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イヤ別に、こんなトコまで来るつもりはなかったよ…?

でもね?


瞬歩って楽しいじゃない!!!



そんな言い訳を誰にするでもなく…
オレはただ今仔猫ちゃんだ。迷子の迷子の仔猫ちゃん。

アナタのお家はドコですかーッ!!?

ドコだよココー…
まだ一回も来たことないトコだぜ…?
距離も方向もめちゃくちゃに跳んできたから
どっちから来たのかも分かんねぇし…
どっかの建物の裏って事くらいしか分か……ん?この霊圧、は…!

「藍染…惣右介…!」

「や。卯月くん」

今のヤツはお人好しモードか…オレには通用しないってのに…

「なんで藍染がこんな所に?」

「いやね、近くを歩いていたら君の叫び声が聞こえてね。
来てみたんだ。…迷子?」

「ああ。ちょうど良かった。
藍染、六番隊舎まで案内しろ。そしたら去れ」

「…とてもトゲが刺さるんだけど…
もしかして、僕がなんなのか、
それさえも知っているとでも言うのかい?君は」

「ああもちろん」

オレは気を張りつめて、臨戦態勢に入った。

「大逆の罪人め」

「ずいぶんな言いようだな。
僕は昨日五番隊にわざわざ訪ねてきてくれたという君に会いに来たというのに。
大逆だなんて…まだ僕は何もしていないよ」

"まだ"…ねぇ。

「もうしたろ…ヘンな虚どんどん送り込みやがって…。
その度に何人も死んでったんだよ…!!」

「そんな泣きそうな顔をして…君は優しいね」

ちょっと意外な科白だな。…でも、

「反吐が出る」

そう言い捨ててやる。

「…で?なんで計画に邪魔なオレをこんな野放しにしてる?」

「"邪魔"?まさか。
君がこの僕の脅威になるとでも?傲るなよ」

コイツ…!!

「それはどうかな…?
やってみなきゃ、分かんないだろ?」

「じゃあ、力の差を実感してみるか?」

「時が来たらな」

今はまだ…卍解も出来ないからな…。

「……………」

「……………」


オレと藍染の間を、沈黙の風が吹き抜けた。





「─咲矢!」

恋次だ。

「探したぜ…ったく。
藍染隊長、こんにちは」

「や。阿散井くん」

さっきまでの黒さはどこへやら。
またお人好しモードか。

「咲矢、戻るぞ。
鬼事は終わりだ」

「ちぇっ」

恋次はいつものように(この表現がピッタリだ)、
オレの襟を掴んで藍染の元から去った。




「卯月…いや、咲矢…
君は何も分かっていない。
この僕の事も、…君自身の事も」

藍染の暗い笑みには、誰も気付かない。










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