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完っ成☆

鷹楼丸を天に掲げて、完成のポーズ。

【九日目で本当に卍解に至るとは…計ったか?】

「ぐは、まさか。
鷹楼丸こそ加減してねえだろうな?」

【まさか】

くそ、オレの口調真似しやがって…
勉強部屋を出ると、今はちょうど昼時らしく、
そこには本当の空が広がってて、すっげえ気持ちよかった。

「ちょい、息抜きさせてくれ…」

オレは勉強部屋の上…つまり双極の丘でゴロリと転がった。

あー…終わった…
オレの卍解…卍解…!!

【咲矢、ニヤけてるぞ】

「うるへ!」

ニヤけるな、ってのが無理な相談さ!

…あー…風が気持ちー…
今めっちゃホノボノ。
いいじゃない、たまには。

しばらくそうしてると、視界の端に赤い髪が。

「あっれー?夕焼けにはまだ早い時間なのに…」

「誰が夕焼け並みに赤い髪を持ったヘン眉副隊長だ!!」

某錬金術漫画の主人公になってますよ恋次さん。

「誰もそこまで言ってねーし」

一応ツッコんどく。

「ドーコほっつき歩いてたんだオメーは」

起き上がったオレの頭をグリグリ引っかき回す恋次。

「歩き回ってたわけじゃねえよ!」

オレはその手をバシッと弾き、乱れた髪を整える。

「あ!?じゃあ今までドコに…」

「勉強部屋。」

「…なんだソレ?」

「この近くにあるんだ。そこにいた」

「何してt」

「ああ!もう!質問ばっかすんな!!
恋次!腹へったメシ行くぞ!」

「! …お前、少し痩せたか…?」

双極を降りようと背を向けたオレの肩を掴む恋次。

「…あれ…?」

急に視界が揺らいで、オレは平衡感覚を失いふらついた。

「おい!?」

恋次があわてて支えてくれたけど…ダメだ限界。

オレは意識を失った。


「お、おい!どうした!?
咲矢!咲矢!!」

「そこのお前…四番隊舎はドコにある」

「!?」

急に誰もいない方向から声がしたので、恋次は驚いた。

「俺はコイツの斬魄刀、鷹楼丸だ」

「そうか…四番隊はあっちだ」

「どうも」

鷹楼丸は咲矢を横抱きにして、四番隊舎に向かった。

「おい、そいつ大丈夫なのかよ」

「ああ…ここ最近の疲労が災いしたのだろう…」

「疲労…?」

恋次も随伴し、四番隊に駆け込む。

「どうされました?」

偶然居合わせた四番隊第十席・山田花太郎が尋ねた。

「!
咲矢さん!」

咲矢が気を失っているのに気づいた花太郎は、
急いで病室の手配をした。

「そんなに大事じゃあないはずだ。
おそらく疲労か何かだ」

隊士が用意した個室に運び込み、ベッドに咲矢を横たえさせる。

「本当だ…これは過労による貧血ですね…
でもこんな倒れるほどの貧血なんて…
一体咲矢さんに何させたんですか!?」

花太郎が検査の手を止めて鷹楼丸を睨んだ。

「すこし…な。
でも無理強いじゃない。ここで俺と揉めると、咲矢が怒るぞ。
俺は咲矢の斬魄刀・鷹楼丸だ。


…おいそこの赤髪、お前病室から出てろ」

「ぁあ!?何で…」

急な要望に恋次はまた驚いた。

「言うことを聞け。
咲矢に言いつけるぞ」

「………」

横暴だ…等とブツブツ言いながら恋次は病室を出た。

「四番隊士よ。
お前が事件を起こすとは思わないが…一応言っておく。



咲矢は女だぞ」


ゴン!と盛大に転んだ花太郎は、
今まさに精密に容体を検査しようと、
咲矢の死覇装の上の黒い着物を脱がせようとしたところだった。

「っそうだったんですか!?
っていうかそういう事は始めに言ってくださいよ!!」

「いや、あの赤髪がいたのでな。
咲矢は自分が女だという事は隠している。察してくれ」

「…わかりました」

花太郎は意を決するように黒の着物を脱がせ始めた。

「顔が赤いぞ。女性を診るのは初めてではないだろう。
もし咲矢に変な事…」

「しませんよ!もう!///」

「どうだかな。
どうだ、咲矢の容体は」

検査結果が出たのか、
花太郎は診断書を書き始めていた。

「ええ、今日一日点滴を打っておけば治る程度です。
今の彼…じゃなくて彼女に必要なのは食事と休息ですね」

「(だから休めと言ったんだ咲矢…)

じゃあ、後は頼む。
変な事したらお前を斬るからな」

鷹楼丸はそう言って刀の形に戻った。

「しませんって!まったくもう…

…咲矢さん…具象化できるんですね…
やっぱり本当に強いんだ…」

咲矢に点滴を施し、花太郎は病室を出た。

「!! 花太郎!咲矢は…?」

「大丈夫です。今は寝てるんで、
面会するならお静かにお願いしますね」


花太郎が去ると、恋次は病室に入った。
静かな咲矢の寝息以外に、音を立てるものはなかった。

「(鷹楼丸ってヤローは刀に戻ったのか…)」

ベッドの脇に立てかけてある斬魄刀を見て判断した。
恋次は椅子に座り、咲矢の寝顔を見る。

こんなキレーな顔から、あんな憎まれ口が叩かれるんだな。
気持ち良さそうに寝やがって…
こっちがどんだけ心配したと思ってんだ…

「…ん?」

ふと咲矢の手の平を見れば、肉刺(マメ)が出来ていた。

「お前もしかして…九日間、修行してたのか…?」

その問いに答える者は誰もいなかった。








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