The ounder of rphan X 
 -総受男装ハーマイオニー百合夢-




ネビルとサクヤ、ロンとハーマイオニーの2組は、相手を順に変えて練習に取り組んでいた。
ロンのいつもの、「そんなに言うなら、自分でやってみろよ」の言葉を受けて、いまはサクヤとハーマイオニーが対峙している。
2人が組になって、何か協力することこそあれど、杖を向け合うのはこれが初めてのことだった。

「なんか、変な感じ」

サクヤが杖を構えてニヤッと笑った。
ロンとネビルが見守る中、ハーマイオニーもサクヤに挑戦的に笑い返したところで、2人の杖が同時に動いた。

「エクスペリアームス!」

火花がバチンと迸った。呪文同士が空中でぶつかったのだ。
これはお互いの狙う先がしっかり一致していないとできないことだ。
ハーマイオニーが面食らっているあいだに、サクヤが再び「武装解除呪文」を唱えた――しかし、すんでのところでハーマイオニーは盾の呪文を唱え、それを防いだ。

「武装解除の呪文しか使っちゃいけないって決まりはないでしょう?」

ハーマイオニーが得意げにそう言うと、今度は彼女から「エクスペリアームス」を唱えた。
サクヤは浮遊呪文を直接閃光にぶつけることで軌道を逸らして、呪文を阻止した。

「すっげぇや」

サクヤが、ふう、と前髪を払ったところで、ロンは思わず声を漏らしていた。
先ほどまで不貞腐れていたこともとっくに忘れてしまったようだった。
てっきり経験豊富なサクヤの圧勝だと思っていたのに、ハーマイオニーはそれに食らいつく形で渡り合っている。
何度か呪文の応酬を繰り返したのち、サクヤが杖の振りにフェイントをかけたことでハーマイオニーの防御のタイミングをずらし、杖を取り上げたことでついに決着がついた。
ネビルは終始、何が起こっていたのかすら分からなかった様子だったが、分かりやすく杖が宙に飛んだので、拍手して大喜びしていた。
サクヤとハーマイオニーの間に走っていた緊張感が解かれ、2人とも深く息をついた。

「危なかった……気を緩めたら普通に負けそうだ」

サクヤがハーマイオニーの杖を返しながら、彼女を称えるように肩を組んだ。

「ちょっと悔しいけど、ここから練習していくんだものね。すぐに勝ってみせるわ」

ハーマイオニーは顔をしかめたが、やがてすぐに笑った。
それから、授業中に先生に質問をするときの顔になった。

「ねえ、コツを教えてほしいんだけど……さっきみたいにフェイントを混ぜたら、杖の振り方が変わっちゃうじゃない?そこはどうやってポイントを押さえてるのかしら――」

「ちょっとストップ」

腕時計を見たサクヤが遮った。

「今日はいったん区切ったほうがいいと思う。いい時間だ。
コツを教えるのは寮に戻ったらか、また今度の集まりのときかにしたほうがいい」

ハーマイオニーもサクヤの時計を覗き込むと、あっと息をのんだ。
思った以上に時間が経っていたようだ。

「ねえ、ハリー!」

部屋の向こう端へ、サクヤが呼びかけた。

「時間は大丈夫?」

時計を見たハリーもまた驚いた。時間はもう21時10分を過ぎている。
すぐに談話室に戻らないと、フィルチに捕まって、規則破りで処罰される恐れがある。
ハリーはホイッスルを吹き、みんなが「エクスペリアームス」の叫びをやめ、最後に残った杖が2,3本、カタカタと床に落ちた。

「うん、とってもよかった」

ハリーが言った。

「でも、時間オーバーだ。もうこのへんでやめたほうがいい。
来週、同じ時間に、同じ場所でいいかな?」

「もっと早く!」

ディーン・トーマスがうずうずしながら言った。そうだそうだと、頷く生徒も多かった。
しかし、アンジェリーナがすかさず言った。

「クィディッチ・シーズンが近い。こっちも練習が必要だよ!」

「それじゃ、今度の水曜日だ」

ハリーが言った。

「練習を増やすなら、そのとき決めればいい。さあ、早く出よう」

ハリーはまた「忍びの地図」を引っ張り出し、8階に誰か先生はいないかと、慎重に調べた。
それから、みんなを3人から4人の組にして外に出し、みんなが無事に寮に着いたかどうかを確認するのに、地図上の小さな点をはらはらしながら見つめた。
ハッフルパフ生は厨房に通じているのと同じ地下の廊下へ、レイブンクロー生は城の西側の塔へ、そしてグリフィンドール生は「太った婦人」の肖像画に通じる廊下へ。

「ほんとに、とってもよかったわよ、ハリー」

最後にハリー、ロン、サクヤと4人だけが残ったとき、ハーマイオニーが言った。

「うん、そうだとも」

小さな点が無事自分たちの寮へと消えていくのを地図で追いながら、ロンが熱を込めて言った。

「僕がハーマイオニーの武装解除したの、ハリー、見た?」

「1回だけよ」

ハーマイオニーが傷ついたように言った。

「私のほうが、あなたよりずっと何回も――」

「1回だけじゃないぜ。少なくとも3回は――」

「あーら、あなたが自分で自分の足に躓いて、その拍子に私の手から杖を叩き落としたのを含めればだけど――じゃなくて!」

ハーマイオニーが話を区切るように手を振った。

「ちょっと、ほんの少しだけ、サクヤと居残り訓練をしたいんだけど……ハリー、その地図を貸してもらえないかしら?」

ハリーは深く考えずに頷いて、ハーマイオニーに「忍びの地図」を渡した。
訝しんだロンが思いついたように口を開いた。

「フェイントの混ぜ方か?だったら僕も――」

「あなたは、まず普通の杖の振り方からでしょ」

ハーマイオニーがあまりにもピシャリと言うので、サクヤは思わず吹き出した。

「オレと2人きりでやりたいって言ってるんだ――空気を読めよ、ロン」

サクヤが冗談めかして言うと、ロンはまたハッとした顔になってすぐさま引き下がった。
両耳はまたカールした生の牛肉のように赤くなっていた。
ハリーはというと、このやりとりをほとんど聞いていなかった。チョウが言ったことを考えていたのだ――ハリーのせいで上がってしまったと言っていたことを。





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