The ounder of rphan X 
 -総受男装ハーマイオニー百合夢-




スリザリン・チームが並んで待っていた。選手も王冠形の銀バッジを着けている。
新キャプテンのモンタギューはダドリー・ダーズリー系の体型で、巨大な腕は毛むくじゃらの丸ハムのようだ。
その後ろにのっそり控えるクラッブとゴイルも、ほとんど同じくらいでかく、バカまる出しの瞬きをしながら、新品のビーター棍棒を振り回していた。
マルフォイはプラチナ・ブロンドの髪を輝かせて、その脇に立っていた。
ハリーと目が合うと、ニヤリとして、胸の王冠形バッジを軽く叩いて見せた。

「キャプテン同士、握手」

審判のマダム・フーチが号令をかけ、アンジェリーナとモンタギューが歩み寄った。
アンジェリーナは顔色ひとつ変えなかったが、モンタギューがアンジェリーナの指を砕こうとしているのがハリーにはわかった。

「控えの選手は下がって。
箒に跨って……」

サクヤが下がると、マダム・フーチがホイッスルを口にくわえ、吹き鳴らした。
ボールが放たれ、14人の選手が一斉に飛翔した。
ロンがゴールポストのほうに勢いよく飛び去るのを、ハリーは横目で捕らえた。
ハリーはブラッジャーをかわしてさらに高く飛び、金色の煌きを探して目を凝らし、フィールドを大きく回りはじめた。
ピッチの反対側で、ドラコ・マルフォイがまったく同じ動きをしていた。

「さあ、ジョンソン選手――ジョンソンがクアッフルを手にしています。なんというよい選手でしょう。
僕はもう何年もそう言い続けているのに、あの女性はまだ僕とデートをしてくれなくて――」

ジョーダン!

マクゴナガル先生が叱りつけた。

「――ほんのご愛嬌ですよ、先生。盛り上がりますから――そして、アンジェリーナ選手、ワリントンをかわしました。モンタギューを抜いた。
そして――アイタッ――クラッブの打ったブラッジャーに後ろからやられました……モンタギューがクアッフルをキャッチ。
モンタギュー、ピッチをバックします。そして――ジョージ・ウィーズリーからいいブラッジャーが来た。
ブラッジャーが、それっ、モンタギューの頭に当たりました。モンタギュー、クアッフルを落とします。ケイティ・ベルが拾った。
グリフィンドールのケイティ・ベル、アリシア・スピネットにバックパス。スピネット選手、行きます――」

リー・ジョーダンの解説が、競技場に鳴り響いた。
耳元で風がヒューヒュー鳴り、観衆が叫び、野次り、歌う喧騒の中で、ハリーはそれを聞き取ろうと必死で耳を傾けていた。

「――ワリントンをかわした。ブラッジャーをかわした――危なかった、アリシア――観客が沸いています。お聞きください。この歌は何でしょう?」

リーが歌を聞くのに解説を中断したとき、スタンドの緑と銀のスリザリン陣営から、大きく、はっきりと歌声が立ちあがった。

♪ウィーズリーは守れない 万に1つも守れない
だからスリザリンは歌いたい ウィーズリーこそ我が王者

♪ゴミ箱生まれのウィーズリー クアッフルはいつでも入れ放題
ウィーズリーがいれば我らが勝者 ウィーズリーこそ我が王者

「――そしてアリシアからアンジェリーナにパスが返った」

リーが叫んだ。
ハリーはいま聞いた歌に腸が煮えくり返る思いで、軌道を逸れてしまった。
歌が聞こえないようにリーが声を張りあげているのがわかった。

「それ行け、アンジェリーナ――あとはキーパーさえ抜けば!――シュートしましたシュー――ぁぁぁー……」

スリザリンのキーパー、ブレッチリーが、ゴールを守った。
クアッフルをワリントンに投げ返し、ワリントンがボールを手に、アリシアとケイティの間をジグザグに縫って猛進した。
ワリントンがロンに迫るに従って、下からの歌声がだんだん大きくなった。

♪ウィーズリーは守れない 万に1つも守れない
だからスリザリンは歌いたい ウィーズリーこそ我が王者

ハリーは我慢できずにスニッチを探すのをやめ、ファイアボルトの向きを変えて、ピッチの一番向こう端で、3つのゴールポストの前に浮かんでいる、独りぼっちのロンの姿を見た。
ちらりと見やると、控室からサクヤも身を乗り出して見守っている。
ぽつんと心許なさそうに浮かぶロンに向かって、小山のようなワリントンが突進していく。

「――そして、クアッフルはワリントンの手に。ワリントン、ゴールに向かう。
ブラッジャーはもはや届かない。前方にはキーパーただ1人――」

スリザリンのスタンドから、大きく歌声がうねった。

♪ウィーズリーは守れない 万に1つも守れない……

「――さあ、グリフィンドールの新人キーパーの初勝負です。
ビーターのフレッドとジョージの弟、そしてチーム期待の新星、ウィーズリー――行けっ、ロン!」

しかし、歓喜の叫びはスリザリン側からあがった。
ロンは両腕を広げ、がむしゃらに飛びついたが、クアッフルはその両腕の間を抜けて上昇し、ロンの守備する中央の輪のど真ん中を通過した。

「スリザリンの得点!」

リーの声が、観衆の歓声とブーイングに混じって聞こえてきた。

「10対0でスリザリンのリード――運が悪かった、ロン」

スリザリン生の歌声が一段と高まった。

♪ゴミ箱生まれのウィーズリー クアッフルはいつでも入れ放題……

「――そしてボールは再びグリフィンドールに戻りました。
ケイティ・ベル、ピッチを力強く飛んでおります――」

いまや耳を劈くばかりの歌声で、解説の声はほとんど掻き消されていたが、リーは果敢に声を張りあげた。

♪ウィーズリーがいれば我らが勝者 ウィーズリーこそ我が王者……

「ハリー!歌なんか気にするな!探せー!

サクヤが控室から、柱をバシバシと叩きながら叫んでいる。
気がつくと、ハリーは、もう1分以上空中に静止して、スニッチがどこにあるかなど考えもせずに、試合の運びに気を取られていた。
ケイティを追って上昇し、ハリーのそばを飛びながら、アンジェリーナも絶叫した。

動いて、動いて!

たいへんだ、とハリーは急降下し、再びピッチを回りはじめた。
あたりに目を凝らし、いまや競技場を揺るがすほどの大コーラスを無視しようと努めた。

♪ウィーズリーこそ我が王者 ウィーズリーこそ我が王者……

どこを見てもスニッチの影すらない。
マルフォイもハリーと同じく、まだ回り続けている。
ピッチの周囲を互いに反対方向に回りながら、中間地点ですれ違ったとき、ハリーはマルフォイが高らかに歌っているのを聞いた。

♪ゴミ箱生まれのウィーズリー……

「――そして、またまたワリントンです」

リーが大音声で言った。

「ピュシーにパス。ピュシーがスピネットを抜きます。
さあ、いまだ、アンジェリーナ、君ならやれる――やれなかったか――しかし、フレッド・ウィーズリーからのナイスブラッジャー、おっと、ジョージ・ウィーズリーか。ええい、どっちでもいいや。とにかくどちらかです。
そしてワリントン、クアッフルを落としました。
そしてケイティ・ベル――あ――これも落としました――さて、クアッフルはモンタギューが手にしました。
スリザリンのキャプテン、モンタギューがクアッフルを取り、ピッチをゴールに向かいます。
行け、行くんだ、グリフィンドール、やつをブロックしろ!」

ハリーはスリザリンのゴールポストの裏に回り、ピッチの端をブンブン飛び、ロンのいる側の端で何が起こっているか絶対に見ないように我慢した。
スリザリンのキーパーの脇を急速で通過したとき、キーパーのブレッチリーが観衆と一緒に歌っているのが聞こえた。

♪ウィーズリーは守れない……

「――さあ、モンタギューがアリシアをかわしました。
そしてゴールにまっしぐら。止めるんだ!ロン!」

結果は見なくてもわかった。
グリフィンドール側から沈痛な呻き声が聞こえ、同時にスリザリン側から新たな歓声と拍手が湧いた。
下を見ると、パグ犬顔のパンジー・パーキンソンが、観客席の最前列でピッチに背を向け、スリザリンのサポーターの喚くような歌声を指揮していた。

♪だからスリザリンは歌いたい ウィーズリーこそ我が王者……

だが、20対0なら平気だ。
グリフィンドールが追い上げるか、スニッチをつかむか、時間はまだある。
2,3回ゴールを決めれば、いつものペースでグリフィンドールのリードだ。
ハリーは自分を納得させながら、何かキラッと光ったものを追って他の選手の間を縫い、すばしっこく飛んだ。
光ったのは、結局モンタギューの腕時計だった。

しかし、ロンはまた2つもゴールを許した。
スニッチを見つけたいというハリーの気持ちが、いまや激しい焦りに変わっていた。
すぐにでも捕まえて、早くゲームを終らせなくては。

「――さあ、ケイティ・ベルがピュシーをかわした。モンタギューをすり抜けた。いい回転飛行だ、ケイティ選手。
そしてジョンソンにパスした。アンジェリーナ・ジョンソンがクアッフルをキャッチ。ワリントンを抜いた。ゴールに向かった。
そーれ行け、アンジェリーナ――グリフィンドール、ゴール!40対10、40対10でスリザリンのリード。そしてクアッフルはピュシーへ……」

ルーナの滑稽な獅子頭帽子が、グリフィンドールの歌声の最中に吠えるのが聞こえ、ハリーは元気づいた。
たった30点差だ。平気、平気。サクヤが出る幕もなく、すぐに挽回だ。
クラッブが打ったブラッジャーがハリーめがけて突進してきたのをかわし、ハリーは再びスニッチを探して、ピッチの隅々まで必死に目を走らせた。
万が一マルフォイが見つけた素振りを示せばと、マルフォイからも目を離さなかったが、マルフォイもハリーと同じく、ピッチを回り続けるばかりで、何の成果もないようだ……。

「――ピュシーがワリントンにパス。
ワリントンからモンタギュー、モンタギューからピュシーに戻す――ジョンソンがインターセプト、クアッフルを奪いました。
ジョンソンからベルへ。いいぞ――あ、よくない――ベルが、スリザリンのゴイルが打ったブラッジャーにやられた。ボールはまたピュシーの手に……」

♪ゴミ箱生まれのウィーズリー クアッフルはいつでも入れ放題
ウィーズリーがいれば我らが勝者……



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