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「ルキーアっ!遊びに来たぜ!」

翌日の朝、オレは六番隊牢にいた。

「咲矢!」

ルキアもなんだか嬉しそうだ。

「どうだ?調子は。
牢に入れられてさぞ窮屈だろう?可哀そうに…

そうは思わないのか恋次!?」

バッと後ろを振り返る。

「うを!?いきなり話振るなよ!ビックリするだろ!」

「ああ。させようとしたんだよ」

「なんだ恋次、いたのか」

「二人してヒデェ!!?」

あ〜…やっぱ恋次はイジり甲斐があるわ〜。

そんな事をしみじみ思ってると、隊舎の扉が開いた。白哉だ。

「(って事は…)」

「朽木隊長…なんすか?その紙」

恋次が尋ねる。

「先刻届いた、ルキアの刑の判決書だ」

「(やっぱな…)」

「刑は…」

「第一級重禍罪・朽木ルキアを極囚とし、
これより二十五日の後に真央刑庭に於いて極刑に処す。

それが尸魂界の最終決定だ。
―お前と言葉を交わすのもこれが最後となろう、ルキア」

白哉が、背を向ける。



「次に会うのは 
 処刑台だ」






白哉が立ち去り、牢に沈黙が訪れた。

それを破ったのは恋次だった。

「―オラァ!
ヘコんでんじゃねえよ!」

「そうだよルキア!
またそのうち刑がコロッと変わるかもだろ!?」

オレも便乗して、元気づける。

「…別にヘコんでなどおらぬ」

「ウソつけ!バリバリ ヘコんでんじゃねえか!!
コッチ向けコラァ!!」

ガン!と牢を蹴る恋次。

「……中央四十六室の決定だぞ…覆るわけがなかろう。

…気にするな。こうなる事など、最初から分かっていた。今更…」

「―ルキア…」




「――なんてな!」

シリアスなムードがルキアのこの一言で一変した。

「極刑だと?そんな裁定が下ったところで本当に私がヘコむと思うか!?
そんなもの!却って脱獄のし甲斐が増したというものだ!

んん?なんだ咲矢その顔は?
この私の心配を随分としてくれたようだが…
そんな事よりも身長の心配をしたらどうだ?
お主…周りの男共より際立って小さい事に気づいているか?
男がそんな華奢では面目も立たないだろう?

恋次も同じ顔をしよって…
私の心配をするよりは自分のマユ毛の心配でもしてた方がお似合いだぞ?
ん?このおもしろイレズミマユ毛様が」

これだけを間髪入れずに言いのけたルキア。…カラ元気がまる見えだぜ…?
でも今は一人にしといた方がいいのかな…とりあえず今は退散するか…。

「う、うるへー!ルキアだって思ックソ小っせーだろー!!」

「俺だって心配なんかしてねーよ!!
もう知るかボケ!テメーなんかとっとと処刑されろ!!
行くぞ咲矢!!」
バタン!!

またもや咲矢の襟を掴んで出て行った恋次。
残されたルキアはただ無言で、
しかしとても悲しげに、窓を見つめるだけだった。


*****


「―なぁ恋次?」

「なんだ」

オレは襟を掴まれたまま、素直に引きずられ続けている。

「あんなルキア…見たくないよな…?」

格好こそ滑稽だが、話はマジメ。

「ああ…すげぇつらそうだった。
―だから、自分を整理させるために一人にした」

「よかった…恋次がそこまでちゃんと分かってたなら、
今はそれでいいや」

オレが満足気に微笑むと、恋次が尋ねてきた。


「お前…身長気にしてんのか?」


…………。


恋次は途端に体重が感じられなくなった手に気づき、振り返る。

「とうっ!」

そこを先読みしたオレは、vs一護in現世戦で傷を負った恋次の額を二本指で小突いた!
…こうかはばつぐんだ!

「〜〜〜ッ!!」

「ははははは!天から制裁が下ったようだな!」

そう、オレはやってない。
天より舞い降りた制裁がオレの指を通して恋次に下ったのだ!

「てめ、咲矢ー!!」

「…お?このオレと鬼事でもするか?」

「上ォ等だコラァー!!」

恋次が追いかけてきたので、オレは瞬歩で逃げた。
恋次だって瞬歩くらいできるだろうが…数の差でオレの勝ちだ。

簡単に撒ける。









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