#2
「ふぁ〜〜〜…。一時間目から体育ってキツイよね……。ねむい…。」
「本当にね。」
「つよぽん、やってないじゃん。何で見学スタイルなの。」
「朝から動けないし。あんな風に朝からさわやかに体育なんて出来ないよ。」
「脳内一番ピンクのくせに〜〜。何あの光る汗!!」
「恵ちゃん運動好きだもんね。水を得た魚のよう。」
「あーちゃんも女子コートで派手にやってるねー。」
「あーちゃん、運動神経抜群だもんねぇ。頭も良いのに。」
ピピーーー
「あっ、次俺らだ。まっつんは…。」
「あそこのネットのとこで、バレンタインのチョコの催促してる。」
「またぁ…?まっつーーーん。次オレらだよー。」
「おーー。じゃ、チョコ待ってるから。」
「え〜。どーしよぉー。」
「そんなに欲しいのー?」
「…………。」
試合が終わったので男子コート側を見ると何やらまっつんが女子達と話していました。どうせ、チョコの催促でもしているのでしょう。二月に入ってからよく目にする光景です。きっと、なっちゃんは義理でもいいから小早川さんからチョコ欲しいなぁなんて考えているんじゃないでしょうか。
「あー、体育楽しかったー!!!来週はマット運動だってー!!楽しみだねー!!」
『朝から良い運動したねー。』
「……それより何か言うことないの…?」
「えー、パス取らないなっちゃんが悪いんじゃんー。」
「いきなりこっち渡すからだよ!!アイコンタクトとかしてよ!!」
「そしたら相手にバレるからじゃないの?」
『なっちゃんドジだねー。』
「オレはおもしろかったけどな。プクククーー。」
「おもしろくないよっ!!痛いよ!!」
「あ……。」
「こっ小早川さん!?おはようっ!!」
「……おはよう。体育だったの?」
「うっうん。バスケでね!!試合してました!!」
「そっか…。」
「!!…小早川さーん。こいつがチョコ欲しーってー。」
「!!」
「チョコ?」
「いや、何でもないよ!!あっ、これ重そうだね。手伝うよ。どこ持ってくの!?」
いきなりのまっつんからのフリになっちゃん動揺しまくりです。かなり早口でしゃべってます。
「えっと、片倉先生のとこ…。重くはないけど……!…ほっぺたどうしたの?あ、腫れてる……。」
「えっ、えっと…あの、これは…その…。」
「?あと熱も…カゼ?」
なっちゃんのほっぺたの怪我に気づいた小早川さんからのまさのボディタッチ。早くもなっちゃんのキャパオーバーです。湯気とか出ちゃってます。
「…あのさー、もしかしたら風邪かもしんねーし、熱見てくんない。おでこで。」
「?」
さっそくまっつんがよからぬ事を小早川さんに吹き込みます。行動早すぎです。
「こう?」
バターーン
「えっ…倒れた…。」
「「ぎゃははははははは!!」」
『あはははは!!』
「保健室行った方が…。すごく熱かったし…。」
「いや、大丈夫…。プフーー。」
つよぽんまで笑ってます。小早川さんの天然は相当なもののようです。
「やべー、小早川さん天然っぽい…。」
「なっちゃんも相当だけどね、ピュアさが…。心配になるよー。」
『それをいつもからかって悪化させてるの私たちだけどね。』
「杏奈っ!!」
「あ、まりちゃん…。」
見知らぬ女の子の登場です。どうやら小早川さんの友達のようです。
「何やってんの、こんな人達と!!遅いと思ったら!!」
「なんか風邪みたいで…。」
「うそに決まってるじゃん!!いつまでも一緒にいるとキモくなるよ!!」
かなり私たちに敵意丸出しです。キモいって言われちゃいました。
「いやいやキモくはないと思うよー。」
まっつん勇者です。この敵意の中突っ込んでいきました。
「まりちゃんていうの?かわいいね。まりちゃんは俺にチョコくれていいよ。小早川さんの友達だしー。」
「………。……キモイ…。くれていよーって何で上目線なんだよ、キモいな。あんたみたいなキモい野郎にチョコあげるわけないじゃんバカじゃないの。あと、まりちゃんとか呼ぶなキモいから。」
「「「「『ええぇ…。』」」」」
どうやら、まっつんは勇者というかただのバカだったようですね。まりちゃん怖いです。
「行こっ!あたし手伝うよ、運ぶのー。」
「ありがとう。」
「「「「『………。』」」」」
「…なんかスゴい子だねー…。気が強すぎるとおしおきしたくなるー。」
「あー…萌えない。」
『私たちキモい集団認定されちゃったね。主にまっつんのせいで。』
「あの…まっつん…?」
「……ロス。…あのツバ女!!ブッコロス!!」
「ちょっ、まっつん!?落ち着いて!!あっ、めっちゃツバついてる!!汚っ!!!」
まっつんの怒りがMAXです。まっつんが悪いような気もしますが。
「あー、まだイライラする…。」
まっつんからイライラオーラがにじみ出てます。
「あの女、俺にキモイって四回も言ったし!!マジ意味わかんねーよなぁ!!」
「まっつんも女子にキレるんだねぇ…。女子みんなにやさしいのかと…。」
「『ねー。』」
「…確かにびっくりしたけど、まっつんは少し馴れなれしいよ。図々しいというか。いきなり小早川さんにチョコ欲しいとか言うしさ〜…。やめてよね〜…。」
「オレはお前のためを思って言ったんだよ!!チョコ欲しいくせによ!!」
「ほっ欲しいけどっ、ストレートすぎるよ!!」
「『二人とも落ち着きなよー』」
「………。そんなにチョコ欲しいならあげればいんじゃない?」
「えっ…まぁ、くれたらホワイトデーにあげるよっっ。よろこんで!!」
「いやいや、そーじゃなくて逆チョコとかさ。」
「!!!」
つよぽんからまさかの提案、逆チョコです。
「あっ、それいーね!!オレあげたことないけど!!」
「めずらしーもん読んでると思ったら…。」
「いいかな…。友達にくれくれ言われてさー。正直めんどい。」
『友達?』
「入手困難だった本を探してゲットしてくれてさ、そのお礼ー。」
『なるほどね。オタクの世界も大変だ。』
何やら逆チョコというキーワードに反応してなっちゃんが乙女全開な妄想を始めました。以下なっちゃんの妄想をお楽しみください。
「もらってよ…半分は俺の愛で出きてるチョコ…。いやむしろ全部…?」
「夏樹くん……。(ときめく小早川さん)」
「え…誰?二人とも。」
「セリフもちょっと、どーかと…。」
『バリバリ少女漫画だね。』
「やっ!!いや無理!!ムリムリだわ!!なんか本気っぽいし!!恥ずかしいし!!」
「「『………。』」」
なっちゃんがようやく乙女ワールドから戻ってきました。
「いや、そんな重く考えなくていーんじゃない?」
『カラオケの割引券のお礼的なかんじで渡したら?』
「なるほど!!それなら…!!!お礼したいと思ってたし、ちょうどいいかも…。」
「でしょ!!買いに行くならつき合うよー。彼女いないしヒマー。」
「告白は…?」
「あっ、ごめん。手作りでいい?」
「はい?手作り?」
「友達から手作りでって注文が。なんか男が作ってる様を想像して萌えるとこまで1セットでということなので。」
『うわー、それは大変だね。』
「ほんと、本一冊で高く付いたよ…。」
「え…俺、お菓子作ったことないんだけど……。」
「えー、家で料理してなかった?お姉さんたちに…。」
「軽いご飯は作るけど……、そんなんでいーの?…あ、あーちゃんがいるじゃん!あーちゃん家ってケーキ屋さんでしょ?」
『そうだけど…残念ながら私は食べる専門です〜。』
「えー、そんなぁ。」
「大丈夫、大丈夫ー。まっつん、お菓子作れるっぽいもん。」
「げっ。」
「「『えっ。』」」
「なんか前、妹にタルト作ったって言ってなかった?」
「言ったけど…。」
「「『またまたご冗談を。プススススーーー。』」」
「オイ、失礼だな。」
「…だったら前日とか、まっつん家で教えてくれたり…。」
「…いーけど…。」
「本当!?」
「むしろ作ってくんない?めんどくさい。」
「いや、自分で作れよ。」
「女子いっぱいの売り場行くよりいいかも!!」
「だねぇ。」
「はぁ〜〜。余計な事言いやがって…。」
「ははっ。ごめん。協力してあげなよ、ヒマでしょ。」
「ヒマじゃねーし。」
『まっつん意外な特技だねー。』
「つーか、お前食べる専門とか最初っから俺らにチョコ渡す気はないのな。」
『まぁ、いいじゃん。まっつんは他の女の子達からもらうんだし。むしろ、みんなが私にくれてもいいけどね〜。』
バレンタイン騒動でまさかのまっつんの特技発覚です。今度何か作ってきてもらおうかななんて企み中。
バレンタイン2日前。
「まっつんー、明日一回帰って着替えてから、まっつん家行くねー。」
「あ?何で?」
何やらまっつんイライラしてます。最近イライラしてばっかですね。
「何って、チョコ〜〜。顔怖い〜〜。」
「あー、そーだった…。忘れてた。」
「イライラしてるねぇ…。」
「何だっけ、筒井さん?まりちゃんって言うと怒られるー。」
「そーそー。あれからどっかで会ってもガン飛ばしてくるし、逆に俺のこと好きなんじゃねーかと思ってくるわ。マジで。」
「あははっ。ツンデレってやつー?」
『筒井さんが男子にデレるなんて想像出来ないけどねー。』
「まー、こっちが大人になればいい話だよ。身も心も!!」
「うんうん、そーだねー。いただきまーす。」
「…………。他人事だと思って…。」
恵ちゃんもなっちゃんも適当です。まぁ、いつものことですが。
「ま、いーや。でー?何作るのー?」
「んーと、さっきケータイで調べたんだけどー。ガトーショコラとかおしゃれだよね!!あとフォンダンチーズショコラとかー!!なんか、かっこいいよね!!」
「おいしそー。」
「何でもいー。」
「めんどくせーからトリュフな!!」
『あ、まっつん。チョコ作り面白そうだから私見学しにいくねー。よろしく。』
こうして五人でトリュフを作ることになりました。まっつんは先生で私はただの見学ですが。
バレンタイン前日。
「じゃー、トリュフ作りまーす。」
「「はーーーい。」」
「………。」
「作り方は簡単です!!剛くんジャンプしまって。」
まっつんの料理教室が始まりました。男の料理ってかんじです。
「…あとは冷やして固めて終わり!!」
「えっ、めっちゃ簡単だね!!」
「おーーー。」
「あまい…。」
『チョコ美味しいねー。』
「そうなんです!!まー板チョコは多めに割っとけ。あまったら俺らで食えばいーし。だから今は食うな剛、ありさ。」
いざ、トリュフ作り開始です。
「ねねっ。恵ちゃん誰にチョコあげるの?」
「んーひみつー。」
「ちょ、その言い方気になる!!彼女いないよね!?」
「ひひ!」
「…オレも気になることあるんだけどさ、まっつん妹にお菓子作るんだね。知らなかったー。妹見して。俺妹っていいよね、何歳?」
「見せねぇ。中2。」
『あ、私まっつんの妹さん見たことあるよー。可愛かったなぁ。』
「余計なこと言うんじゃねぇよ。それより、もーいんじゃね。冷やして丸めっぞ。」
「ハイ、出来たら好きなのまぶしてー。」
「ん〜〜〜…まってーーー…。なんかうまく丸くなんないよ〜。」
「…お前、不器用だな。大雑把だし。」
「こーゆーのって性格出るよねー。」
「まーなぁ。」
『気持ちこもってれば、なんとかなるよー。』
「なっちゃんなんてさ、職人みたいなことしてるしーー。」
「『!!?』」
何やらなっちゃんトリュフのサイズを測って微調整してます。やすりで。
「他のより0.08mm大きいな…。削らねば。全て均一に丸く美しく仕上げないと!!」
「やすりで削ってんの!?摩擦で溶けるし!!」
『なっちゃん、色々と間違ってるね。』
「几帳面だよねぇ。」
「…あれ?チョコ足りないかも…。それに腕どこいった…?」
「さっき食ったからだろ。つーか何個作る気だよ。それに腕って…。」
「いや、一体なんだけど…。」
「!!?何、作ってんのお前!!!!」
「何って青い稲妻だよ。友達がさガンニョム好きだから喜ぶと思って。」
「喜ぶとかじゃなくて…もうトリュフじゃねーじゃん!!」
『あ、つよぽん片腕私が食べちゃったよー。ごちそうさまでした。』
「ちょっと、あーちゃんつまみ食いレベルじゃないよ、それ。」
つよぽんのガンニョム型トリュフは最早芸術作品です。
「なんだー、こーゆーのもいーんだー!!」
すかさず恵ちゃんが食いつきました。目がキラキラして少年のようです。
「よくねーよー!!」
「だったら、タッパー欲しいな!!」
「はぁ!!?」
「溶けたチョコ持って帰って、チョコプレイなど。」
『恵ちゃん、相手いないでしょー。』
「夏樹!!お前が怒るとこだぞ!!」
「なっちゃんは今、職人モードだから聞いてないもんねー。タッパーくれくれー。」
「〜〜〜〜!!!お前ら…もー作る気ねーだろ!!いーかげんにしろや!!」
「ちょ!俺作ってるじゃん!!超真剣に!!」
「オメーは仕事しろ!!」
「別にトリュフだけじゃなくてもいいでしょ。」
「せっかく教えてんだから言う通りしやがれ!!」
「横暴!!ケースバイケースでしょ!!」
「うるせぇ!」
『私は真剣に試食してます!!』
「お前はチョコつまみ食いしすぎだ!!」
一悶着ありましたが、何とか完成したようです。
「はーーー…。できたぁ〜!!!」
『完成、おめでとー!』
三人が完成に喜ぶ傍ら、まっつんはかなりの疲労を感じているようです。
「まっつん、ありがとー!!助かったよ!!」
「あー、ハイハイ…。」
「でかい…。」
「あとは明日渡すだけだし頑張ってね!!」
「え…うん…えっと…一人で行くんだよね…?」
「「「『当たり前だろ(でしょ)』」」」
バレンタイン当日。
なっちゃん、いざバレンタインに
出陣です。
バレンタインという名の戦から無事生還したなっちゃんは幸せオーラを解き放っていました。なんでも、小早川さんからチョコをもらったらしいです。そこにお疲れの様子のまっつんが教室に帰ってきました。
「おかえりー。遅かったねー。」
『お疲れ、まっつん。』
「夏樹、どーしたんだよ…。あのアホ顔…。」
「小早川さんにチョコもらったんだって!」
「マジ!!?本命!?」
「ううん、義理?たぶん。これからも仲良くしてくださいってカード入ってたみたいだよ。」
「へー。」
「ん」
そう言ってまっつんが差し出したのは、なっちゃんが持って行ったはずの袋です。
「あれっ、これオレの…。」
「……落ちてた。」
「やっぱり!!筒井さんとぶつかって(?)どっかふっ飛ばしたと思ってたんだー。あったのかー。せっかくだし渡してくる!!」
「いつになく積極的ー。」
「チョコもらって勇気出た!!」
『なっちゃん、かっこいいよー!』
「いってきまーーーす!」
なっちゃんよかったね。きっと小早川さんとの距離はグッと縮まったはずです。
『あ、そーだ。すっかり忘れてたけど、みんなにガトーショコラつくってきたよ!』
「え?あーちゃん食べる専門じゃなかったの?」
『食べる専門ってだけで、作れないとは言ってないよ〜。』
「わー、美味しそう!!」
「あーちゃん、すごいね。」
「お前も女子だったんだな。」
いつもながら、私に対して一言多いまっつんです。でも今日だけは特別に許してあげることにします。なんてったって、男子が主役のバレンタインデーですから。
「いつもだったら、まっつんの分は取り上げるところだけど…今日はバレンタインだから許してあげるよ。さ、食べよ食べよー。」
「「うまー!なにこれ!あーちゃん天才!?」」
「……うむ、美味い。」
「うまっ!すげぇな、ありさ。」
『ケーキ屋さんの娘ですから。』
「ねぇねぇ、あーちゃん、もう一個食べてもいい?」
『いいけど…。』
「あー、恵ちゃんだけずるいー!俺も俺も!!」
『まだたくさんあるから、そんな急がなくても…。』
ハッピーバレンタイン!
四人とも喜んでくれたみたいでよかったです。バレンタインが無事終わったのはいいのですが二月といえば学年末考査。3バカ(なっちゃん、恵ちゃん、まっつん)は大丈夫なのでしょうか。