The ounder of rphan X 
 -総受男装ハーマイオニー百合夢-




翌朝、ハリーとロンが大広間で朝食を食べていると、サクヤとハーマイオニーがどことなく落ち着かない様子で合流した。

「ふくろう便はまだ来てないよな?」

テーブルにつくなり、サクヤが2人に訊ねた。2人は首を振った。
昨晩はシリウスが暖炉から消えてすぐにそれぞれの寝室に向かったので、サクヤとは昨日の昼以来だ。
真夜中に何があったのかはハーマイオニーから聞いたようで、「日刊予言者新聞」はまだかと天井を見上げている。

「今日は結んでないんだね」

気がついたハリーがハーマイオニーの髪を指して言った。
このごろは三つ編みやポニーテール、ハーフアップなどヘアアレンジを頑張っていたハーマイオニーだが、今日は久しぶりに見るもさもさ頭だった。

「ええ、ちょっと――時間がなかったのよ」

ハーマイオニーはハリーを一瞥すると、気にしてないようにまた天井に目をやった。

「朝寝坊したんだよな」

サクヤがからかうようにハーマイオニーを小突きながら、ハリーとロンに説明した。

「珍しく起きようとしないから、ぎりぎりまで寝かせようと思ったんだ。
それで『どうして起こしてくれなかったの』って怒るの、理不尽だよな?」

そう言いつつ、サクヤは笑っていたので、ハリーもロンも笑って頷き返した。

「元はと言えば――……なんでもないわ。
ふくろうはまだ来ないみたいだし、食べましょうよ」

ハーマイオニーの髪が怒りでさらに膨らんだが、言葉が詰まるとそれはすぐにしぼんだ。
彼女が大皿に盛られた料理をそれぞれ少しずつ、てきぱきと小皿に盛り付けるのを、またクスクス笑いながら眺め、それからサクヤも座りなおして同じように続いた。

4人がそわそわとしながら朝食を摂っていると、ようやくふくろうの群れがやってきた。
ハーマイオニーのもとへコノハズクが舞い降りると、ハーマイオニーはパッと新聞を受け取り、サクヤがすでに手に握りしめていた銀貨を1枚、片脚に括りつけられている革巾着にすぐに押し込んだ。
パーシーの手紙にあった記事を見つけるには、新聞をくまなく読まなければならないだろうと、4人はそう思っていた。
ところが、配達ふくろうが飛び立って、ミルクジャーの上を越すか越さないうちに、ハーマイオニーがあっと大きく息を呑んで、新聞をテーブルに広げた。
そこには、ドローレス・アンブリッジの写真がでかでかと載っていた。
ニッコリ笑いながら、大見出しの下から4人に向かってゆっくりと瞬きしている。

魔法省、教育改革に乗り出す
ドローレス・アンブリッジ、初代高等尋問官に任命


「アンブリッジ――『高等尋問官』?」

ハリーが暗い声で言った。
摘んでいた食べかけのトーストがズルリと落ちた。

「なんだ、それ?」

少なくとも、良いニュースではなさそうな響きに、サクヤは顔をしかめて首をひねった。
ハーマイオニーが読みあげた。

魔法省は、昨夜突然新しい省令を制定し、ホグワーツ魔法魔術学校に対し、魔法省がこれまでにない強い統制力を持つようにした。
「大臣は現在のホグワーツのありさまに、ここしばらく不安を募らせていました。
学校が承認しがたい方向に向かっているという父兄の憂慮の声に、大臣はいま応えようとしています」
魔法大臣下級補佐官のパーシー・ウィーズリーはこう語った。
魔法大臣コーネリウス・ファッジはここ数週間来、魔法学校の改善を図るための新法を制定しており、新省令は今回が初めてではない。
最近では8月30日、教育令第22号が制定され、現校長が、空席の教授職に候補者を配することができなかった場合は、魔法省が適切な人物を選ぶことになった。
「そこでドローレス・アンブリッジがホグワーツの教師として任命されたわけです」
ウィーズリー補佐官は昨夜このように語った。
「ダンブルドアが誰も見つけられなかったので、魔法大臣はアンブリッジを起用しました。もちろん、女史はたちまち成功を収め、――


「女史がなんだって?」

ハリーが大声をあげた。

「待って。続きがあるわ」

ハーマイオニーが険しい表情で読み続けた。

――たちまち成功を収め、『闇の魔術に対する防衛術』の授業を全面的に改革するとともに、魔法大臣に対し、ホグワーツの実態を現場から伝えています」
魔法省は、この実態報告の任務を正式なものとするため、教育令第23号を制定し、今回ホグワーツ高等尋問官という新たな職位を設けた。
「これは、教育水準低下が叫ばれるホグワーツの問題と正面から取り組もうとする、魔法大臣の躍々たる計画の新局面です」とウィーズリー補佐官は語った。
「高等尋問官は同僚の教育者を査察する権利を持ち、教師たちが然るべき基準を満たしているかどうか確認します。
アンブリッジ教授に、現在の教授職に加えてこの職位への就任を打診しましたところ、先生がお引き受けくださったことを、我々はうれしく思っています」
魔法省の新たな施策は、ホグワーツの父兄から熱狂的な支持を得た。
「ダンブルドアが公正かつ客観的な評価の下に置かれることになりましたので、私としては大いに安らかな気持ちです」
ルシウス・マルフォイ氏(41)は昨夜ウイルトシャー州の館でこう語った。
「子どものためを切に願う父兄の多くは、この数年間ダンブルドアが常軌を逸した決定を下してきたことを懸念しておりました。魔法省がこうした状況を監視してくださることになり、喜んでいます」
常軌を逸した決定の1つとして、この新聞でも報道したことがあるが、教員の任命が物議をかもしたことは間違いない。
例として、狼人間リーマス・ルーピン、半巨人ルビウス・ハグリッド、妄想癖の元闇祓いマッド-アイ・ムーディなどがいる。
アルバス・ダンブルドアはかつて国際魔法使い連盟の上級大魔法使いであり、ウィゼンガモットの首席魔法戦士であったが、周知のとおり、もはや名門ホグワーツの運営の任に耐えないという噂が巷に溢れている。
「高等尋問官の任命は、ホグワーツに我々全員が信頼できる校長を迎えるための第一歩だと思いますね」魔法省内のある官僚は昨夜こう語った。
ウィゼンガモットの古参であるグリゼルダ・マーチバンクスとチベリウス・オグデンは、ホグワーツに高等尋問官職を導入したことに抗議し、辞任した。
「ホグワーツは学校です。コーネリウス・ファッジの出先機関ではありません。これは、アルバス・ダンブルドアの信用を失墜させようとする一連の汚らわしい手口の1つです」とマダム・マーチバンクスは語った。
(マダム・マーチバンクスと小鬼の破壊活動分子との繋がりの疑惑についての全容は、17面に記載)


ハーマイオニーは記事を読み終え、テーブルの向かい側にいるハリーとロンを見た。

「これで、なんでアンブリッジなんかが来たのかわかったわ。
ファッジが『教育令』を出して、あの人を学校に押しつけたのよ!」

「それで今度は、アンブリッジにほかの先生を監視する権限を与えたわけか……。実に計画的だな」

サクヤが教職員テーブルのほうを見ながら、フンと鼻を鳴らした。

「信じられない!こんなこと、許せない!」

ハーマイオニーは息が荒くなり、目がギラギラしていた。

「まったくだ」

ハリーは左手に目をやった。
テーブルの上で拳を握っている左手に、アンブリッジがハリーに無理やり刻み込ませた文字が、薄らと白く浮き上がっていた。
ところがロンはにんまり笑っていた。

「なに?」

ハリーとハーマイオニーがロンを睨んで同時に言った。サクヤもこちらへ振り返った。

「ああ、マクゴナガルが査察されるのが待ち遠しいよ」

ロンがうれしそうに言った。

「アンブリッジのやつ、痛い目に遭うぞ」

「猫と蛙、どっちが強いかなんて明白だな」

サクヤがニヤッとした。

「さ、行きましょう」

ハーマイオニーがさっと立ち上がった。

「早く行かなくちゃ。
もしもビンズ先生のクラスを査察するようなら、遅刻するのはまずいわ……」

しかし、アンブリッジ先生は「魔法史」の査察には来なかった。授業は先週の月曜日と同じく退屈だった。
2時限続きの「魔法薬」の授業で、4人がスネイプの地下牢教室に来たときにも、アンブリッジ先生の姿はなかった。
ハリーの月長石のレポートが、右上にトゲトゲしい黒い字で大きく「D」と殴り書きされて返された。

「諸君のレポートが、OWLであればどのような点をもらうかに基づいて採点してある」

マントを翻して宿題を返して歩きながら、スネイプが薄ら笑いを浮かべて言った。

「試験の結果がどうなるか、これで諸君も現実的にわかるはずだ」

スネイプは教室の前に戻り、生徒たちと向き合った。

「全般的に、今回のレポートの水準は惨憺たるものだ。これがOWLであれば、大多数が落第だろう。
今週の宿題である『毒液の各種解毒剤』については、何倍もの努力を期待する。
さもなくば、『D』を取るような劣等生には罰則を科さねばなるまい」

マルフォイがフフンと笑い、聞こえよがしの囁き声で、「ヘー!『D』なんか取ったやつがいるのか?」と言うのを聞きつけ、スネイプがニヤリと笑った。
ハリーはハーマイオニーが横目でハリーの点数を見ようとしているのに気づき、急いで月長石のレポートをカバンに滑り込ませた。これは自分だけの秘密にしておきたいと思った。

今日の授業で、スネイプがまたハリーに落第点をつける口実を与えてなるものかと、ハリーは黒板の説明書を1行も漏らさず最低3回読み、それから作業に取りかかった。
ハリーの「強化薬」はサクヤやハーマイオニーのような澄んだトルコ石色とまではいかなかったが、少なくとも青で、ネビルのようなピンクではなかった。
授業の最後に、スネイプの机にフラスコを提出したときは、勝ち誇った気持ちとほっとした気持ちが入り交じっていた。



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