、ひんやりして香ばしい森林の匂いが遠くから風に運ばれてくる。
ふくろう小屋に向かって戯れに「オークル!」と呼んでみると、しばらくして大きな影がこちらに飛んできた。
大きな翼を広げてサクヤの腕に降り立つオークルは、堂々としていていつもの威厳を取り戻していた。一年生の頃から飼っているふくろうは、胸を張って、穏やかな信頼を示した瞳でサクヤを見つめ返す。
「やっぱ、かっこいいな。オークルは」
嘴を撫でてやると、くすぐったそうに、誇らしげに喉を鳴らす。そして愛情をこめて甘噛みすると、オークルは茶色い翼を広げ、サクヤの腕から飛び立っていった。
自由に空を飛ぶふくろうは悠々として、遠くの森に向かっていく。おそらく狩りでもするのだろうか。小さくなっていく後姿を眺めて、ふとオークルもいつかいなくなるのかなぁと思った。けれど…寂しくても、オークルと過ごした日々はなくならない。サクヤの中に永遠に残っていく。
残っていくのだ。
ぼんやり立ち尽くしていると「サクヤ」と名前を呼ばれた。
振り向くと、ハーマイオニーが畳んだ傘を片手に歩いてきていた。
急ぎ足で芝生を歩いてくる恋人に、サクヤの顔に零れるような笑みが浮かんだ。
サクヤの胸の奥は、いつかのように純粋で、とても暖かかった。
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長雨の下で | くろき。
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=17792969
あったかもしれない、ハルサクのお話……管理人への誕生日プレゼントとして書いていただきました……!
本当に本当に、ありがとうございました!
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