東京タワー
登る 登る 古びた階段
赤くて大きな塔の上
網目の奥に見える眼下は
地上150mを目指す
登る 登る 古びた階段
新たな塔に 忘れられ
哀愁や脆さが 少しずつ
少しずつ
彼女は登るたびに
テンションを上げて
あれがあの映画の
ワンシーンだと
鉄骨を指差し
笑った
あの日見た屋上の空は
ずっとずっと 雲が動いて
ねえここは誰もいない
古びたデパートの屋上
みたい
忘れられたように
静かで
ぐるりと回る パノラマ遊景
見渡す街と海と空
あのビルは何で このビルは
名前当てゲーム 曇る富士
ぐるりと回るパノラマ遊景
空に降りる梯子 天使の降臨
後ろから撮る 彼女の背中
驚いて振り返り 少し怒る
登る最上階
エレベーターの中
250m
耳鳴りがして
登ったらあとは
降りるだけだとして
ねえこの先は もう
世界征服と彼女が叫んで
天下統一の夢を見る
私が治めれば平和だと
彼女は得意そうに語る
彼女の見る視線の先に
僕はもう
きっと
転んだ正座姿
癖っ毛の前髪
あざの付いた脚や
豊かな胸
思い出すだけで
泣きそうになって
お寺の御みくじ
スタバのコーヒー
舐めたアイスクリーム
触れて繋ぎたくなった手を
思い出すだけで
愛しくなるから
階段を降りる 東京の夕景
網目の隙間の 広がる景色
これで終わりなのです
そうこの物語は
登っては降りる
単純な
ねえまたいつか
飲み込んだ言葉を
どろどろの物語は
綺麗なハッピーエンドへ
彼女は素敵な女の子に
なりました
エピローグは
僕がいつか迎えにいくから
君の幸せは祈りません
そして物語はエピソードUへ
(あとがき)
記憶を刻むのが、音楽の役割です。