地獄への廻廊 (sound novel.)
階段をくだるとそこは黄泉の国。
地獄。そう地獄だ。
あの世とこの世を繋ぐ階段。
それが、地獄の廻廊。
人が死に生きるこの場所で、
鬼が蠢き、蟲が湧き、悪臭のするこの世界で、
ただ一人鬼を狩る男がいた。
男は暇潰しに鬼を狩る。何せこの場所は退屈だ。彼の刑期は1500年。鬼殺しの刑。幾千の鬼が彼を殺そうと襲いかかる。
他の者は何度も喰われ、叫び、死に絶えるような痛みを永遠に繰り返す。
しかし、彼だけは、背中に背負ったその大剣で、鬼を殺し、生き延びていた。
彼には妻がいた。
死の淵を彷徨い、強い心臓を求めた。彼女の命は虫の息だった。
彼は強い心臓を求めて地獄へ降りる。扉を開くため何人も殺した。
彼は鬼の親分と対面する。
素手と素手の殴り合い。
「中々の強者だ。これを持っていけ」
親分は彼に家宝の大剣を渡した。
『鬼殺し』そう名の付く大剣だ。
彼はその大剣で、親分を殺した。
迫り来る鬼から永遠に心臓を抜く。強い心臓を求めて彷徨う。
心臓と心臓を繋げてさらに強くする。
彼は地上に戻るため、1500年の刑期を、鬼を殺しながら過ごす。
(あとがき)
鬼と男と強い心臓。