The ounder of rphan X 
 -総受男装ハーマイオニー百合夢-




「狼人間にどうして反感を持つの?」

ハーマイオニーが怒った。

「きっと、怖いのさ」

シリウスはハーマイオニーの怒った様子を見て微笑んだ。

「どうやらあの女は半人間を毛嫌いしている。
去年は、水中を一網打尽にして標識をつけようというキャンペーンもやった。
水中人をしつこく追い回すなんていうのは時間とエネルギーのむだだよ。
クリーチャーみたいな碌でなしが平気でうろうろしているというのに」

ロンは笑ったが、ハーマイオニーは気を悪くしたようだった。

「シリウス!」

ハーマイオニーがなじるように言った。

「まじめな話、あなたがもう少しクリーチャーのことで努力すれば、きっとクリーチャーは応えるわ。
だって、あなたはクリーチャーが仕える家の最後の生き残りなんですもの。
それにダンブルドア校長もおっしゃったけど――」

「それで、アンブリッジの授業はどんな具合だ?」

シリウスが遮った。

「半獣を殺しにする訓練でもしてるのか?」

「ううん」

ハーマイオニーが、クリーチャーの弁護をする話の腰を折られて鼻を鳴らすのを無視して、ハリーが答えた。

「あいつは僕たちにいっさい魔法を使わせないんだ!」

「つまんない教科書を読んでるだけさ」

ロンが言った。

「ああ、それで辻褄が合う」

シリウスが言った。

「魔法省内部からの情報によれば、ファッジは君たちに闘う訓練をさせたくないらしい」

闘う訓練?

ハリーが信じられないという声をあげた。

「ファッジは僕たちがここで何をしてると思ってるんだ?
魔法使い軍団か何か組織してるとでも思ってるのか?」

「まさに、そのとおり。そうだと思っている」

シリウスが言った。

「むしろ、ダンブルドアがそうしていると思っている、と言うべきだろう――ダンブルドアが私設軍団を組織して、魔法省と抗争するつもりだとね」

一瞬みんな黙りこくった。そしてロンが口を開いた。

「こんなバカげた話、聞いたことがない。
ルーナ・ラブグッドのホラ話を全部引っくるめてもだぜ」

「それじゃ、私たちが『闇の魔術に対する防衛術』を学べないようにしているのは、私たちが魔法省に呪いをかけることをファッジが恐れているからなの?」

ハーマイオニーは憤慨して言った。

「そう」

シリウスが言った。

「ファッジは、ダンブルドアが権力を握るためには何ものをも辞さないと思っている。
ダンブルドアに対して日に日に被害妄想になっている。
でっち上げの罪でダンブルドアが逮捕されるのも時間の問題だ」

ハリーはふとパーシーの手紙を思い出した。

「明日の『日刊予言者新聞』にダンブルドアのことが出るかどうか、知ってる?
ロンの兄さんのパーシーが何かあるだろうって――」

「知らないね」

シリウスが答えた。

「この週末は騎士団のメンバーを1人も見ていない。みんな忙しい。
この家にいるのは、クリーチャーとわたしだけだ……」

シリウスの声に、はっきりとやるせない辛さが混じっていた。

「それじゃ、ハグリッドのことも何も聞いてない?」

「ああ……」

シリウスが言った。

「そうだな、ハグリッドはもう戻っているはずだったんだが、何が起こったのか誰も知らない」

ショックを受けたような3人の顔を見て、シリウスが急いで言葉を続けた。

「しかし、ダンブルドアは心配していない。だから、3人ともそんなに心配するな。
ハグリッドは絶対大丈夫だ……」

「だけど、もう戻っているはずなら……」

ハーマイオニーが不安そうに小さな声で言った。

「マダム・マクシームが一緒だった。
我々はマダムと連絡を取り合っているが、帰路の途中ではぐれたと言っていた。
――しかし、ハグリッドが怪我をしていると思わせるようなことは何もない――と言うか、完全に大丈夫だということを否定するようなものは何もない」

なんだか納得できないまま、ハリー、ロン、ハーマイオニーは心配そうに目を見交わした。

「いいか、ハグリッドのことをあまりいろいろ詮索して回るんじゃないよ」

シリウスが急いでつけ加えた。

「そんなことをすれば、ハグリッドがまだ戻っていないことによけいに関心を集めてしまう。
ダンブルドアはそれを望んではいない。
ハグリッドはタフだ。大丈夫だよ」

それでも3人の気が晴れないようだったので、シリウスが言葉を続けた。

「ところで次のホグズミード行きはどの週末かな?
実は考えているんだが、駅では犬の姿でうまくいっただろう?たぶん今度も――」

ダメ!

ハリーとハーマイオニーが同時に大声をあげた。

「シリウス、『日刊予言者新聞』を見なかったの?」

ハーマイオニーが気遣わしげに言った。

「ああ、あれか」

シリウスがニヤッとした。

「連中はしょっちゅう、わたしがどこにいるか当てずっぽに言ってるだけで、本当はさっぱりわかっちゃ――」

「うん。
だけど、今度こそ手掛かりをつかんだと思う」

ハリーが言った。

「マルフォイが汽車の中で言ったことで考えたんだけど、あいつは犬がおじさんだったと見破ったみたいだ。
シリウスおじさん、あいつの父親もホームにいたんだよ――ほら、ルシウス・マルフォイ――だから、来ないで。どんなことがあっても。
マルフォイがまたおじさんを見つけたら――」

「わかった、わかった。
言いたいことはよくわかった」

シリウスはひどくがっかりした様子だった。

「ちょっと考えただけだ。君が会いたいんじゃないかと思ってね」

「会いたいよ。
でもおじさんがまたアズカバンに放り込まれるのはいやだ」

ハリーが言った。
一瞬沈黙が流れた。シリウスは火の中からハリーを見た。
落ち窪んだ目の眉間に縦皺が1本刻まれた。

「君はわたしが考えていたほど父親似ではないな」

しばらくしてシリウスが口を開いた。はっきりと冷ややかな声だった。

「ジェームズなら危険なことをおもしろがっただろう」

「でも――」

「さて、もう行ったほうがよさそうだ。クリーチャーが階段を下りてくる音がする」

シリウスが言った。
ハリーはシリウスが嘘をついているとはっきりわかった。

「それじゃ、この次に火の中に現れることができる時間を手紙で知らせよう。
いいか?その危険には耐えられるか?」

ポンと小さな音がして、シリウスの首があった場所に再びちらちらと炎が上がった。




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